ニコスケッチ#3-1 五重塔を描く 2023
★ 奈良 興福寺 五重塔を描く
★ しばらく改修工事で姿は見えません。。
五重塔…確かに手強い。それだけにコレを描くと学びも多くイイ経験になります。
遠近法に基づく目線の高さ、省略、明暗など風景画の必須ポイントがてんこ盛りの五重塔…そのポイントをいくつかまとめました。参考になれば幸いです。
奈良 興福寺 五重塔
下から見上げる五重塔はどのように描けばいいのでしょうか?
軒下の表現
五重塔は屋根裏軒下をどう描くのかがひとつのポイントです。そして風景画では外せない、目線の高さが関わっています。
下図の赤い部分が屋根裏軒下です。
建物の屋上など高い場所から五重塔を見下ろすと違った見え方になりますが、下から見上げると自分の目線より高い位置にある屋根裏軒下が見えます。そして上の階層に行くほど屋根裏軒下は広く見えます。
上の画像、黄色矢印で示したように上の階層に行くほど屋根裏軒下の厚みが増していることがわかります。この厚みの変化をとらえることで、塔の高さや見上げた感を表現できるのです。
ただ塔が遠くにあると、軒下はほとんど見えなくなり、その厚みの変化もわからなくなります。
近くから見上げたとき、屋根裏軒下の厚みに変化が現れます。
屋根のカーブ
上の画像、緑のラインを見ると屋根のラインは水平な直線でなく、端のほうでカーブを描きそり上がっています。
観察をすれば気がつくことなのですが、つい屋根はまっすぐ…と思い込んでしまうこともあるようです。この思い込み…要注意です。
そろえる
あと各部位の位置をそろえることも意識します。
人物画は骨格を意識して描くことが大切です。建物は、いろんなタイプがあって人間ほど共通しませんが、その建物のどこを柱が通っているかを意識するとイイでしょう。
ここまで読んで五重塔、難しい…ダメだ…と思うかも知れません。
そんなのスっ飛ばして屋根裏描かずに屋根も真っ直ぐ描くと下のような感じでしょうか…
はるか遠くに見える塔か、あるいはデザイン化されたマーク、イラストならアリですが、近くからリアルに見上げた塔には見えません。
確かに五重塔は難しいモチーフです。ワタシも何回も描いて描いて描いて、なんとかここまで来ました。
初めてなら思うように描けなくて当たり前、そして描かないと描けるようにならないのです。いくつかあるポイントのうちひとつでもクリアできたらOKです。
友人のスケッチ
友人が描いた実際のスケッチです。
三者三様で面白いです。そしてこの3つのスケッチで気づいたことをまとめました。
軒下などの複雑な木組みの構造物
存在感のある五重塔、なかなかこのようには描けません。
下から見上げると、屋根裏軒下が見えます。そしてそこは暗い、かなり暗い。その暗がりの中に複雑な木組みがかすかに見えることもあります。それをどこまで描いてどれだけ省略するのか、絵の見せ所でもあり難しさでもあります。確かな観察力、デッサン力、経験が求められます。
木組が見えていても思い切って暗く塗りつぶして描かないのもアリです。Nさんはペンによる縦線を使いながら、いさぎよく軒下などを暗く塗りつぶしています。
細かなディテールを描かない省略表現も、絵全体の明暗や主役、脇役のパランスが整っているためか違和感がありません。流石です。
ワタシのスケッチが1番テキトーです。
九輪
九輪と呼ばれるてっぺんです。理屈で言うと下の図のような輪、光を受ける外側は明るく内側が暗くなる…光によるその明暗の差を表すと下のようになるでしょう。
それが九つ連なっていてザックリこんな感じ…
でも、これを外側を白く抜いて描くのはけっこう難しくて面倒です。で、Sさんに聞いたのですが下のような表現もアリだそうです。
外側が暗く内側が明るいのです。画像では、わかりやすくするためコントラスト上げてますが、もう少し明暗の差をなくした方がいいかもしれません。
これは光による明暗の差というより、手前のモノは強くハッキリ描き、遠くのモノは弱くあいまいに描く…その強弱の差で奥行きを表現しようという考え方です。
こっちの方が描きやすいですね。これで描いたSさんの水墨画です。
▽ 九輪…部分拡大
この描き方でも違和感ないですよね。
さて、みなさんの水彩スケッチでの九輪は…
どちらも九輪の外側、内側も工夫して描いてますよね。
どれが正しいとか間違ってる…という話しではありません。どれも表現としてOKだとワタシは思います。
まあ、先生級の作家さんなら、こうでなくてはイケナイ…なんてご意見もあるでしょうね。
写生地
五重塔をどこから眺めましょうか? 写真下のリンクをタップすると撮影場所の地図が開きます。
ここは興福寺の境内、南円堂を背にしてます。ここで描くのは観光客が多く勇気が入ります。
次からの写真はどれも猿沢池の周囲から撮影しました。
写真はトリミングしてますが、ここは意外と知られてないかもしれません。石段から見上げた構図です。ただ狭いのでおひとり様向きです。
猿沢池周辺も人が多くてなかなか場所が取れませんが、道路から一段、水路川に降りたところからの構図です。
トイレの横から狙った構図です。
次回はまた構図のことに触れようかな…
…おしまい
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