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その『好き』が才能。(映画「ディスコーズハイ」ネタバレ有り感想)


「ディスコーズハイ」という映画を、観てきました。3回。

(一応言い訳をすると、2回目以降は“前日または当日の時点で席が空いてたら”というルールでやりました。なるべく色んな人に見てもらった方が良いかなと思ったので。)

今回はがっつりネタバレ有りで感想を書いていこうと思うので、少しでも興味があって今後観に行くかも知れないという方は読まない方が良いです。

それでは以下、本編です。

キャラメルポップコーン美味しかった。


私がこの映画を観に行こうと思ったきっかけは2つ。知り合いが制作に携わってること、そして後藤まりこさんが出演していることだった。

ネットを通じて知り合った人だけれど、SNS上で日頃とてもお世話になっているので、応援の気持ちがあったのと
その上後藤まりこさんも出演するとなれば、観に行く動機は充分だった。
(更に幸いなことに、今年に入って私自身が地元の田舎から都会の方へ上京していて、観に行きやすい環境に身を置けていた。)


「 ディスコーズハイ」では、音楽事務所で働く主人公・瓶子撫子(へいしなでこ)の奮闘や、ライバル的立ち位置である同僚の別久花(べつくはな)を始め、担当バンドのメンバーや事務所の関係者など、彼女を取り巻く人々の様々な心情が描かれていく。あらすじは以下の通り。

音楽事務所で働くあがり症の撫子。
同僚の別久が次々と人気バンドを輩出する中、彼女の担当する“カサノシタ”はデビュー後なかなか売れず、彼女自身も会社のお荷物扱い。
しかも、崖っぷちバンドの次回作は、作ったMVの反応次第という事態に陥ってしまい……
映画ナタリー作品情報より引用)


この映画は、岡本監督の「好き」が詰め込まれた作品である、ということを事前に聞いていた。大好きなアーティストやバンドマンにオファーを出したり、自身の「好き」である音楽をテーマにしたり。

実際、日本のバンドシーンで活躍されている方も何名も出演しているし、劇中に流れるかっこいい音楽たちを聴くだけでも、音楽好きは心躍ることだろう。

基本的にはオフビートな笑いが満載の楽しい映画なのだが、要所要所での台詞が胸を打つ。

「経過を見てくれるのは家族だけ。(業界には)結果しかないの」という社長に
「これは経過だろ」「経過じゃなく結果と捉えるお前らに問題がある」と楯突く撫子。

「今までやってきたことなんだったんだろ」と感傷に浸る儀武村に、
「(傷つくほど)努力したのかよ!」と啖呵を切る撫子。

撫子に対して、「才能あるくせに」「いい加減気付けよ!」と思いをぶつける花。

こういう一つ一つの台詞に、監督がこれまで音楽と向き合う中で感じできたことが込められているのだろうな、と思わずにはいられなかった。
映画を観ていると、監督の音楽に対する「好き」の気持ち、音楽を愛する心が伝わってくる。
同時に、音楽をしていく中で感じた悔しさや歯痒さ、しんどさも伝わってくる気がした。


ライブハウスは、基本的には楽しい場所だ。
そこには感動と興奮があって、大好きなバンドの演奏を浴びている時間は何より幸福である。
でもライブハウスという空間には、諦めや惰性や、嫉妬の気持ちも確かに漂っている。
それも含めて、とても愛おしい。


出演者の方について、少しだけ。
(ほんとは他にもコメントしたいのですが…キャストさん皆さん良かったです。)


主演の田中珠里さん。滑舌が良く台詞読みが素晴らしい。負けん気の強い撫子を見事に演じ切っている。ぽてさらちゃん。と言い合うシーンが本当に最高。

下京さんは立ち姿や所作が美しい。そして声がきれいでノイズが無い。主演の田中さんにちゃんと負けていなくて、もっと色んな演技が見たいと思った。

まりこさんはやっぱり存在感が凄かった。この人が画面の中にいると目が離せないのは、きっと私がファンだからではない筈だ。惹かれる。引き込まれる。

ぽてさらちゃん。の演技の緩急や、繊細な表情の作り方は、この映画に必要不可欠なアクセントだったと思う。めちゃくちゃ上手くて良いキャラでした。



2回目からは、小道具や細かい部分に目が行くようになった。
社長そのネクタイどこで買ったの?(後にこれは監督のものであると知る)よく見たら隣の人はピカチュウのネクタイしてる。あ、ライブハウスの時だけ柄が違う。ていうかイミダス2000とか王将の目覚まし時計とか誰の私物なんだろう。
こけし、ベレー帽、金魚鉢みたいなグラスのリフレイン。全体的な映像の色調。
撫子と樺出くんのシーンで音声さんのコード映ってる…?とか、P-90の映像流してるこのノートPCって映ってて良いやつ…?とか、いつの間にか移動するスマホを発見するのも楽しかった。(ディスってる訳じゃなくて、インディーズ映画っぽさを感じて楽しいのですほんとに。)

3回目は、私が行った中で一番笑ってるお客さんが多くてなんだか嬉しくなる。MVとか飛行機のくだりとか。
樺出が通行人に絡まれるシーンの、「私も聞きたいです」の返し、面白いですよね。分かります。



幼少期の撫子と花が別れるシーンで、上からのアングルで撮影してるシーンが好き。
撫子と花の身長と性格が、現在と逆な感じも良い。


最後に撫子が歌うシーンは、魂が震えるほど魅力的だった。
監督が惚れ込んだ秦千香子さんの歌声が本当に唯一無二で素晴らしい。良過ぎてビビる。
このシーンでこの歌声を聴いて、そうか、監督は本物の才能に出会ったんだ、と心の底から思った。
儀武村のギターのワンストロークを合図に、ボーカルソロで始まるっていうのもめちゃくちゃ良かったし、その後MC挟まずに2曲目に行くのも流石分かっている。そうこなくっちゃ。
この映画において、まさに最高のラストシーンである。
撫子がみんなにありがとうを言った後の、社長の「俺は…?」みたいな顔も良い。(そういう意味のカットじゃなかったら本当にごめんなさい。)

「いつかバンドがなくなったら」は予告編で耳にした時から好きな曲だなぁと思っていたので、しっかり聴くことができて嬉しかったし、「じゃあね。さよなら」もどちゃくそに良い曲なのだ。どちらの歌詞もメロディーも。
どこかで購入できないかな…購入したい…購入したいですお願いします。


ご縁があって3回観に行って、サイン会では色んな出演者の方とお話できてとても楽しくて、すっかりこの映画のファンになった。


(ちなみに、色々あってサイン会でまりこさんと握手できてしまったのですが、その時の興奮は趣味の音声配信の方で喋りました。)



改めて、岡本監督をはじめ、この映画の制作に関わった全ての皆様、ありがとうございました。
これからも応援しています。


(追記)
記事中に書いた台詞は記憶を頼りにしているため、正確ではありません。ご了承ください。

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