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うなぎをめぐる冒険

本記事は、ニードスタッフが業務や趣味について思うままに書き綴るアドベントカレンダー企画「nide.inc ライトニングトーク部 Advent Calendar」の第15日目です。
nide.inc ライトニングトーク部 Advent Calendar 2020

こんにちは。ニードの「さかなくん」こと、釣り好きアートディレクターの蛯沢です。

本日はお魚さんの小話をひとつ。

謎多き魚「うなぎ」

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僕が大好きな魚料理の一つに「うな重」があるのですが、実は「うなぎ」ってここ最近までとても謎が多い魚であったということをご存知でしょうか?

色々な謎はあるのですが、その中でも一番の謎は「どこで生まれて、どこに行くの?」ということでした。

かの有名な古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスも「うなぎは泥の中から自然発生する」なんて訳のわからないことを書き記していたほど生態がよくわからないものだったようです。

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ちなみに僕が住む地域は、荒川と中川という二つの川に挟まれておりまして、夏の夜になると「うなぎ釣り」に興じるおじさんたちで溢れかえるので、僕自身も子供の頃は、うなぎは川で生まれて適当に川とか沼で一生を終える淡水魚なんだと思っておりました。

今回はそんな「うなぎ」の一生をめぐる冒険をご紹介したいと思います。

冒険のスタートはデンマークから

世界中のみんなが、うなぎに関して訳のわからないことを考えていた中、1928年にデンマークの調査船ダナ号による海洋調査が開始され、みんなの疑問である「うなぎは一体どこで生まれるのか?」という、その生態を探る冒険の火蓋は切って落とされました。

調査方法はとてもシンプルで、より小さなうなぎ(子供)を追い求めて辿っていけば、いつかは一番小さな形である卵にたどり着くだろうという考え方で、ひたすら小さなうなぎを広大な海だか川だか泥だかわからないところから探し続けるという方法が取られました。

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ちなみにうなぎの子供って?

うなぎの稚魚として有名なものに「シラスウナギ」というのがあると思います。

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日本近海で、今年は豊漁だとか不漁だとかよくニュースにも上がると思うのですが、このシラスウナギっていうのは、実は割と育った状態のうなぎなんですね。(6cmほどの大きさで、つまようじ1本ぐらいのイメージになります。)

このシラスウナギを捕まえて養殖場で育てたのが養殖うなぎでして、市場に出回る99%のうなぎはこの養殖うなぎになるそうです。(天然うなぎはわずか1%!どうりで高い訳ですね)

しかし、今回追い求めているのは、これよりもさらに小さい仔魚(しぎょ)になります。つまり「うなぎの赤ちゃん」。その名も「レプトセファルス」です。ちなみに生まれたては、体長は3mm以下のようです。

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それから30年…

デンマークで始まった調査でヨーロッパウナギアメリカウナギの仔魚が見つかり出すと、それに触発されて東アジアに分布されるニホンウナギの調査も開始されたのですが、なかなか成果をあげることができず、だいぶ時間が経ってしまったようです。

日本近海から調査を開始して30年以上経って台湾あたりでようやく少し小さいサイズのレプトセファルスがいることを発見したようです。ただ、40-50mmぐらいのサイズとまだ割りと大きく、卵とは遠い存在だったようです。。。

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日本近海からもだいぶ離れていますね。広大な海の中でこんな小さな生物を探す所業はとても大変なものかと思われます。(目指すは3mm以下ですからね)

そしてついに卵を発見!

2006年ぐらいから日本の研究者チームが本格的な調査に乗り出して、2009年にようやくマリアナ諸島の深海で卵を見つけました!そのサイズは1.6mm。極小ですね、、、

80年以上かけて、日本から2000km以上離れた深海でようやく卵を発見することができたとはロマンがあります!というかうなぎって深海出身だったんですね、、、

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しかしながら未解決の謎はまだまだあります

卵からどうやって日本に来るかは80年ぐらいかけてやっとわかったのですが、「母親がどうやって卵を産みに行くのか?」「オスとメスはどうやって出会うのか」などは未だ謎のままのようです。

「人類は宇宙のことよりも海のことの方が解明できていない」なんてことを言ったりもしますが、海はまだまだ未知なる領域が多いのですね。

実はうなぎは絶滅の危機

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日本で食べられている国産のうなぎはだいたい「ニホンウナギ」という種類のものなのですが、実は「ニホンウナギ」は今絶滅の危機に瀕していることをご存知でしょうか?

先ほど市場に出回るうなぎの99%は、シラスウナギを日本近海で捕まえて、それを育てた養殖のうなぎというお話をしましたが、このシラスウナギの乱獲や密漁などによって数がどんどん減っているようです。

うなぎは、鯛などの養殖と違って卵を水槽内で産ませてそれを孵化させて育てると言った完全養殖はまだ技術的にできないようで、天然で生まれたシラスウナギを捕まえて育てるしか方法がない状況なので、野生のうなぎがいなくなったらお終いになってしまうのです。

土用の丑の日など、スーパーでは売れていないうなぎが山積みになっていますが、考えさせられるものがありますね。

最近、中央大学とNGO日本自然保護協会がに共同で開発した「ウナギいきのこりすごろく」という小学生向けのワークショップがあります。

興味がある方は是非ご覧いただき、うなぎからサスティナブルな社会を見つめ、ニョロニョロと思いを巡らしつつ、美味しい「うな重」に舌鼓を打っていただければと思います♫


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