見出し画像

【感想】★★★★★「村上海賊の娘」和田竜

評価 ★★★★★

内容紹介


第11回本屋大賞受賞。
戦国時代の武将でもある村上武吉の娘である景が主人公の全4巻の長編傑作。

一巻:大阪本願寺が織田信長に攻め立てられ、兵糧の調達を毛利家に頼むところから始まる。毛利家の武闘派である吉川元春は本願寺を助けることに賛成で、理論派の小早川は慎重であった。それでも小早川家の家臣である乃美と小玉が使者となり、村上家へ兵糧の運搬を頼みに行くが……
武吉の条件は児玉と娘である荒くれ者の景との縁談であった。一方、景は武吉な隠れて海路で堺へ行くことに。

2巻:景は目付役として追ってきた弟·景親と共に堺へ行くことになったが、その途中で難波の海賊·真鍋家と遭遇。そこには織田家の家臣が乗っていたが、景はその男を首級にしてしまった。困った真鍋家当主·七五三兵衛は景親を人質に織田家の根城へ。そこへ遅参した景は申し開きを行う予定が大宴会に。翌日、織田家と本願寺家が戦争状態に突入。初めて戦を目の当たりにした景は熱狂する。その渦中、本願寺側の鈴木率いる鉄砲隊によって織田家は劣勢となり、織田側の大将·原田が討たれる。そして、本願寺門徒により景のいる砦は包囲される。

3巻:華のある世界だと思っていた戦は、実際は冷酷な世界だった。人が簡単に死ぬ光景に、自らの甘さを痛感した景は打ちひしがれ、戦の恐怖を募らせ、能島へと帰った。それと入れ替わるように兄と弟は難波海へと赴く。
能島で兄弟の帰りを待つ景は、父·武吉から門徒の見殺しの策を聞く。それに激怒した景は再び難波へと向かう。門徒を救うべく、一人で敵と相見える景。それこそが村上家の秘策·鬼手であった。村上家の禁忌である「戦船に女子を乗せてはいけない」とは、姫を守るために兵が闇雲に戦うという鬼手が起こらないようにするためであった。

4巻:村上対真鍋の戦は劣勢の村上側が一気に盛り返していく。
大花火のような結末まで一気に進んでいく。

感想

対比がはっきりした人物描写と風景描写が秀逸。小早川の策略と武吉の読みの伏線もあり、期待を高めてくれる。
物語全般は気持ちがいいくらいに痛快。ただ、戦のシーンは途中で飽きてくる事もあり、最後も後片付けのような収拾の仕方で勿体ない。例えば『死んだと思われた景が何処かで生きているかもと思わせる』とか、児玉就英が終生未婚だった事実と景との事を結びつけるとか、もっと余韻を引き出して欲しかった。
それでも全4巻があっという間と思わせる傑作。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?