昔の話、親とゲーム

 俺の親は、少しばかり厳しいというか、ある種偏執的だった。俺が見たいと言った映画には検閲が入り、勿論のことゲームは禁止。なんならコーラも禁止されていた。スピリチュアルに傾倒していた母は、そうすることで俺が "正しく" て "まとも" で "幸せ" になれると信じているようだった。尤も、母の道徳性が酷く表面的で薄っぺらく見えていた俺には、到底善く在ることで救われるだなんて思えなかった訳だが。

 さて、そんな俺にも一年に一度、ゲームを許される日があった。誕生日だ。

 俺がやるのはアーケードゲーム、渡されたお金は300円。小学生の俺がゲームに触れるということは、3回だけアニマルカイザーで遊べるということだった。

 年に3回だけのアーケードゲームだ。当然レアリティの高いキャラなんて出ない。それでも、雑誌についてきたノーマルカードを使って戦うのは楽しかった。

 そんな俺が初めて手に入れたレアカードが「コモドドラゴン」だった。レアリティはブロンズ(ノーマルの一つ上で、レアカードの中では一番弱い)。それでも俺にとって、確かに自分の力で得たレアカードだ。

 俺はそのとき一番強いアニマルだった「ジョーカー」というコモドドラゴンが欲しかったから、例えそれがジョーカーでなくとも同じコモドドラゴンというだけで大層嬉しかった。

 だが、その半年後にアニマルカイザーはサービス終了した。俺がコモドドラゴンと共に戦えたのは、結局その後の一回きりとなったのだ。大人になった今ではもう、コモドドラゴンも無くしてしまっている。

 それから早々に家を飛び出した俺は母への感情も風化して、ただ関わりたくないとだけ思っている。きっと、俺は子供の頃に拾うべきものや、持っていたものを沢山落としてしまった。でも今は、一人でコーラを飲みながら深夜にゲームで遊べる毎日が、昔よりずっと幸せに近いと思えている。

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