明日の翡翠雷光が

明日の翡翠雷光が

昨日の青い晴れ空を

乗り越えて

悔いのない回想も

尽きる頃に

我が
肉食獣の肉体と
蛇を毒す艾と
皿の中の水を
観る

地獄のヒューリーたちさえ

沈黙の琴弦を断つ

潤った程に光る

余る閏の夜

路頭の老い耄れた
星の見物人
星と言う石を見ない

蛇の足跡の残った石は
枯寂の涙を流し

莢のかび臭い
荷車が過ぎた山の旅乗り
人は山の霧から
逃れられない
葦船の乗る稀客

煙の香りのする夏を
忘れれるまでに
火の雨の足跡を辿る

淵向けの望遠鏡の中に

虚(うつせ)ものの入れる隙間は

もういない

今日も金縁の遠い青い空は

我だけが哀憐し

酒の注ぐ様に水を下せた

翡翠雷光の美を持つ

割れた藻玉の面影

夏の肉屋のための子守唄

蚊帳の張られぬ
五月の簀
昨日もそれで涼しく掛け寝けり

そして今日も

酔い暮れた金色の蜃気楼が

骸炭の黒い安息の海に沈む

燕支も酒も墨染も

彼女の香の程に満ちなく

三分三忽三つ摘まみの河沙塵埃

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?