モン族のおばちゃん

 畑の草むしりをしていると柵の外からモン族のおばちゃんが声をかけてくれた。「何してるんだ?」「人を雇わないのか?」「給料はいくらか?」今までも、キン族の人やムオン族の人がいつ人を雇うのか聞いてきてくれたけれど、限界までアルバイトを雇わないで畑作業しようと思って断っていた。ベビーリーフの生産出荷が始まってから、収穫、仕分け出荷に忙しくなり、まだまだ農場の設備を整えたり、堆肥つくりのための農業資材集めもしなければならないのになかなかそっちまで、手が回らなくなってきたところだった。いろんな会話を通じて、このあたりの相場が時給20,000VNDくらいとあたりをつけていたので、1時間20,000VND(約100円)と話すと、モン族のおばちゃんとおばあちゃんが畑に入ってきて、草むしりを手伝ってくれた。
 ムオン族やタイ族は、祭りの時やお正月などのときには民族衣装を着るが普段は普通の衣服を着ているし、柔和で外向的だ。それに対して、モン族は独特のカラフルな民族衣装に普段から身を包み、民族の独自性を頑なに貫いている。衣装の種類によって、花モン族や黒モン族などさらに分けられたりする。ベトナム北部ではSAPAという場所がモン族の地域で有名な場所だが、観光名所になってしまい、モン族のおばちゃんたちが英語や中国語で雑貨などを物売りしている姿は若干興ざめな感がある。
 そういった観光客慣れしたモン族ではなく、山に暮らす本物のマジモン族が民族衣装を着て、うちの畑で農作業をしている。ベトナム生活13年。ついにうちの畑にも、本物のモン族が来るようになったと思うととても感慨深かった。

この日、スタッフのDUONG君が実家から戻ってくるので、バスストップまでバイクで迎えに行った。帰ってくると、モン族のおばちゃんたちが9人増えていた。ドラクエの仲間を呼んだ。というメッセージが頭の中に流れた。
さすがに9人は雇えないのだが、この日だけは働いてもらって、次から2人だけにしてもらった。民族の団結力はものすごい。


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