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Q.殺し屋には向かない仕事ってなーんだ? A.異世界転生勇者

 俺の仕事は激しいストレスを感じるものだ。
「ボルシチ! ここで会ったが百年目! 覚悟しn、」
 バンバン。二発撃って終わり。断末魔も無い。月明かりのない夜だからかいつもより馬鹿に絡まれる。
「ボルシチ! オジキの敵だ! 豚のえs、」
 バンババン。ムカついたので三発も撃ち込んでやった。俺は依頼されたら人間を殺すのが仕事なのでずっと誰の敵だった。
 麗しのクレムリンも随分治安が悪くなった気がする。今日はもう五人も撃ち殺している。さっきので八人目だ。酒を飲んでいるので足し算が出来ない。
「ボルシチ! しn、」
 バババババババン。スチェッキンをうっかりフルオートでブッ放してしまった。なんで全員わざわざ俺の渾名を言いながら襲ってくるんだろうな? 意味が分からん。
 こうした襲撃は毎日のイベントとなっている。俺は毎日疲れている。人を殺したり拷問したり忙しいのだ。朝の五時半から夜の十一時まで。三十六連勤は確実に越している。なんでマフィアは抗争なんてしているんだろう。飽きないのだろうか。
 疲れ果てた俺の癒やし。それは日本産アニメを見ることだった。出て来る女の子達がみんなパステルカラーでキラキラしていて可愛い。道端に突っ立ってる売女共とは違う。だから俺はアニメが好きだ。シュナは俺の嫁。
 今日は買ったBlu-rayBOXが届いているはずだ。楽しみだな、「がっこうぐらし!」。やはりピンク髪に惹かれてしまうな。
 そんなことを考えていたせいで、俺はつい表通りに飛び出してしまった。そして無灯火のトラックに轢かれた。


「……で…………きこえ……聞こえますか?」
 優しい声が聞こえる。目を覚ますと、俺はピンク髪の可愛い女の子に膝枕されていた。彼女はファンタジックで若干透けたドレスを着ていた。
「えっ……天国……?」
「いいえ、異界の勇者様。どうか我が民を戦禍よりお救いください」
「えっ異世界転生? マジ?」



つづく(795字)

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