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あと10年 <005>

では、会社を辞めて、これから10年どうやって生きていくのか。
この齢で再就職などできると思えないし、今の会社と同じことが繰り返されるなら転職自体を望んではいない。今はどこも人手不足で、最低賃金も上がっているというなら、派遣やバイトという選択もある。しかし体力的にできることも限られてくるだろう。
賢い人は、この年までに不労所得を得るスキームを作ったり、人間力が高ければ、お金がなくなったらどこでもいって働いて、貯まったら休んでなんて器用なこともできるのかもしれない。でも、現実的に、この僕が生活ができる収入を得る方法なんてあるのだろうか?

とある個人VtuberがCD作成のために募ったクラウドファンディングを着服した事件があった。コロナ禍で職を失い、生活に困窮して手をつけたのだ。それがあまりにもリアルでショックだった。他人のために泣ける優しい男だった。お金がないと、人はこうなってしまうのだ。また、ホームレスのインタビュー冊子でも、「仕事やめたら人生終わり、絶対やめるな!」という悲痛なメッセージが切実に綴られていた。
一度つまずいたら、簡単には戻れない社会。無職になった人は、仕事を辞めた自由と開放感は最初の1ヶ月ばかりで、日に日に減っていく通帳の数字を見て鬱を発症するという。それは結局「死にたくない」という本能に抗えないからではないか。

職業別に見ても、自殺率は圧倒的に無職が多い。誰かが言っていたが、自殺者を思いとどまらせるなら、200万円、いったん200万あれば、ほとんどの人は死なずに済むと。仕事のパワハラや人間関係のトラブルも、結局お金さえあれば選択肢が増え、解決できるのだ。

超高齢化社会。
うちの会社でも定年で退職できる人は稀だ。そして、この10年で何人もが働きながらある日突然亡くなっている。体調不良の休職者も増え、自殺者さえ出してしまった。うちの会社がそうだからか、日本では、とにかく年寄りが働いているイメージが強い。定年後も、清掃員、タクシー運転手、マンション管理人。その理由のほとんどは、経済的理由だという。

この国は、若者にお金がないという印象があるが、お年寄りもないのだ。お年寄りも子や孫にお金がなければ働かないといけないこともあるし、夫婦共働きも増加。日本は億万長者が増えたが、貧困は拡大していて、かつては一億総中流社会と言われていたけど、今や老若男女問わず、お金がないひとが多数になったのである。年金の受給年齢も65に上がり、僕のころには70になるなんて言われていて、もしかすると、そもそも老後なんて概念がなくなるのかもしれない。

僕は今、若いと言えば若いが、初老を超えたとも言える。本当に、これからを考えるのにベストなタイミングではないだろうか。

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