妄想崇拝

病に蝕まれながら生を希う人の生命の
心を病み手首を切り死を希う者の生命の
取捨選択を誰が決めるというのか

神は気に入った人の魂をそばに置いておくために
早めに天へと引き上げると誰かが言った
ならば遺された者の断末魔のような嘆きを
誰が救うというのか

私は神など信じない
遺された者に嘆きを与えるようなものは
信じるにも値しない
そんなものでは人をひとりも救えない

テレビでは遠くの国の戦争で
多数の命が奪われたと伝えている
神の名の下に殺し合う人々よ
いったい何千年同じことを繰り返すのか

飛ぶ鳥たちに神は見えていないだろう
人里に降りていかざるを得ない熊や狸にも
生命に神は寄り添ってはいない
神とは臆病な人間が創り出した最大の妄想だ

もうやめたらいい
信条とか思想とかいう譫妄など
もう捨てたらいい
妄想から救いなど生まれないのだから

絶望の中何もかも捨て去って
遺された嘆きの中に見た景色
傷ついてきた人々の掌は
思っていたよりもずっと温かかった

もしも救いというものがあるならば
痛みを抱える人の心に宿るのかもしれない
そうだったらいいと願うばかり
どうかかなしみやくるしみをを抱く人の心に
種火のような救いが灯されるようにと

(2023.10.13.13:32)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?