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僕がゲームのモブキャラに声をかけ続ける理由(後半)

昨日の続きを書かせていただきます。

(トプ画はPixabayからQuangpraha作)

彼らは何も知らずこの世界で生き続ける

 僕は警備兵が新兵のことを変わらず案じているぼやきを目にして、ゲームのことながら、いやそれがゲームのことだからこそでしょうか、衝撃を受けました。

 彼は、新兵のみにどのようなことが起こったか、知らないのだ。

 もちろん、知らなくて当たり前なのです。最近のゲームだと注目されるキャラクターなどはイベント前後でセリフが変わったりすることもありますが、それでもモブキャラの場合はセリフが変わらないことも多々あります

 それは、そのキャラクターが世界にどのようなことが起こったかを認識しないまま、そこに存在し続けることを意味します。それはさっきも書きましたが当たり前なのです。そのようにプログラミングされているのだから。

 ですが、その設定によってこの警備兵は新兵がどうなったのかを知らない。世界から新兵が去っていったことを知らないまま、ゲームがクリアされた後も、永劫に新兵のみを案じ続けるのでしょう。

誰かがそこに込めた意図を想う

 所詮ゲームのことだという人もいるでしょう。ですが、そういった意見に対して僕は「ゲームだから、人の作ったものだからこそ、ここに感じられるやるせなさが増幅されるのだ」と言いたいのです。

 誰かが、ここでいえばゲームのスタッフの方でしょうか、この警備兵にこういったセリフを言わせた。それはつまり「気弱な新兵」というキャラクターに対して、気弱な彼を心配してくれる、案じてくれる先輩的なキャラクターがいるということを演出しています。ですがそんな心温まる関係性を持つ新兵が息絶えることによって、この2人の間にやるせなさが生み出される。これは感情移入のしやすい素敵な演出。

 そして、そこまでであれば人並みの「悲しい出来事だったね…」でおしまいです。ですがこの2人には続きがある。

新兵が息絶えたことを知らない、先輩の警備兵。

ここなのです。この意図してか意図しないでか生まれた、プレイヤーとキャラクターの間における情報の非共有制。これがこの2人の関係のもの悲しさを、通常では感じえないほどのものに作り上げるのです。

細部とはモブであり、背景世界である

 昔から「細部に神宿る」といいます。どうもこの言葉は初出がはっきりしないようなので、ここではただ昔から多くの人々が口にしていた、とだけ書いておきますが、とはいえ初出があるにせよないにせよ、多くの人々が言っているというのはそれほどこの言葉が真理を突いていることの裏付けであるといえるでしょう。

 僕は、ゲームにおける「細部」とは、これまで語ったモブキャラクターであり、さらに言えば背景として設置された世界観、ゲーム内世界そのものであると考えます。

 確かに主として楽しむものはゲームのストーリーそのものであり、背景にある世界もこちらに働きかけるようなことはほとんどありません。

 ですが、のストーリーに気をやっている最中、ふとした気まぐれで背景にこちらから語りかけたとき、背景は、その中に開発者がふと紛れ込ませた設定ゆえに、そしてそれでもなお本質的に設定を持たないその立ち位置ゆえに、予想だにしないサブストーリーを展開するのです。


 だから僕は、モブキャラに語りかけ続け、行けるところへどこまでも探求し続けるのです。

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