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【感想】★★「レプリカたちの夜」一條次郎

評価 ★★

内容紹介

■動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。「シロクマを殺せ」と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。卓越したユーモアと圧倒的筆力で描き出すデヴィッド・リンチ的世界観。選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作。
「わかりませんよ。なにがあってもおかしくない世の中ですから」。

感想

冒頭から不思議な世界観を醸し出す。主人公・往本の記憶と登場人物の記憶がずれていたり、全く記憶の無い事が自分の身に降りかかっていたり、全く捉えどころのない内容は、確かにデヴィッド・リンチの「ツインピークス」を彷彿とさせる。

シロクマの行方を本気で探しているような感じでもなく、各登場人物たちと不思議なやり取りに終始し、自分とそっくりの姿も目にし、結局は誰がレプリカであって、果たして自分自身は本物なのか?
そんな事を考えたら、世の中なんて大して意味ないよね。といった世界観が広がっていく。

かなり哲学的な作品であり、誰しもが考えた事のある「生きる事の意味」や「もしも自分以外は想像の産物で、自分が見ていないときは止まっているのでは?」なんていう不条理な世界観が広がっている。
それは少し「エヴァンゲリオン」のようや雰囲気を醸し出している。

著者の文筆力は高いが、伊坂幸太郎を意識してるような独特のユーモアは醸そうとしているのか、残念ながら読むのが飽きてくるほど、鬱陶しい。
決して面白い作品ではないが、不思議な世界観を味わいたい人や現実を逃避したい人にはそれなりに良い作品なのかも知れない。


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