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孤独と「戦う」わけではなく、また「乗り越える」でもなく…

『タイムマシンに
乗れないぼくたち』を読んだ。

人知れず抱えている
居心地の悪さや寂しさ。
そんな感情に寄り添い、
ふと心が軽くなる瞬間を
鮮やかに掬い取る
注目の著者による
七篇の短編小説集は、
まるで心の深いところに
そっと手を差し伸べるような
作品たちでした。


タイムマシンに
乗れないぼくたち
寺地 はるな (著)

人知れず抱えている居心地の
悪さや寂しさ。

そんな感情に寄り添い、
ふと心が軽くなる瞬間を
鮮やかに掬い取る。

注目の著者が放つ七篇。

「コードネームは保留」
楽器店で働く優香は、
人知れず“殺し屋”の設定を
生きることで、
味気ない日々をこなしていた。

「タイムマシンに
乗れないぼくたち」
新しい街に馴染めない「ぼく」は、
太古の生物が好きで、
博物館が唯一落ち着く場所だった。
ある日、博物館で“現実逃避”を
しているスーツ姿の男性と出会い――

「深く息を吸って、」
息をひそめるように日々を
過ごすかつての「きみ」に、
私は語りかける。

「対岸の叔父」
町いちばんの変わり者、
それがぼくの叔父さんだった。

・・・・・

孤独と「戦う」わけではなく、
また「乗り越える」でもなく、

仲良く手を繋いで
とまではいかないけれども、
孤独とちょうどよい距離を
保ちながらともに
生きていこうとするような、

そういう人びとの物語を書きました。

――寺地はるな

タイムマシンに
乗れないぼくたち
寺地 はるな (著)
Amazonより


「コードネームは保留」では、
楽器店で働く優香の孤独と
日常の中での戦いが
描かれています。
彼女が“殺し屋”の設定を
生きることで、
味気ない日々に少しのスリルを
見出す姿は、
日常の中に小さな冒険を
見つける私たち自身を
思い起こさせます。

「タイムマシンに
乗れないぼくたち」では、
新しい街に馴染めない
「ぼく」が
太古の生物に魅了され、
博物館を心の安らぎの場所
とする姿が心に残ります。
博物館で出会ったスーツ姿の
男性との交流は、
現実逃避の中で見つける
新たなつながりと理解を
描いていて、
温かい気持ちにさせられました。

「口笛」では、どこからか
聞こえてくる口笛と
子育てに奮闘する初音
の幸せが描かれています。
母親としての喜びや悩み、
そしてふとした瞬間に感じる
幸福感がリアルに伝わり、
共感を呼びます。

「夢の女」では、
夫が書いたと思われる小説に
登場する“さえり”という
完璧な女性に嫉妬する妻の
心情が切なくもリアルに
描かれています。
自分と他者を
比較する苦しさが胸に響き
ました。

「深く息を吸って、」では、
かつての「きみ」に
語りかける主人公が、
息をひそめるように日々を
過ごす様子が描かれています。
過去の自分と向き合うことで
見つける新たな自分が、
前向きな一歩を踏み出す
勇気を与えてくれます。

灯台」では、
恋人たちの仲裁役として
関わる第三者としての主人公が
描かれています。
第三者としての
視点から見る友情は
美しいかもしれませんが、
それは時には都合のいい人
になってしまうこともあります。
そんな切ない状況に対して、
この物語は
「都合のいい人を辞めても良い」
と思わせてくれるのです。

「対岸の叔父」では、町一番の
変わり者である叔父との関係が
描かれています。
変わり者の叔父の存在が、
普通の日常に彩りを与え、
特別なものに感じさせてくれます。

どの物語も、
日常の中に潜む孤独や寂しさ、
そして小さな喜びを
美しく描き出しており、
読み終えると心が少し
軽くなるような気持ちに
させてくれます。
女性の繊細な感情や視点が
丁寧に描かれており、
共感しながら読める
素晴らしい短編集でした。

・・・・・

この本が受験に出たと
知ったのは、
Amazonのレビューを読んで
のことでした。
今の受験生は、新刊文芸書を
チェックしておかないと
いけないのかな?
微妙な気持ちになりましたw

Amazonより

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………………
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❤️になってきた。より


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