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中之島の風景

大阪の中之島には中央公会堂がある。

小学校の時に写生にきた場所だ。辰野金吾が設計した美しい建物だと聞いている。確かに美しいし、今も写生をしている人を良くみかける。

授業の一環として中之島に写生にきたのか、美術好きな先生の提案が採用されて写生に訪れたのかは覚えていない。

私には、この建物の近くに来るたびに思い出すことがある。

当時の担任は自分の生徒を絵のコンテストに入賞させまくっていた。自身も世界的に有名なコンテストに入賞していた美術好きな先生。絵だけでなく、独自に考えたことをどんどんする先生だった。

写生に行った日は天気もよく、大きな綺麗な建物をながめいてた。どうやってこの美しい建物を画用紙に取り込むのがいいのか・・なんて小学生は考えていない。見たまま画用紙にかく、のっぺりした公会堂を。

なんか上手くいかないけど、う~ん。なんだろうなぁ~と思いながら絵筆をとっていると、スタスタスタっと先生が私の元にやってきた。「あんた、あかんよ。こうしたほうがいいよ。」と言われたと思ったら、あっという間に私の画用紙に描き始めた。何も言えずただ見ている小学生。

これでいいと手渡された公会堂は紫の公会堂になっていた。本当はレンガ色なんだけどなぁ~と思いながら、素直に受け取った。先生がいいというなら、そうなんだろう。素直だった。

写生から帰って、しばらくしたら公会堂で写生した絵を展覧会に出展するという話を聞かされた。数枚の絵を先生が選んでいく。私の紫の公会堂も選んで持っていかれた。

後日、私の絵が入賞したと連絡がはいった。もう、先生は大喜び。

「ん・・・。これってどうなんやろ?」子供心に思っていた。でも、黙っていた。だって、学校の朝礼でも何かお祝いみたいなのを言われたから。でも、自分で描いたんじゃないんだけどなぁ~という思いは消えなかった。

入賞がきまってしばらくしたら、美術館だったか、忘れたけれど入賞した小学生の作品が期間を決めて展示されることになった。もちろん、親は喜んで見に行った。写真をバシバシとっていた。

親にこっそり言った。「これ、ほとんど先生が描いてん。」

言わずにはいられなかった。親がどんな顔をしたのかは覚えていない。

絵が入賞してから、わたしは絵が上手いということになった。


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