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教師のインプット術

0.悩んだ日々 ― なぜこの記事を書くのか

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初任の年、2年目の年、地獄を味わった。

高学年を連続で担任したのだが、とにかく子どもの信頼感を得られない。授業はド下手、そして日々起こるケンカ等のトラブル対応や保護者対応。行事指導に校内事務。失敗の連続だった。残業地獄。心も体もクタクタ。

笑顔は消え、子どもを怒鳴りまくっていた。子どもたちは、さらに離れていった。授業がまったく成立しない。まさに「学級崩壊」そのものの状態。

誰も、私を助けてくれなかった。

いや、助けようがなかった、というのが正しい。小学校の場合、クラスで、大人は担任一人。だから、子どもと担任が信頼関係を結べない場合、即、「詰み」だ。隣クラスの先生が代わりに指導する、というのは難しい。

また、初任研(会社でいう新入社員研修)は「授業」テーマに偏っていて、ニーズからズレていた。もちろん私は、あの頃、ヒドイ授業をしていたが、それは私の教師としての信頼感を下げる一要因ではあっただろうが、もっと手前でつまずいていた。(たとえば「学級経営」や「あの子対応」で。)

3年目、なぜか私はまた、高学年担任を言い渡された。正直、ビックリした。なぜ、あんなにダメな結果を出した私が?…しかし、一方でスッキリしている自分もいた。このまま、高学年担任に苦手意識を持つくらいなら、今、担任した方がいい。むしろ、

3年連続で、今年も失敗したら教員は辞めよう。そう考えていた。

私は、2年目の途中から、受け身的に周りから教えてもらうことや悉皆研修に頼ることをやめた。そのかわり、自分の頭で考えて、自分に必要な知恵を手に入れようともがき続けた。

100冊教育書を読んだ。
30回セミナーに行った。
多くのBlogやメールマガジンを読み漁った。
そして自ら、教室で試し続けた。

すると、3年目から、急にクラスが好転した。職員室の仕事も上手く回るようになった。子どもや職員の私を見る目が、180度変わった。

私は、この経験から、

教師に「インプット」がいかに大切か、思い知った。

・国語の授業で、教師の音読(範読)はどのように読み聞かせるか。
・体育に向かう前、どこで並ばせるか。そのためにどう指示をするか。
・席をよく立ってしまうあの子に、どんな声かけをするか。

新任教師もしくは悩める教師の前には、こんな疑問がゴロゴロと無数に転がっている。…我々はそもそも、知らないと何もできないのだ。

だから、私は書こうと思う。知らない人のもがき方を。

新任もしくは悩める教師の皆さんに、少しでも役立てるなら、うれしい。

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1.掴みにいくインプット

世は、「アウトプット」全盛である。「インプットばかりにならないように、アウトプットもしよう!」 たしかに、そうだ。でも思う。0から1は生まれない。私のこれまでの教員生活を振り返ると、まず何より必要だったのは、圧倒的な「インプット」であった。


「インプット」と一口に言っても、

「与えられるインプット」と「掴みにいくインプット」に分けられる。
「与えられるインプット」は、たとえば、同僚や管理職が勝手に教えてくれたり、自治体の初任者研修で学んだりすることである。
「掴みにいくインプット」は、たとえば、自分でいいなと思って買った教育書を読んだり、授業作りで困ったときに先輩に自分から聞いてみたりすることである。


私が大事だと感じているのは後者、「掴みにいくインプット」である。

理由は3つある。

①やる気が持続する。
②「働き方づくり」「学級づくり」を学べる。
③今後、「与えられるインプット」の機会が減る。


①やる気が持続する。人から言われてやるよりも、自分がやろうと思ったことをやる方が楽しい。考えてみると単純なことだ。「初任研」で得るものが少ない理由がココにある。友人が「これいいよ!」と言って半ば無理やりに貸してきたCDほど聴かないものなのだ。


②「働き方づくり」「学級づくり」を学べる。極論、初任研などの官製研修は9割方、「授業づくり」をテーマにする。しかし、若手教員の多くは、その手前の「働き方づくり」や「学級づくり」でつまずいている。ここにリーチする学びは、自ら掴みにいくしかない。


③今後、「与えられるインプット」の機会が減る。どういうことか。「働き方改革」の大波によって、職場の総仕事量が減るスピードより早く、総残業時間が減っていく未来が想像される。国から教育委員会、教育委員会から現場への圧がかかるからだ。そこで、何が真っ先に削られるか。それは、「若手への声かけ」である。

質問に答えるならまだしも、先輩から勝手に声をかけて、「今日のあの指導なんだけどね…、実は〇〇というやり方もあって…、ほかには…」というような場面はもう期待できないのだ。もっと言うと、そういう生きた学びを提供してくれていた"できる"中堅・ベテラン教員には、校内の仕事が過度に集中している。子育て世代だったりもする。それで、「残業減らせ!」と言われる。もう、職員室で突発的に開かれる「〇〇先生ミニ講座」は期待できないのだ。

この項目のまとめ。「アウトプット」に先立つ「インプット」が必要だ。特に、「掴みにいくインプット」。なぜなら、①やる気が持続する。②「働き方づくり」「学級づくり」を学べる。③今後、「与えられるインプット」の機会が減る。

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2.インプットは1冊の本から


教員は、どんな媒体からインプットすべきだろうか。まず、ありったけの選択肢を並べてみる。教育書、教育書以外の本、教育雑誌、教育WEBサイト、ブログ、メールマガジン、TwitterなどのSNS、YouTube、各種セミナーや勉強会校内の信頼できる先輩に聞く、などなど。


こうやって考えると、私たちがいかに学ぶ環境に恵まれているか、分かる。もし、今の職員室の労働環境が恵まれていなくても、目を外に向ければ、これだけ学べるメディアがあるのだ。むしろ、絞りこんでいくことが難しい。何からまず学ぶかという問題だ。


私は、「本から学ぶ」ことを勧めたい。様々な媒体の中でも、本がいい。

理由は3つある。

①1テーマを深く掘り下げて書かれている。
②その後の「掴みにいくインプット」に広がりが出やすい。
③「1冊読んだ」という達成感を得やすい。


①1テーマを深く掘り下げて書かれている。本とは、そういうものだ。教育雑誌やWEB記事、Twitterにも有益な情報は、たくさんある。しかし、1人の著者が200ページ(120000文字)近くにわたって1テーマで書いてくれるのが、本の良さである。


熱心な発信者のブログやSNSをたずねて、記事を読みつなげば、これに近い情報を得られる。しかし、本の場合、編集者がついているために圧倒的に読みやすく、内容にも系統性がある。何回も読んだ本は、目次をみれば内容をありありと思い出せるものだ。


特に若手教員にとって、日々の仕事は分からないことだらけ。しかし、人間は器用ではない。あれもこれも学ぼうとしては、結局何も身につかない。だから、1テーマに絞った学びの材料を提供する本の存在は、ありがたい。


②その後の「掴みにいくインプット」に広がりが出やすい。たとえば、いいなと感じた本の著者を追いかける。その著者が書いた他の本を読んだり、ブログを読んだり、セミナーに足を運んで生で学んだりすることができる。


本の「参考文献」を読んだり、著者がTwitterをやっていたら、その著者が推した本を読んだりする。つまり、情報の「つながり」を探していく。そうすることで、1冊の本に書かれたハウツーのみならず、その背景にある著者の考え方を想像することができる。


③「1冊読んだ」という達成感を得やすい。1冊の本は、何回も読み返すべきである。しかし、最初のうちは、そんな「べき論」は置いておいて、一回読み切ったらその達成感に浸ればいい。本には、教員の自己肯定感を高める働きがある。だから、学び続けられる。

この項目のまとめ。「掴みにいくインプット」は、1冊の本から始めるとよい。なぜなら、①1テーマを深く掘り下げて書かれている。②その後の「掴みにいくインプット」に広がりが出やすい。③「1冊読んだ」という達成感を得やすい。

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3.「1冊目」の選び方


これまで、教員にとっての「掴みにいくインプット」の重要性を述べた。そしてそれは、1冊の本を手に取ることから始まる、と述べた。…だが、そこに必ず1つの問いが生まれる。

「私はいったい、どの本から読めばいいのか?」という問題である。


「それくらい、自分で選べ。」と言う人もいる。しかし、私は自分の経験を振り返り、思う。「分からないことが分からない」時期が必ずあるし、その時期こそが辛いのだ。書店の教育書コーナーで立ち尽くすあの日の私に、今の私なら次のようにアドバイスするだろう。


1冊目の本には、

①即効性のあるテーマをねらえ。
②売れている本をねらえ。
③読み切れる自信のもてる本をねらえ。


①即効性のあるテーマ。自分の毎日を振り返って、「これ困っているんだよなあ」と思っているテーマをズバリ書いてある本を手にとる。

たとえば、私の中では長い間、「学級経営」「発達障害(気になるあの子対応)」「仕事術」が3大検索ワードであった。


極論、クラスの子が笑顔で過ごせる毎日ならば、仕事はうまく回る。集団を見る目(学級経営)と個々を見る目(特に発達障害への理解)を養うことで、それが可能になる。また、職員室に戻れば、多くの事務仕事が待っている。それらをこなす仕事術も磨ければ、なお良い。


②売れている本。もっと言えば、その年のベストセラーではなく、何年も売れ続けているロングセラーの本を手に取る。多くの人にとって良い本だから売れているのである。個人の当てずっぽうより、客観的データを活用することで、良い情報を掴める可能性は高まる。


たとえば、教育書の最大手、明治図書の「年間ベストセラーランキング2019」が公表されている。目を引くのは、第10位に入っている中村健一先生の『策略-ブラック学級づくり』。2015年の発刊以降、売れ続けている。実際、いい本。


③読み切れる自信のもてる本。1冊の本を読み切れないと、教員の自己肯定感は地に落ちてしまう。だから、タイトル・表紙・目次・序文の内容・フォントの種類や大きさ等、些細なことだと思うかもしれないけれど、大事だ。これらをザっと見て、気に入るものを選びたい。


②に対してまったく矛盾するような主張だが、主観も大切だ。「なんかワクワクする」「自分にも読めそう」「読み進めたくなる」本を。先に挙げた、中村健一先生の著書は、軽妙な文体で読みやすい。雑誌を読むような気軽さで読め、内容は本格的。1冊目に最適な著者だ。

この項目のまとめ。1冊目の本を選ぶ時の着眼点3つ。①即効性のあるテーマをねらえ。②売れている本をねらえ。③読み切れる自信のもてる本をねらえ。 すべてを満たす本の具体例を1つ挙げるなら、"中村健一先生の学級経営本"(ブラックシリーズ等)がある。

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4.セミナーへ行こう


「掴みにいくインプット」の中心は本である、と主張してきた。しかし、活字では伝わりきらない情報がある。たとえば、本では子どもへの様々な言葉かけを学べるが、実際にどんな表情で/身振り手振りで/どれくらいのテンポで/どんな声色で…言えばいいのか。


それを知るには、ライブで体感するのが一番である。つまり、セミナーや勉強会と呼ばれるものに足を運ぶことだ。ここで、本を選び始めたときのように迷うことは無い。なぜなら、「(気に入った本の著者名) セミナー」で検索すれば、大体ヒットするからだ。


ところが、私の身の回りを眺めると、セミナーや勉強会に顔を出す先生というのは、恐ろしく少数派である。本まではわりと多くの先生が読むのだが、そこで終わりやすい。体感的には、本を読む先生が10人いたら、セミナーまで行く先生は1,2人である。


これは本当にもったいないことだ。聞けば、興味はあるが、参加のキッカケをつかめなかったり踏ん切りがつかなかったりするパターンが多いのだ。これって、「気になるけれど入ったことのないレストランに、一人で入るのって躊躇する」現象と似ている。


だったら、仲間と誘い合って、エイヤッと飛びこめばいいのに、と思う。一人で飛びこめるなら、なお良い。最初、「一人で入るのって躊躇する」のはみんな同じ。でも、そこで留まったら、大きな機会損失だ。美味しいグルメにも学びにも、ありつけない。


せっかくだから、ライブで学ぶ良さをもう少し書く。

①活字だけの学びより理解しやすく、仕事改善につながりやすい。
②時間とお金を投資している分、学習効果が最大限に高まる。
③学習者(=子ども)の気持ちになれる。


①活字だけの学びより理解しやすく、仕事改善につながりやすい。セミナー資料や著作と、セミナー本編で語られる内容を合わせると、講師の主張を理解しやすい。そして、しっかり理解できるから、自分の実践にも生かしていくことができる。


②時間とお金を投資している分、学習効果が最大限に高まる。セミナー参加は、休日の貴重な数時間と数千円のコストがかかる。だからこそ、「何か明日に生きる学びを掴んで帰るぞ!」と目の色を変えて頑張れる。(本が「積ん読」化しやすいのは、時間の縛りが無いからだ、と思う。)


③学習者(=子ども)の気持ちになれる。セミナーで、私たちは「子ども目線」で講師(先生)を眺める。「この説明いいな」とか、「いっぺんに多くのことを言い過ぎていて、理解し辛いな」とか。提案内容だけでなく、こういったところからも、私たちは学ぶことができる。

この項目のまとめ。活字だけでは得られない学びを、セミナーで。そこには「①活字だけの学びより理解しやすく、仕事改善につながりやすい。②時間とお金を投資している分、学習効果が最大限に高まる。③学習者(=子ども)の気持ちになれる。」といった良さがある。

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5.校内もしくはネット


ライブの学びの代表格はセミナーや勉強会だが、土日祝日に開催されることが多い。また、開催地域も都市部が主である。時間的もしくは場所的な制約から、有名講師のセミナーや勉強会に参加できない人は、ライブの学びを諦めなければいけないのだろうか。

答えは、否である。

私も、この数年で大きく環境が変わった。結婚して、子どもが生まれ、土日に自由に外出できる機会が減ったのである。ライブで学べるチャンスが減った私は、焦った。そして、試行錯誤の末、2つの活路を見出した。

それは、

第一に、「校内で勝手に学ぶ」ことだ。
第二に、「ネット動画の活用」だ。


「校内で勝手に学ぶ」とは、つまり、自身の勤務校で学べないか再検討したのだ。同僚に学ぶ研修なら、勤務時間内にいくらでも可能である。とはいっても、同僚の先生に「講座を開いてください!」とお願いに行くわけではない。「授業覗いていいですか?」と聞くだけだ。


校内に授業名人は必ず居る。たとえば、「理科が上手い」「話し合い活動がうまい」などの周囲の声があるはずだ。その評判の教科なり、活動を見に行く。そのとき、手ぶらで見に行かない。私は必ず、見たいポイントをメモして行く。漫然と見ても得るものは少ないからだ。


授業の見方について、学級経営分野の著作がたくさんある野中信行先生のブログ記事が、とても参考になる。野中先生の言われる「授業を見ることの視点」がとにかく大事だ。


また、校内の先生に学ぶなら、授業だけでなく「児童指導」を見るといい。たとえば、「集会での語り」や「ケンカ対応」などである。これは、得意・不得意がハッキリ出るし、それこそ外部のセミナーや勉強会では、なかなか学べないことだ。


私の場合、「児童指導」が上手いと呼ばれる先生の言葉を、よくメモする。そして、オッと感じた言葉があれば、その意図を放課後聞くと良い。色々語ってくれるものだ。その学びはノートに朱筆で書き加える。本当に大事だと思ったことはPCで打ち直し、手帳に貼ったりもする。


「ネット動画の活用」とは、つまり、有益な教育情報を動画配信しているメディアをチェックするのだ。私の場合、

スタディサプリ
NITS
教職ネットマガジン

の順に見るようになった。今後は、YouTubeにも有益な教育情報が増えていくだろう。期待したい。


スタディサプリは、尾﨑正彦先生の算数授業動画が◎

NITSは、文科省施策の理解を助けたり、校内研修推進の動画に強み。

教職ネットマガジンは、多くの先生の講座を見放題。月額700円。要点はテキストでも見られる。回し者じゃないけど…、安過ぎ!入って損無しだ。


この項目のまとめ。実地のセミナーに行けなくても、授業や児童指導を「校内で勝手に学ぶ」道がある。また、スタディサプリ、NITS、教職ネットマガジン等の「ネット動画の活用」も勧めたい。特に、教職ネットマガジンは再度、推しておきたい。

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6.ネットだからこその良さ


「掴みにいくインプット」を実現するために、「本」や「セミナー」というメディアを活用することを提案した。その中で、インターネットの活用についても、ふれてきた。ここでは、教員のインプットにおいてネット活用がどのように有効なのか、述べる。


私は、教員こそ日頃からネットで情報収集する恩恵があると思っている。

なぜなら、

①いつでもどこでも見られる
②タブーが少ない
③軽めの情報が多い

1つずつ、詳述する。


①いつでもどこでも見られる。教員は、忙しい。これは、言うまでもない。子どもが登校してから、休憩無しで走り回る。下校後、定時までは1,2時間しかない。そこに会議が入る。当然、校務や自クラスの仕事は後回し。そうして、多くの教員が残業地獄に陥っている。


疲れ切った我々が、それでも今日より明日を輝かせようとするなら、もう一歩の努力が要る。忙しい日常に流されるだけでなく、5分でもいいから個人的に勉強しなきゃいけない。いつでもどこでも見られるネットは、それを助ける。たとえば、通勤時間を活用できるようになる。


私は、電車通勤だが、スマホをさわる人が多い。しかし、その中身はゲームや漫画アプリ、メッセージアプリであることがほとんどだ。気持ちは分かる。でも現状を変えたいと願う教員なら、ここで「教職ネットマガジン」や「NITS」の動画を見るだけでもだいぶ違ってくる。


②タブーが少ない。教育現場には、タブー、もしくはその裏返しの「べき」論であふれている。たとえば、「前年と大きく違うような突飛な職員会議提案をしてはいけない」「初任者はとにかくたくさん指導案を書くべき」。こんな制約にがんじがらめになっている。


現場には「前年踏襲(現状維持)志向」「授業至上主義」などの空気が蔓延しているのだ。ところがネットは、関係ない。Twitterの教員アカウントを覗けば、新規性のある提案にあふれているし、授業と同じくらい学級経営テーマの投稿が多い。(これは、本も同じ傾向がある。)


そりゃ、そうだ。昨年度、初任者が学級崩壊スレスレながら、指導教員に言われるまま、校内研に向けた指導案を何回も書き直す姿を見た。そして夜遅くなり、ほぼ誰もいなくなった職員室で、保護者と何軒も電話でやり取りしていた。こんなリスキーな状況が、実際にある。


③軽めの情報が多い。たとえばTwitterなど、140字の制限がある。スマホで見てもストレスが無い。本のような「重めの学び」をするエネルギーが無い日も、事前にフォローしておいた自分なりに役立つ教育アカウントを流し見る程度のことなら、負担を感じずにできるものだ。

この項目のまとめ。教員こそ日頃からネットで情報収集するメリットがある。なぜなら、①いつでもどこでも見られる、②タブーが少ない、③軽めの情報が多い。ネットを活用すると、疲れた日でも負荷の少ない学び方が可能になる。そしてそういう学び方は、持続しやすい。

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7.重点テーマを決めよう


初任者や若手がインプットするなら、時期ごとに重点テーマを決める。あれもこれも、では身につかない。たとえば、書店で3冊の教育書を手に取る。このとき、「学級経営」「授業づくり」「評価」とバラバラな内容の本を手に取るのではなく、1テーマで3冊買うべきだ。


1テーマで3冊読むと、学びが「点」ではなく「面」になる。どの本も同じようなことを述べている箇所、本ごとに相反することを述べている箇所に、否が応でも目が向くからだ。


違う著者でも、同じようなことを書いていることは、とても多い。たとえば、「学級経営」テーマ本の多くには、「4月が勝負なので、事前計画を綿密に立てる」とか「できていない子を叱るより、できている子を褒める」とか、書いてある。


全国の熱心な先生が、共通の原則に気づいている。ということは、「私の教室でも同じなんだろうな」と考えるのが自然である。こういう気づきを、自分なりにノートに箇条書きしておくと良い。


本ごとに相反する記述を見つけたとき、どうするか。これもまた、面白い。自分の頭で、どちらがより正しいか考えて、選び取る。既に教員経験があるならその経験と照らして。初任なら、これまでの人生と照らして考える。失敗してもいい。そんなときは、もう一方を試す。


2019年に『メモの魔力』が売れたが、この本の肝は、インプットをどのようにアウトプットに生かすか、ということ。そのために、本などから得た知識をそのままの知識ではなく、抽象化して、自分の日常に転用できないか探るのだ。


1テーマで3冊読む方法は、この入門編と言っていい。3冊読むことで、知識がネットワーク化し、自分の日常に生かしやすくなる。「読んだだけ」で終わることを防げるのだ。


私たちは、「やりたいことリスト」や「勉強したいことリスト」を積み上げ過ぎる傾向がある。あれもこれもの勉強は無理。そんな計画は頓挫し、教師の自己肯定感を下げるだけだ。初めて教育書を手に取る人は、とりあえず「学級経営」の1テーマに絞って、本を手に取ってみてはどうか。


学級経営で3冊読むなら、の個人的なリスト。

向山洋一『授業の腕をあげる法則』
野中信行『新卒時代を乗り切る! 教師1年目の教科書』
中村健一『策略-ブラック学級づくり』

余裕があったら、4冊目。(笑)

中村健一『担任必携!学級づくり作戦ノート』


この項目のまとめ。あれもこれものインプットは、効果が薄い。意識的に重点テーマを決めてインプットすると、「読んだだけ」で終わらない。春なら、学級経営(含、学級開き)テーマの本を固め読みすることを勧める。

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8.補足情報

ここでは、これまでの内容に収まりきらなかったインプット術の具体を箇条書きしていく。思い出したら、また、追記するかもしれない。(笑)

補足情報①。「発達障害(気になるあの子対応)」テーマで学ぶなら、『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』という家庭育児書が、ほとんどの教育書よりも具体的で、実践に向く。絶対読みたい本。15万部売れた本なので、保護者も読んでいる可能性あり。
補足情報②。『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』で優しく語られる応用行動分析(ABA)の手法が、気になる子対応に悩む教員にとって福音になる。このABAは、教職ネットマガジン南惠介先生@KeisukeMinami5が動画解説されている。これもぜひ見ておきたい。
補足情報③。「仕事術」テーマは、バカにできない。教員は、およそ"本業"とは思えないような事務作業が多い。この時間をどうやって圧縮していくか。どうやって、"本業"にかける時間を最大化するか。さる先生@saruesteacher『全部やろうはバカやろう』は必読の書である。(※図解版が出た。これは、特にいいと思う。)
補足情報④。働き方改革の大波の中で、「仕事術」はホットテーマだ。だから、ツイッターにも有益な情報が多々流れてくる。たとえば、T先生@mechosenseのツイートブログはとても勉強になる。
補足情報⑤。「仕事術」と切っても切り離せないのが、手帳の使い方だと思う。しかし、現場教師の手帳の使い方を具体的に見せてくれる本は思いのほか、少ない。『THE 手帳術』という本は、いろんな先生の手帳術や時間管理が知れて、オススメ。
補足情報⑥。4月始まりの手帳を買う人が多いと思うが、『スクールプランニングノート』は教師用手帳として歴史があり、オススメできる。ただ、3月末は在庫切れして、個人の転売業者が定価より高くAmazonで売る。間違って、それに手を出さぬよう。(笑)

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9.おわりに

教師の仕事の美点の1つは、

「何度でも、やり直しがきくところ」

だと思う。

子どもたちは、まっすぐにあなたを見ている。

今までの自分、なんてカンケー無い。

見られているのは、"今"の自分、そして、これからの自分!

そのために日々インプットし、成長し続ける教師でいよう!!

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