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【感想】★「絶望ノート」歌野晶午

評価 ★

内容紹介

■中学2年の照音は、いじめられる苦しみを「絶望ノート」と名づけた日記帳に書き連ねた。彼はある日、頭部大の石を見つけ、それを「神」とし、自らの血を捧げ、いじめグループの中心人物・是永の死を祈る。結果、是永は死んだ。しかし、収まらないいじめに対し、次々と神に級友の殺人を依頼する。生徒の死について、警察は取り調べを始めるが……。衝撃の結末が襲う長編ミステリ。

感想(ネタバレ含む)

 主人公·太刀川照音が自分自身へのイジメの内容を記した日記の描写から始まる。その内容はただ陰惨で、状況の変遷があるわけでもなく、長いのでかなりしんどい。
 照音の両親が日記を見ることによって、復讐に手を染めていく。能天気な父親が担当教師を強請り、イジメっ子達を殺させ、自らはその教師を殺害。これには多少の驚きがあったが、両親の心理描写が乏しく、ストーリーへの感情移入が出来なかった。
 実は日記はフィクションであり、主人公が親の愛情を確かめるために書いたものであった。散々長々と描かれていた日記が嘘であったという構成にある意味「絶望」した。
 また、親身になって相談に乗ってくれていた副担任は主人公の異母兄であり、その弟思いの副担任は、無職でだらしない実父を殺害するのだが、今まで会った事のなかった異母弟にそこまで思い入れる理由が描かれていない。
 父と話し合いの描写も不十分で、リアリティはない。
 途中、母親が探偵を雇ったり、同級生の別の女子がイジメられたり、その子の親が警察であったりという内容が、最終的には何の収束も見ず、宙吊り状態に。
 全体的に心理描写が乏しく、人物像がブレる。また、登場人物の日記を読んだ感想が全員一緒でつまらない。口調や仕草などの人物描写や個性が完全に抜けている。

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