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スランプ状態に陥った小説家 十三マリー(じゅうそうまりー)は、ここ二日間、眠れずにいた。 …
珍しく電車で出版社に向かったマリー。 iPhoneで、ネットニュースを確認していると、電車が急…
「まだ書けないの?」 窓際のデスクの上で、小瓶のお風呂に浸かりながら、ポポ子は言った。 …
南海出版に呼ばれたマリー。 懐かしい打ち合わせ場所に通された。編集部の雑踏の脇に、小さな…
新地界は、マリーの隣でスケッチを始め、鉛筆で、あっという間に描きあげた。 「僕のイメージ…
窓際のポポ子のお喋りが止まらない。マリーがまた小説を書くと聞いて、嬉しくてたまらないのだ…
「いじめられるのがしんどいの? 界がしんどいの?」 窓際のポポ子が、小瓶の中で泳ぎながら言った。 「ちゃんと、お水に顔つけて泳いでみなよ」 「いやーだよっ!」 これから、ずっと新地界と一緒だ。 施設の取材の間、ずっと。 界は、優しい。いつだって優しい。この2年、売れない一発屋小説家のわたしのことを、ずっとずっと優しく支えてくれている。 だらだら怠けて、ゴロゴロ寝そべって、お菓子ばかり食べて、パソコンに向かわないわたしでも、梅田麗子の悪口ばかり言い続けて、嫌な貧相
晴れ渡った空の下、十三マリーは田舎道を歩いていた。心なしか、そんなに重い気分でもない。き…
その福祉施設は、丘の上にあった。まるで、ヨーロッパの古城のような、煉瓦造りのその施設の門…
マリーは、事務所で本を読んでいた。この世界では有名で偉い人が書いたらしい本。 仕事だと思…
マリーが朝目覚めると、枕の横に、小さな蜘蛛の死骸があった。そっと指で摘み上げると、シーツ…
「最近のマリーったら、ブサイクになってきた!」 マリーが、アイスの棒で作ったブランコに乗…
セミがやかましい青空の下で、マリーは、思い余って、南海出版に電話をかけていた。何度か呼び…
「なんで!蕎麦なんですかぁ?!」 マリーは、ざる蕎麦をすすりながら文句を言っていた。 「何言ってんのよ!蕎麦は美容にいいのよ!!ルチンが入ってて、お肌ツルツル。あなた、肌ガッサガサじゃないの!」 梅田麗子は、満足そうに蕎麦をすすっていた。 「マリーは、蕎麦より、おフランス料理が食べたかったんだよねぇ」 マリーの横で、新地界が楽しそうに言った。マリーは、ギロッと界を睨むと、 「なんで!界がいるんだ!!」 と怒った。界は、それでもニコニコして、 「ちゃんと、外出届