初めての占い

 先日、生まれて初めて占いに行きました。占いはなんか悪いことを言われたら怖いとずっと思っていたしお金を払うのも勿体無い気がしていたので、雑誌の占いは見るけど自分から占い師のところに行くことはありませんでした。しかし体調不良や心労、これから先の生き方などなど、悩みはたくさんあるけど相談する人はいない。その時は自分の中に溜まった澱みたいなものを吐き出したい一心で、前から気になっていた占いの予約サイトを見ると二ヶ月先まで満杯でした。でも、予約しました。うっかり忘れないようにスマホのカレンダーに予定を入れました。
 
 2ヶ月過ぎ、そういえばそろそろ占いだなあと思いつつ、行くのが面倒になっていました。当日は少し早く起きてマッサージに行き洗濯物を干し、早めにお昼を食べて、30分前に到着する予定で家を出ました。久しぶりに天気がいいせいか、電車は混んでます。怠いけど頑張って立っていたら途中から座れました。
 初めて行く場所なので、乗り継ぎは前もって調べていました。しかし乗り換えした路線に目的地の駅がないことに途中で気がつきました。間違えていたのです。慌てて車内で駅を検索。ちょうど気づいた駅で降りると目的地の駅に行く路線がある!まだ運がある、と改札を出て歩き出すと路線の駅まで遠い、表示があるので行き方は合っているからいいけど、歩いても歩いても着かない。本当なら到着している30分前なのにまだ地下街の中を小走りです。
 やっと着いたら、上下線のホームが別の階にあります。間違えたらもう間に合いません。どっちに行けばいいのか分からずまた検索すると、役に立たない路線図の商品サイトが出てくる。結局駅の表示をじっくり眺めて、正しいと判断した方に行くとあってました。今度は乗り過ごさないように、出入り口の電光掲示板を見ながら、まだ後15分はある、トイレに行きたくなってきた、でも我慢、色々考えているとやっと降りる駅に着きました。
 さて目的地に近い出口はどこ?駅によってはA1、A2とあるけど検索するとBと出る。これはどういう意味?A1〜5の後にBがあるのか?地図を見たらA、B、Cと簡単に分かれていました。すぐ見つけたB出口から地上へ出ると似たような高いビルが沢山ありました。早速グーグルマップに頼ります。目的地を入力して、この行き方で本当にあっているよね、と確かめながら進みます。私はよく反対方向に進むからです。今、10分前です。小走りしながら前を見るとそれらしき建物が少し見えてきました。5分前!階段を上がって中に入ると建物が沢山あってどこが占い館か分からない。お土産屋さんで聞いたら一番奥にある建物のはじにありました。ようやく辿り着くと、前の方がまだ占い中。中で待っていてくださいと言われたので、トイレの場所を聞いて済ませてから戻りました。トイレを我慢して占いをすることにならなくてホッとしました。占いをしたそうな人が一人いたので、ここは予約しないと受けられないと教えると残念そうに帰っていました。
 少し待つと前の方が終わって呼ばれました。占い師さんは温厚で優しそうな人で安心しました。窓が大きくて外も見えるし明るい雰囲気です。
「何を占いましょう?」
早速聞かれて。健康、将来の暮らしなど、頭に浮かびますが
「仕事についてです。」
「絵を描く仕事して上手くいくか知りたいです。」
細々と好きな絵を描いていますが、それでやっていけるか知りたい。けれど今は体調が悪く休みながら絵を描く状態で、ほとんど描けていません。
「出版社に売り込みはしてますか。個展は?ホームページなど作っていますか。知ってもらうことは大事ですよ。」
「体力的に厳しいので注文に応えるより、描いた絵を委託販売しようかと。インスタはやっています。でもあまり見てもらえません。」
「今のお仕事は?」
「休職しています。体力が持たなくて復職してもまた悪くなると思います。」
占い師さん、そこで少し考えて言います。
「復職の条件について話し合い、上手く行きそうなら仕事を続けて趣味で絵を描くのはいかがですか?」
お医者さんと全く同じことを言います。
「アルバイトをすることを考えています。」
「ちゃんとしたところでないと、時給は良くないでしょう?」
「復職するとしたら、もう一年休まないと無理だと思いますし、復職することを考えるだけでおでこに皺がよります。」
「絵を描いている方がよく来ますが、どうしたら売れるでしょう、とよく聞かれます。私の友達で油絵を描いている人はどうしたら売れるかしら、と言ってます。小説家の友達も売れないので、よく売れている小説を読んで研究しているんですよ。」
と話しだしました。創作活動で食べるのは厳しいとよく分かります。
 仕事についてしばらく話してから、生年月日を教えてくださいと言われたので答えると、後ろから本を取り出して私の生まれの運勢を見始めました。
「営業運がすごくいいです。人に恵まれています。知り合いに見せるといいですよ。お店においてもらうなら、はっきり言ってくれる人がいいでしょう。」
営業運がいい?他人と話すの苦手なのに意外です。でも知り合いになった人に作品を気に入ってもらい買ってもらったことはあります。友達や知り合いは少ないけど、信頼できる人が多いことに気づきました。
「鬱になるはずがない生まれなんです。本当はすごく自由で好き勝手に生きる人です。あの人勝手ね、と言われるタイプです。変わり者、変な人と言われるくらいがちょうどいいです。鬱になったきっかけはありますか?」
「父と上手くいかなくて、入った大学が合わなかったせいだと思います。」
「親との軋轢と自分を正直に出せないお仕事が合わなくて、鬱になったのでしょうね。いつごろから鬱になりましたか?」
「18くらいからです。」
「責任感があって、周りのこともよく見て引き受けちゃうから、無理が重なったんでしょうね。」
思い当たることがありすぎる。フラフラなのに頑張って自分の仕事を最後までしたり、体調が悪くて休んだ人の仕事を自分から引き受けたことがあります。
「直感力があって、感性も豊かです。言葉も本当は豊かな方だと思います。」
自分からたくさん話すとそこから話が進みそうで、あまり話さないようにしていました。そこでもう一つ気になっていたことを思い切って聞きました。
「実は通っている体操教室で指導者にならないか?と誘われています。どうでしょう。」
渋い顔をする占い師さん。
「指導者は先生ですよね、どんな人を教えるのですか。」
「年配の方が多いです。」
「なんか合わない気がしますが、カードで見てみましょうか。」
とタロットカードを机の上に横一列に広げました。
そして一枚引くと、逆さづりの猫!あんまり縁起が良くなさそうな絵です。もう一枚引きましたがそちらは忘れました。それもあんまり縁起は良くなさそうでした。
「ご自分でひいてみます?」
と言われて引くと、剣を振り回して戦う猫!こちらに突進してきて後ろに他の猫たちを蹴散らしています。
「生徒を集めるのに苦労するのかしら?」
雲行きが怪しいです。他の人と上手くいかない暗示なのかと、自分の人付き合いの悪さを顧みました。
「最後、何をみます?復職して上手く行くかにしますか?」
「絵を仕事にして上手くいくかがいいです。」
「では、引いてみてください。」
自分で引くの怖いわ、と言いながら引くと、椅子に偉そうに座っている王様の猫が出ました!
「これは、どんなカードですか?」
「いいカードです、王様ですよ。」
占い師さん
「さっきのカードも剣を振り回していたし、思い切っていいかもしれませんね。」
トーンが変わってきました。
確かに絵を好きな人はいてくれる。ここは思い切って努力する時がきたのだろうか?絵本を描くけど、お話を作るのが苦手なのでオンライン講座を受講していると話すと
「好きなお話の場面の切り貼りでいいんですよ。自分で全部考えなくていいんです。」とアドバイスされました。
なるほど、と聞きつつ疲れてきて頭がぼーっとしました。そのあと絵はコツコツ描いていることなどポツポツ話しました。
「神様は人生を楽しむ人を喜びますね。そういう人は運を引き寄せます。楽しむことが大切です、もっと自分の損得を考えて、周りの心配をするのは程々にしたほうがいいですよ。」
いちいち思い当たります。私の仕事を代わりにやってくれる人の負担を気にして休まず体調が悪化したこと。長い間、無理をしすぎて今は体が思うように動かなくて落ち込んでいます。回復までどのくらいかかるのか見当がつきません。
「今日は、鬱にならないはずと聞いて驚きました。」
「そういう方が多いです。好きに生きている方は当たっている、その通りと言いますよ。もっとわがままでいいと思いますよ。」
 最後にインスタにあげた自分の絵を見せたら、大変喜んでくれました。猫が好きなのでカードも猫、小物入れも猫なので、絵に描いてある猫を可愛い可愛いと褒めてくれ、
「ぜひ絵本を書いてくださいね。」
と励まされました。
 大学に復学したことを後悔しているので、自分の決断に自信が持てないと言うと
「みんなそうですよ。」
絵は以前は何時間も続けて描けたけど、今は少し描いては休んでます、と言うと「いいじゃないですか。」
とあっさり答えられて気が楽になりました。そうか、休みながらでいいのか。
 絵を描くことはやはりいいことなんだ、王様のカードが出たので、占いも悪くないと思えました。ただしお金はかかるので、次回受けるとしたら、絵の仕事ができるようになったらです。
 
 占い師さんに帰り際、色々失礼なことを言ってごめんなさいと言われたことを妹に話すと、「みんな、ビシバシ言われたいから占いに行くのよ。」とあっさり言いました。

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