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先住民族の話

漆野密子は、貧乏だ。
なぜなら、ただいま就活中だから。
家賃も滞納し、退去処分になるかもしれない。

けれど、そんな厳しい現実の中でも読書は密子に心の潤いを与えた。

アメリカの先住民族は、アジアから渡来してきた人々だという。
だから、太平洋戦争で日本兵と対峙したネイティブアメリカンの兵士は、自分に命令する上官より、目の前の日本兵の方が親近感がわいたそうだ。

そんな話を読んで、わくわくする密子。
図書館は、ただで山ほど本が読める。

あの頃もそんなふうに思って、夕陽の落ちるまで図書室にいた。
司書の先生に合図されると、とても悲しい気持ちになった。
そして、繁華街へ旅立つ密子。
おじさんとお茶して、手を繋いで、その日読んだ本の内容なんか、すっかり忘れてしまうようなことをした。
お金は前払い。それは徹底していた。

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