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【読書レビュー①④】尾八原ジュージ「巣」

こんにちは。PisMaです。

今日も「巣」を読んでいました。
前回は祖母が亡くなり、四六時中怪異が動き回るばかりか頼みの綱だった鬼頭から降参メールが届いたところです。絶望の淵ですね。
美苗は桃花を取り戻せるでしょうか。

未だに桃花は目を覚まさず、病院で眠っています。家に帰ってきても変わらないのは綾子の様子くらいで、話しているうちにもみしみしと誰かが歩く音がします。その歩き方はよく祖母に似ていました。

家にいない母は内覧に行っているようでした。
この家から出る準備を進めていて、母はみんなの前で取り乱しながら「出ていく」と騒いだ日もありました。どうしても家を離れるという態度の母に、綾子は少女のように号泣。兄が庇うものの、その溝はもう埋まる気配はありません。

美苗が母と外のお店で落ち合ったときも、母は「あの家を出ないのか」と聞いてきます。桃花が居るから出れないと言うと半分呆れつつも、「出てきたとき用に準備はしておく」と言ってくれます。外に拠点を作ってくれるのは喜ばしいと思いつつ、母への心配は拭えません。

あの家について調べてみようかと考え始めたところで、父から電話がかかってきます。「今鬼頭さんと会っているから、美苗も来るか」
という連絡。

しばらく連絡が取れなくなっていた鬼頭さん。
ずっと気がかりだった美苗は父のもとに赴くことにしました。
その場に到着し、ひと息つくと鬼頭は吃りつつも「母が亡くなった」と報告します。
そこから父の「井戸の家に関わっていたのは鬼頭さんのお母様らしい」との補足。
不動産も話していた霊能者の先生というのが鬼頭の母で、井戸の家の対応をしたのが30年前。
そして亡くなったのは、祖母の亡くなる前日。

井戸の家で怪現象がさらに多発するようになった原因は、封印の劣化や複数名の死が重なったことによる「綻び」だと解釈できます。

鬼頭は母から引き継ぎのようなことは受けておらず、原因を取り除いたりは出来ないものの…「怪異を押し込んで、綻びを小さくしたり前くらいの状態に戻すくらいのことは出来る」と言います。
また住めるくらいになる。
美苗は身を乗り出して話に食いつきますが、鬼頭の表情は暗いままです。

「それをすると、その、も、桃花ちゃんも、一緒に、押し込めることに、なって、しまいます」

身体が冷たくなる感覚がしました。

原因も取り払えない、引っ越してもダメ。
全ての音が遠く聞こえるほどに怒りを覚えた美苗は、思わず鬼頭の頬を叩きます。父が仲裁に動き、鬼頭は静かにメガネを直しつつ「怒って当然だ」とでも言うかのように俯きます。

桃花を助け出すのは絶望的なのだと、
突きつけられた瞬間でした。

本日はここまで。
桃花ちゃんの助かる見込みが本当になくて戦慄しますね。鬼頭さんの「押し込み」で怪異が元に戻るといっても、−500の状態が−30くらいに戻るくらいでよっぽど普通の家に引っ越したほうが良くも見えます。
ホラー映画や怪談では問題がさくさく解決するものも多いですが、土着の怪異や人の死が無限に絡んだ怪異は、浄化も対応も基本的に長期的なものになるのでしょう。厄介中の厄介案件に巻き込まれているのだと痛感しますね。
桃花が帰ってくるのはまだまだ先になりそうです。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
大きな怪異への挑み方。

ご機嫌よう。


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