見て見ぬふり

ドラムロールに似たような
音を立てて機関銃が火を吹く場所で
ダンスにも似たような
姿で撃ち殺される人がいる
弾丸が文字どおり雨のように降る中
生きることで精一杯の人々に
美しい音楽は染み渡っていくのだろうか

詩を読み上げるようにして
殺人を正当化する指導者たち
失われた生命のためにどれだけの
かなしみがあるかも気付かないのか
反戦のデモの中暴徒と化す人々の
憂さばらしの背景では
常に誰かが傷つけられているのに

幕間の休憩時間にも人の命は失われていく
病院で 戦場で あるいはビルだった瓦礫の中で
わかっている 頭では理解しているつもり
それなのに現実を見ないふりをして
ぼくは目を閉じる
いや目を背けると言ったほうが正解か

人が傷つけられている現実を知りながら
平和の空の下見て見ぬふりをする自分は
殺人を正当化するのと同罪かもしれない
せめてもの償いを求めるようにして
ぼくは言葉を並べて詩を書くふりをする
行ったことも見たこともないない戦場に
思いを馳せるふりをしながら

(2023.11.13.10:47)
(ココア共和国2024年1月号佳作)

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