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2023 天秤座の言葉┃大竹伸朗 ~自分の中に、「既にそこにあるもの」の存在に気づけるだろうか

水星神ヘルメスが発明した太陽神アポロンの竪琴の神話をご存じですか。

心理占星術における太陽は、人生をかけて目指す理想の姿。
しかし、太陽の理想や意図は、水星という竪琴=言葉があるからこそ美しい音色を奏でることができるのです。

太陽の言葉=アポロンの竪琴のメッセージに耳を澄ませてみてください。
あなたの生き方、働き方のヒントを受け取ることができるかもしれません。

心理占星術家nicoが選んだ今月の竪琴
天秤座・太陽の言葉は…

 男四十にでもなれば、もう少し一日の終わりに〝充実〟というやつの片鱗でも頭上三十センチあたりにポッカリ現れるものかと思っていたが、今、漠然と自分自身のことでわかっていることと言えば、どうやら自分は何かを何かの上に貼ったり塗ったりするのがすごく好きらしいといったことぐらいで、充実どころか今日もまた、〝届かなかったもどかしきやるせなさ〟で一日が過ぎていく。

(中略)

 人は一生を費やし様々な人々と出会い、色々なことを経験し、それぞれの感覚に合った事柄に沿って学んでいくのだろうが、結局最終的に体の中に残るのは、個々が動物としての本能によって五感経由で反射的に選択し蓄積していったものなのかもしれない。それも本人がまったく意識していないところで。

(中略)

 それが最終的に何になるのか、何の役に立つのかさっぱりわからないし、わかろうとする意志すら僕にはない。僕にできることといえば、向こうからやってきた形に対して、瞬間的に持ってしまった確信を頼りに、時間を積み重ねていくことしかない。

著書『既にそこにあるもの 』より

 2016年牡羊座期から、著名人の言葉と太陽サインとを結びつけて占星術的な解釈を考えてみているが、今回ほど言葉選びに苦労した人物はいない。第一線で活躍するアーティストの中でも群を抜いて出版された書籍も多く、また積極的にインタビューや対談の場を設けているので、その材料に困らないはずなのに。

 いや、それゆえに難しいのかもしれない。大竹伸朗は40年もの間、第一線を走り続け、また制作した作品の分量もとんでもなく膨大である。絵画、版画、ドローイング、立体作品、映像、絵本、音、著作物、インスタレーション、さらには直島に実際入浴できる銭湯(美術作品)までつくっている。まったくどこをどう捉えていいものか、とにかくひとつのジャンルに収まらない人物なのだ。

憶景14: 画像は【公式】大竹伸朗展よりお借りしています

 だが、もしかしたら、これこそが天秤座の生き様なのかもしれない。

 そして、悩みに悩んで選んだ言葉というのが上記のものだ。今から、この言葉の解説をするにあたり、同じく天秤座太陽を持つ写真家の森山大道との対談を先に記しておこう。

森山 だって『既にそこにあるもの』というタイトルがすごいじゃない? そんなこと言われたら、僕らカメラマンはお手上げだもの。写真を撮るということは、まさにそれしかないんだから。おーっ、言われたなーと思ってね。

大竹 ゴミ箱の中にたまたま失敗ポラが捨ててあったのを見た時、自分が描きたいものが「既にそこにある」ってことに気づいたんだよね。何でこんなにいいものが自然にできるんだろうっていう驚き。ポラに興味を持ったとすら言えなくて、ただ「それが落ちていた」だけ。自分にとって完璧なものが既にゴミ箱にあった。

 そうなのだ。実際そうなのだ。私も今月の言葉を「既にそこにあるもの」としようかと思ったくらい、この言葉は「まさにそれしかない」ほどに天秤座的――天秤座の支配星の金星的であり、活動サイン的、風エレメント的であり、そして7ハウス的――なのだ。

 それはなぜか。

 素数である「7」、そして風エレメントは、流動性、予測できないものとの出会いを意味している。よく講座などでも伝えている6=乙女座まででつくり上げた「わたし/わたしだと思っているもの」に揺さぶりをかけ、ズレをつくり、個人の新たな可能性=他者との出会いをもたらすこと、それが天秤座の体験である。

 ここから先は、自分が予測できることを手放すことでしか、自分を知る方法はないのだ。「向こうからやってきた形に対して、瞬間的に持ってしまった確信を頼りに」進んでいくことでしか、自分の「目指すべき姿」に気づくことができない。なぜなら、自分のことは自分が一番わからないからだ。

 5歳のわたしは、心理占星術というよくわからないものに必死に向き合っている50歳を過ぎたわたしの姿を想像することができただろうか。多くの人が自伝として語る「〇〇との出会いが私の人生を変えた」というのは、あながちドラマチックすぎる表現とも言えなくはないだろう。

 だからつまり、ここから先は「向こうからやってきた形」と出会うことでしか、自分の求めているものに気づくことができないのである。

 「充実どころか今日もまた、〝届かなかったもどかしきやるせなさ〟で一日が過ぎていく」中で、だからこそ風エレメント的視点「たまたま失敗ポラが捨ててあったのを見た時、自分が描きたいものが「既にそこにある」ってことに気づ」くという自由性、解放性が大切になるのではないか。

 それが天秤座にとって重要な体験となる「わたし(牡牛座・金星)であってわたしではないもの(天秤座・金星)との出会い」ということになる。 

 大竹伸朗で言うと、

牡牛座・金星
今、漠然と自分自身のことでわかっていることと言えば、どうやら自分は何かを何かの上に貼ったり塗ったりするのがすごく好きらしいといったことぐらいで

天秤座・金星
ゴミ箱の中にたまたま失敗ポラが捨ててあったのを見た時、自分が描きたいものが「既にそこにある」ってことに気づいたんだよね


ということは、天秤座まで進んだ段階で「向こうからやってきた形に対して、瞬間的に持ってしまった確信を頼りに」進むためには、「どうやら」「すごく好きらしい」といった感受性を自分なりに理解しておくことも大事かもしれない。そうしないと、意識的にも無意識的にも「向こうからやってきた形」に気づくのは難しいからだ。

 大竹伸朗の別の言葉で言えば「他人から見れば「これのどこがいいんですか?」というものにグラッと気持ちが動く」というように、自分の感受性が何を求めているのかに気づいておく。そうすれば、「既にそこにある」という認識とともに「時間を積み重ねていく」ことができるかもしれない。

 ロンドンの蚤の市でマッチのラベルがびっしり貼られたノートブックを手に立ちすくんでいる男を見て、「自分がやるべきことがわかった」という確信を得ることができるかどうかは、たとえ薄らぼんやりであっても、自分の中に「既にそこにある」I have=金星の存在に気づいておくことは重要である。


 2023年の天秤座期、皆さんは、どのような「向こうからやってきた形」に出会うことができただろうか。何に対して、グラッと気持ちが動いただろうか。気づけたのはなぜだろうか。自分の中に既にあったものは何だったのだろう。

 もし、気づくことができていないとしたら、それはどうしてなのだろう。なぜ、気づくことができないのだろう。本当に出会えてないのだろうか。ゴミ=不必要なものに見えて、実はそれこそが自分にとっての探し物だったということはないだろうか。

 目の前に「自分にとって完璧なものが既にゴミ箱にあった」なんてことは往々にしてある。自分と出会い直せるチャンスなのだから、もう一度、視点を変えて自分を取り巻く世界を見回してみてほしい。

 今ここにどんな自分が存在しているのだろうか。

 天秤座期とは、実際、なんとも興味深い時期なのだ。生きることに退屈している暇などない。



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