映像シナリオ「ぼくはプランクトン」

概要:シナリオ学校の課題にて執筆。「ぼくはプランクトン」というタイトルで、短編の映像シナリオという条件あり。尺は約15分。2008/10/29作。

〇ログライン
 いじめられっ子の主人公が転校生との交流で一歩踏み出そうとする話。

〇登場人物
倉田学(10)池屋小学校四年生
間宮健一(10)同
堺秀樹(10)同
池屋小学校・四年二組の先生、生徒たち


〇 池屋小学校・全景
   晴れた日の午後。
   チャイムの音が鳴り、校舎から子どもたちのにぎやかな声が聞こえ
   る。

〇 同・四年二組の教室
   掃除の時間。
   ほとんどの生徒が掃除をサボって騒いでいる中、倉田学は黙々と箒で
   床を掃いている。
   数人の男子たちと喋っていた堺秀樹、学を見ると意地の悪い笑みを浮
   かべ、学に近づき、足を引っかける。
   派手に転ぶ学。
秀樹「あ、わりぃ」
   秀樹、ニヤニヤしながらわざとらしく言う。
   それを見てくすくすと笑う男子たち。
   学、ゆっくりと立ち上がろうとする。
秀樹「おい、こんなところにごみが落ちてるぞ。掃除しないとな」
   秀樹、学の箒を拾い、その箒で学をゴミのように掃きながら叩く。
   他の男子たちも手に箒を持ち、それに参加する。
   床にうずくまる学。
   次第にエスカレートしていく秀樹たちの苛め。
   他の生徒たち、その光景を傍観しているだけで、助けようとしない。

〇 同・ごみ捨て場
   校舎裏のごみ捨て場。
   埃まみれの学、ごみ袋を捨てに来る。
   学、疲れたようにため息をつき戻ろうとした時、塀の向こう側から同
   じクラスの女子数人の声が聞こえる。
女子A「今日も倉田くん、酷かったねー」
女子B「うん。でも私、もういつものことで慣れっこになってきちゃった」
女子C「あはは、私も。だって見てて楽しいもん。倉田くん苛め」
女子A「なぜか苛めたくなるよね、倉田くんって」
   楽しそうに笑いながら去って行く女子たちの声。
   学、暗い表情で俯き、じっと立っている。
   拳を握り締める学。

〇 同・四年二組の教室(朝)
   朝のホームルームの前。
   先生が来るまで賑やかに騒いでいる生徒たち。
   学、教室の隅の席に目立たないようにぽつんと座っている。
   そこへ先生が入ってきて、静かになる生徒たち。
   教室に入ってきた先生の後ろに間宮健一がついて入ってくる。
   先生、黒板に健一の名前を書き紹介する。
先生「今日から皆と一緒に勉強する、間宮健一くんだ」
健一「間宮健一です。よろしく」
   興味なさそうにそっけなく挨拶をする健一。
   物珍しそうにざわざわと騒ぐ生徒たち。
   学、健一をじっと見つめる。
   健一、学の視線に気付き、学の方を見る。
   慌てて目を逸らし、俯く学。
   そんな学をじっと見る健一。

    ×    ×    ×

   休み時間。
   健一を取り囲む生徒たち。
   興味津々で質問をしてくる生徒たちに対して、興味なさそうに淡々と
   答える健一。
   その様子を遠くから見ている学。

〇 同・四年二組の教室
   放課後、一人で教室にいる学、ランドセルを背負い帰ろうとすると、
   健一が来て声をかける。
健一「一緒に帰ろ」
   突然のことで驚く学、声が出ない。

〇 通学路
   車の通りが少ない道。
   学と健一が並んで歩いている。
   会話がなく気まずい雰囲気の学と健一。
   しばらく並んで歩いていると、ペットショップの前に着く。
   店頭には水槽が並び、沢山の種類の魚を見ることができる。
   健一、水槽に近づき楽しそうに見つめる。
   健一について水槽に近づく学、恐る恐る話しかける。
学「間宮くんって魚好きなの?」
健一「うん。魚だけじゃなく、水の中にいる生き物が好きなんだ。倉田くん
 は?」
学「うん、僕も好きかな……」
健一「そうだ! 今度僕んちにおいでよ。いろんな魚いるんだ」
   楽しそうに答える健一。
   少し戸惑う学、次第に笑顔になり頷く。

〇 池屋小学校・四年二組の教室
   休み時間。
   楽しそうに会話している学と健一。
   秀樹や男子数人のグループ、学と健一を不愉快そうに見ている。

    ×    ×    ×

   掃除の時間。
   いつものように掃除をサボる生徒がいる中、学と健一が仲良く掃除を
   している。
   学たちを見てひそひそと話したり、怪訝そうに見る生徒たち。
   秀樹、じっと学と健一を睨んでいる。

    ×    ×    ×

   放課後。
   学、教室に入ると健一が一人、ぽつんと席に座って何かしている。
   ランドセルを背負い健一に近づく学、健一の机に健一の悪口が落書き
   されているのを見つけ驚く。
   その落書きを黙々と消している健一。
学「間宮くん……」
   心配そうに声をかける学。
   健一、気にせずその落書きを消し終わるとランドセルを背負い、学に
   微笑みかける。
健一「さ、帰ろ」
学「う、うん……」
   さっさと歩いていく健一、その後をついて行く学。

〇 健一の部屋
   綺麗に整理整頓された部屋。
   本棚には沢山の図鑑や海の生き物に関する本が並んでいる。
   小さいながらも熱帯魚の水槽が沢山ある。
   興味津々で部屋を見わたす学。
学「うわぁ、すごいね」
   健一、嬉しそうに少し微笑む。

    ×    ×    ×

   床に図鑑や海の生き物に関する本が数冊広げて置かれている。
   学と健一、熱帯魚の水槽をじっと見つめている。
   水槽に餌を入れる健一。
   パクパクと餌を食べている水槽の熱帯魚。
健一「……僕たちのクラスも水の中みたいだね」
学「え?」
健一「強い生き物が弱い生き物を食べる……そんな生態ピラミッドの中にい
 るみたい」
学「……それなら僕たちは、一番下にいるプランクトンだね」
健一「そうかもね……でもプランクトンって、ピラミッドの中で重要な存在
 なんだよ」
   水槽の熱帯魚を見つめ淡々と話す健一。
   学、健一の方を無言で見る。
健一「ただ浮遊しているちっぽけな奴だけど、いなくなったらピラミッドの
 上にいる生き物は生きていけなくなるんだ」
   水槽を見つめている健一、気づいたように苦笑いする。
健一「あ、でもプランクトンと僕たちじゃ数が全然違うね。ピラミッドが逆
 になっちゃう」
学「ほんとだ」
   微笑む学。
健一「……それでも、食べられちゃうんだよね」
   少し暗い表情になる健一。
   学、健一から水槽の方へ視線を戻す。
   じっと水槽を見つめる健一。
   水槽の中で泳いでいる熱帯魚。

〇 池屋小学校・四年二組の教室
   休み時間。
   次の授業が体育のため、体操着に着替えている生徒たち。
   体操着に着替える学、ふと隣の席にいる健一の方を見る。
   体操着が見当たらず探している健一。
学「ないの? 体操着」
健一「うん……ちゃんと持って来たはずなんだけどなぁ」
   健一と一緒に探し始める学。
   周りの生徒たち、学と健一を無視してさっさと教室を出て行く。
   秀樹と男子数人のグループ、その様子を離れた所から意地悪そうな笑
   みを浮かべながら見て、教室を出て行く。
   他の生徒たちがいなくなり、教室には学と健一だけになる。
   少し焦った様子で言う学。
学「見つからないね。早くしないと、授業始まっちゃうよ」
   無言の健一、黙々と探している。
   健一、ごみ箱の中を覗く。
   ごみ箱の中には、埃まみれになった健一の体操着。
   じっとその体操着を見つめている健一に近づく学、ごみ箱の中の体操
   着を見て驚く。
   健一、ごみ箱から体操着を取り埃をはたき、無言で着替え始める。

    ×    ×    ×

   国語の授業。
   真面目に受けている生徒もいれば、騒いでいる生徒もいる。
先生「お~い、静かにしろよ」
   軽く注意しながら授業を進める先生。
   静かに授業を受けている学。
   学の周りにいる男子、小さく千切った消しゴムを学や健一に投げつけ
   ている。
   真面目に授業を受けている健一の教科書の中は、健一の悪口の落書き
   だらけになっているが、気にした様子もなく授業を受けている。
   秀樹、そんな健一が気に食わない様子で睨み、少し大きめに切った消
   しゴムを健一に投げつける。
   健一の頭に当たる消しゴム。
   健一、少し痛そうに頭をさするが、あまり気にしていない様子。
   秀樹、さらに不愉快な表情になる。

    ×    ×    ×

   掃除の時間。
   いつものように掃除をサボる生徒がいる中、黙々と掃除をしている学
   と健一。
   秀樹たちのグループが騒いでいる近くを掃除しようとする健一。
   不快そうに健一を見る秀樹たち。
   秀樹、健一に近づき押す。
秀樹「お前、邪魔なんだよ!」
   派手に倒れる健一。
   秀樹、倒れている健一を睨む。
   秀樹の後ろで同様に睨む数人の男子たち。
   他の生徒たち、遠巻きで見ている。
   心配そうに健一を見る学。
   ゆっくりと立ち上がる健一。
   秀樹、再び健一を押す。
   尻餅をつく健一。
男子A「倉田と仲良くするからだ」
男子B「そうだよ。俺たちと遊んでたら、苛められなかったのに」
男子C「調子に乗るな!」
   秀樹の後ろにいた男子たちが口々に言う。
   周りの生徒たち、もっとやれという風に囃したてる。
   ゆっくりと立ち上がる健一。
   健一が立ち上がる度に押す秀樹。
   尻餅をつく健一、秀樹を睨む。
秀樹「なに睨んでんだよ!」
   秀樹、健一を睨みかえす。
   素早く立ち上がる健一、秀樹を殴る。
   派手に倒れる秀樹、顔を上げて驚いた表情で健一を見る。
   健一、秀樹をじっと見下ろしている。
   周りで見ていた生徒たちも驚いた表情で健一を静かに見ている。
   驚いた表情の学、恐る恐る健一に声をかける。
学「間宮くん……」
   健一、学の方を見て静かに答える。
健一「たまには逆になってもいいんじゃないかな?」
   少し微笑んでみせる健一。
   驚いた表情の学、次第に微笑む。

                               (了)

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