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ラストディール 美術商と名前を失くした肖像

老いぼれ爺さんにドップリ感情移入して、オークションからラストまでずっと刺さりまくりました。

美術商の老いぼれ爺さんオラヴィの元に、生意気なクソガキが、学校の課題である「職業体験」をクリアするために押しかけてきます。娘の子供です。

娘に押し切られた形で仕方なく引き受けたものの、オラヴィはウェルカム度ゼロで、ガキのオットーもやる気ナッシングです。

ある日オークションの下見に行ったところ、オラヴィは署名の無い1つの肖像画に目をつけます。それをソ連のレーピンの作品だと確信します。
レーピン?誰?って感じですが巨匠みたいです。

オークション側はそこに気付いておらず、署名がないために大した価値があるとも思っていません。引退を考えていた彼にとって最後に一花咲かせる千載一遇の大チャンスです。

なんとしてもお宝を掠め取りたいオラヴィ爺さんは、オットーと一緒に作品の真偽を確かめようと調べまくります。贋作だったら悲惨です。オットーは意外な商才とやる気を発揮します。

オークションが始まります。
価格がどんどん釣り上がり、しけた予算しかないシケメンのオラヴィの想定を遥かに超えていきます。

このオークションはなかなかスリリングです。そんなに高く買って偽物だったらどうすんだよ?と心配にもなります。

なんとか落札したオラヴィですが、1週間以内に代金を支払わなければなりません。そんな金なんてあるはずもなく、一生懸命ノートに数字を書き込んで思案していますがなんともなりません。資金ショートあるあるです。

そこで彼はちょっとしたダークサイドに落ちます。資金的に窮乏した人にとってグレーゾーンなどあってないようなもので、真っ黒以外は全て白なので仕方ありません。口下手で実直で商売下手なはずのオラヴィが鬼畜と化して、ペテントークを駆使して資金を調達します。

オラヴィとオットーもお互いを認め合う素晴らしい関係になり、最後の商売も何とかモノにして万々歳と言いたいところですが、ある人物がクズっぷりを発揮してオラヴィは窮地に陥ります。

やはり人間のクズが登場すると物語が締まるし、一気に転がっていきます。

この映画のメインストーリーは、オラヴィ最後のビッグディールを巡る駆け引きですが、仕入れ、資金繰り、買い手との交渉というビジネスのプロセスに緊張感があります。

その緊張感の原因はオラヴィ爺さんの危なっかしさです。見た目と違い意外と地に足がついていません。
大丈夫か?おいおい?って、感じです。
それに、せっかくの名画なのにメルカリで出品するよりも雑に取り扱っています。プチプチで一巻きです。

後半から父と娘と子供のストーリーに重点がシフトしていきますが、問題を引き起こしてるのもこのオラヴィの性格です。善人だけど地に足がついておらず家族を蔑ろにするタイプ。ダメダメ爺だけど、このダメさに妙に共感してしまいました。





伏線をうまく回収して迎えるエンディングは静かな余韻が残ります。

8

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