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【感想】★★★★★「トヨトミの野望」梶山三郎

評価 ★★★★★

内容紹介

■経済界を震撼させた超問題作奇跡の文庫化

「本書の内容のどこまでが事実でどこまでがフィクションなのか。
これについて、巨大自動車企業に極めて近い経営者は99%が事実と私に言い切った。一方で良識ある自動車業界担当の官僚は、まあ、半分くらいじゃないですかね、と口を濁す。名古屋界隈の書店から本書はすべて消えた、とか(中略)さまざまな噂が駆け巡るが、真実を知るものは本書の登場人物のモデルとされる人物だけだろうし、彼らが本書の真偽を語ることは絶対にないだろう。
本書は週刊誌ではないのだから、真偽のほどなどどうでもいい。フィクションと割り切って読むと、これほど面白い企業小説はない」(夏野剛氏による解説より)

感想

世界的な自動車メーカーであるトヨタの奥田時代から豊田章男時代をモチーフとしたノンフィクションとも取れるようなリアリティ溢れる傑作。
結論から言うと、かなり面白い。
物語は、不遇の時を味わったカリスマ武田がトヨトミ自動車の社長となってからを描く。創業家との手に汗を握るやり取りや媚びを売る役員連中と我が道を行く優秀な人材など、幕末の如き多士済々な面々が湧いては消えゆく巨大企業内の純粋な忠誠心や裏切りの中で、世界の頂点へと突き進んでいく。

みな志は一つではあるが、考え方が違う面々が織りなす企業群像劇の傑作。
恐らく事実なのだろうと思わせる程のリアリティは必読。
武田の社長就任の際の
「トヨトミの敵はトヨトミ。現状維持はイコール堕落です。改革意欲のない頑迷固陋な守旧派はせめて仲間の足を引っ張らないよう、邪魔をしないで頂きたい」は組織の中にいたことがある者であれば、震えるほど共感してしまう名言。
中国の取り込みやグリーンメーラー、アメリカ議会の公聴会など緊張感溢れる展開を乗り越えていく様は痛快の極み。
ストレスフルな社会で必死になって働いているサラリーマンは必読です。
きっと勇気が出て新たな一歩を踏み出すきっかけになるでしょう。

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