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水晶のカフェ

星の光を受けてキラキラと輝く建物がある。屋根がとんがっていて、透明の壁。中が見えている。温室みたいなカフェだ。
中にどうやって入るんだっけ。。。えっと、とりあえずそのまま入るのね。
ドアはないんだけど、そのまま出入りするらしい。私も案内役について入っていく。

おお、ここは、もしや水晶の中では???なんかそんな気がした。だって中は眩いのだ。案内役を見ていると、カメレオンが目をひっくり返すみたいに、ギョロリと眼球を一度閉じてから動かした。自分もそれを見ていたら、なんとなく瞬きしたが、次に目を開けた時には、光に慣れていた。光量に慣れたようだ。メガネを変えたみたいだ。

そして、中はやっぱりカフェだった。食事ができるようで、何人かが、座ってゆったりと過ごしている。

席に座ると、オーダーは、特にいらないらしく、座るなり、水と一緒にお盆に乗せた食事が運ばれてきた。

「まず水を飲みなさい。」

水晶の中にいるせいか、私が知っている水よりも、濃厚で、透明なミルクのようにも見える。キラキラと7色に光っている。いやこれは私の言語が七色だから、7色に見えているだけど、よく見ると、もっと多くの色に輝いている。透かして案内人の顔を見てみると、その顔は、笑っている。

水は飲んでみると、甘くて香ばしい、そして苦くて涼やかな、不思議な味だ。これもまた言語が足りなくて、表現できない。

「表現はしなくていい。ただ飲みなさい。感じればよい。」

案内人は喋っているようだけど、本当は声は聞こえない。言葉が胸に響いてくるような聞こえ方だ。胸で喋っていると言ってもいい。

私も胸で答えてみる。

「いや、だから喋らなくていいから。」と伝えてきて、笑っている。

感想を言わなくてもいいのだとわかると、なんだか水は、違うものに見える、そうそのままの水。ジュワジュワザザーーー。ああこれは細胞が、水を吸収して、染み込んでいく音だ。わかる時というのは、説明もなく、理解するのだ。当たり前のように。

案内人は満足げにこちらを見ている。それでいい、と言っているかのようだ。

食事は、唐揚げのような。。。がじっと食べる。すごい硬い、というか、これは石ではないか。食べられなかった。「それはまだ無理だね。今度にしなさい。」

代わりに隣の皿に入ったものを見るが、それも動いていて、食べられなそうだった。
今はとりあえず、水でも十分なようだ。

それでも水が十分にエーテルの細胞に行き渡ったので、これでこの世界を旅することができる、と案内人は言った。

さあどこに行こうか水晶のカフェを出て、次はどこへ向かおうか。

***
Inspired by
the 2nd House on the Moon Station from Capricorn to Aquarius

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