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かわったゆめ/あとがき

 昭和のゆめ、musicianのゆめ、三者面談で語ったゆめ、阿弥陀でゆめ破れて、花の都を夢みて、空を飛ぶ人のゆめ、一度ゆめがなくなってからの働かないゆめ、小説を書くゆめ。書きながらいろんな仕事をして、34歳のおれは職業訓練校の調理科にいた。書く仕事もしたけれど、今はごはんを作る仕事をしている。まさか!

「焼鳥屋さんにならせるためにここまで育ててきたわけじゃない!」
三者面談の後、あんな厳しい顔の母を見たのに。まだ焼いていないけど、結局焼鳥焼いたりして。

「途中でやめんなよ」
客室乗務員になる学校に通う時に父が言ったのに。ごめん、CAはもうない。でもこの言葉がどのゆめの途中でも思い出されて、おれって何も叶えないまま終わるのかな、全部無駄なのかな、と苦しくなる夜がなかったわけじゃない。けれど、どれも嫌になって、あきらめて、途中で投げ出したわけじゃない。ただゆめがかわっただけ。

 そう、ゆめがかわったのさ。

 いつかヒノと一緒にごはんのお店を始めて、小説も書いて、にゃーにゃがいなくなったばかりで今はまだ新しい猫を飼おうという気にはなれなけれどいつか飼えたらいいな。これが今のゆめ。

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