見出し画像

#26 ゼロからお店作り|ベトナムの大工は図面が読めない?


■このマガジンについて

ベトナムホーチミン市にネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。


全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。

■工事現場の様子


ホーチミン市古アパート

ベトナムホーチミン市 42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパート。
このアパートはサクセスストーリーが生まれる場所と言われている。

ちなみにこのアパートは、ベトナム政府によって近々取り壊しになる計画が出ている。

それをを知りながら、私はここでネイルサロンを作ることに決めた。

前回までのあらすじ
・解体工事が始まり、いらない壁をどんどん壊していく
・政府の男性が入ってきて、耐力壁を壊したと怒られる
・同時に、工事許可を取っていないことに気づく
・ごにょごにょのお金を男性に支払い、工事許可を無事取得
・壊してはいけない壁を補修(←イマココ)

壁をどんどん壊し↓

ベトナムの工事現場


壊した壁をもとに戻した↓

壁を埋める作業



■ベトナム人はどうやらせっかちだ


工事許可を取っておらず、一時はどうなるかと思った。
が、無事に解体工事は終わり、私達は次の段階に入っていた。

ホーチミン滞在中、私の日課はサロンオープンを色々手伝ってくれているTangくん(タン)と毎朝現場の様子を見に行くことだった。

ある日の朝、いつものように訪れた私達は、部屋を見て衝撃を受ける。

コンクリート

フローリング材を剥がしたタイル床の上でコンクリートが練られている......。

ベトナムのコンクリート

そして練られたコンクリートは固まりつつあった......。

この部屋はもともとタイル床で、前の住人は、上からフローリングを敷いていた。
私達も、新しいフローリングを敷く予定だ。

タイル床の状態で使用しないからとはいえ、コンクリートが固まり、床がボコボコしていたら、フローリングを敷いても仕上がりに影響がでるだろう......

私は、イラッとしつつも「後で施工管理者と話をしよう」と気持ちを切り替えた。(こらえたが正しいかもな)

そして、ふと後ろの壁を見ると...

壁の文字

【【【 え、えぇ? 壁に文字彫ってる!!】】】


この写真では、白チョークで書いてるように見えるが、ネジで文字を彫ったのらしい。

横幅3m以上ある大きな壁にこれでもか!というように大きく文字を彫ってあった。

コンクリートは床に散らばり、壁は文字を掘られガタガタ。
一旦はこらえたが、どうもおさまらない私は、ベトナム人施工管理者が現場に到着した途端、クレームを入れた。

日本語でワーワーと言っている私の言葉は、ベトナム人の彼には伝わっていないだろうが、ガチギレしているのはわかったようだ。

彼は慌ててチョーク買いに走っていた。

この施工会社だけが大胆なだけかも。と思っていた私だったが、そんな事ないと思い知らされる。

解体工事中に見つけたコンセント。
壁に貼ってあった木材を外したら姿をあらわにした。

完全にショートしている。

しかもこのコンセントは、シャワー室のすぐ近く。
ベトナムの電圧って220vだぞ?(ヤベえ!)

ベトナムの電圧とコンセント

現場を見てインプットしたこと
・「敷物が無いから、そのまま床で練っちゃう」「チョークがないからくぎで彫っちゃう」を見て、細々した道具の準備が揃っていないのに、ありものでスタートする印象を感じた。

・壁に貼ってある木を外したら悲惨なコンセントタップが見つかる。隠しちゃえばOK!っていう感覚があるのかもしれない。

ちなみに、私のスタッフでも見かける光景なのだが、ベトナム人はドライバーが無い時、近くにあるハサミを使ってネジを回す。
(道具箱をあけたらドライバーあるんだけどな...)
溝の掃除にもハサミを使う。

ある時、まっすぐに切りたいからと、カッターナイフを使うように指示したが、すぐにハサミに切り替えていた。
彼女たちは「カッターは使いにくい。ハサミのほうが扱いやすい」と言っていた。

最適な道具を使わないのが気になる所ではあるが、この感覚の差は永遠に埋まらない感がある。


■図面を見ずに進めた大工


別の朝、いつものように現場に行き、外壁を見上げると...。

窓がコンクリートで埋められていた。

ホーチミンでお店を作る

これは格子が入った窓だったが、ガラスが割れたらしくベニヤ板で塞がれた状態だった。

お店はできるだけ開口部を残して明るくしたいと思い、ガラスをはめる予定でいた。

図面にも窓だと書かれているのに...。

「なぜだ......!?」

ベトナム人大工


私:ちょっと、ちょっと!タンくん。大工さんはなぜ窓を埋めてるの?

タン:僕もわからないな......なんでかな...。

私:できるだけ光を取り入れたいと図面には窓って書いてあるよね。

タン:うん。そうなんだけど......なんでかな僕もわからない...。

私達は慌てて大工さんに「今すぐにレンガとコンクリートを取り除いて!」と指示をした。

タイミング良く私達が発見したから良かったが、コンクリートが固まった後の発見だったら、面倒なことになっていた。

しかし、格子や壁は汚くなってしまったよ...。(ガーン)

格子窓

サッシ

私:彼はなぜこの窓を埋めちゃったの?意味がわからないよ!(怒怒)

タン:どうしてかな。僕もわからないけど、いらないと思ったかも?

私:図面をちゃんと読んでって説明してよ。

タン:説明したら「自分は図面は読めない」って言われちゃった。
この壁の絵(CGパース)がなかったから埋めちゃったって。

私:マジか。。。施工管理者、そろそろ現場にもどってよぅ。。。

CGパースとはこういう完成予想絵のこと。
たしかにこの部屋のCGパースは作ってなかったが、図面が読めないとは......。

ホーチミン市サロン完成予想パース

図面はこれのこと↓

ベトナムネイルサロン図面


今回の工事監理者、現場にいることが少なかった。
なぜなら、彼はもうすぐ結婚するからだ。

昼は結婚式の準備でおらず、工事もそろそろ切り上げようか、という夕方ごろ、工事現場に戻ってくる。

仕事より家族優先なところがベトナム人らしい.......。

ベトナム人工事管理者


コンクリートトラブルがあってから、現場にいる作業者に「なぜ図面をみてくれないのか?」と詰めると「施工管理者以外みんな図面が読めない」と返答が帰ってきた。
(※私の現場がそうであって、全ての現場に当てはまる事ではありません)


はぁ??施工管理者は結婚式の準備で日中はいないのに!
全員図面が読めないだと?


私は衝撃と怒りで手が震えた。

私だって図面は読めないよ。
でも、大工さんはせめてその都度聞くか、勉強してくれよぅ......。

インプットしたこと
・ベトナムでは、大工さんは全員図面を読めると思ってはいけない

・図面を見ずに勝手に工事が進む。管理者が必要だ。
(私の場合は管理者がいたが、現場に居なかったためにトラブった)

・時間がつくれるなら、できるだけ現場は覗きに行ったほうが良い。

・ベトナムで工事する上で、完成予想CGパースは必須のようだ。



■なんやかんや言いつつ、つじつまを合わせるベトナム人


■■窓のその後■■

格子にコンクリートがこびりついてしまった窓は、白のペンキで塗装した。


ガラスを持ってきてくれたおじさんが施工せず、タンくんが作業している。 

ホーチミンの古アパート

ちなみに、ここにはめる窓ガラスがうまくはまらなかった。
(レンガを積み、コンクリートで埋めているから壁に平行が取れていないのが理由)

現場で微妙に調整する必要があると、おじさんはペンチのようなものでガラスをカットしていた。
(やはり、ハサミ状のものがいいようだ。)

ガラスの調整

ガラスの端はガタガタだったが、そのままシリコンで埋めていく。

ま、まあ。いいんだけどね.......。
「私の見てない所でやってくんないかなぁ」と正直思った。

シリコンで窓を埋める

しかし、窓になったからよしとしよう。


■■壁の文字のその後■■

壁に掘られた文字は、塗装前にパテで埋めることになった。

ベトナムのかべ

最初は文字だけ埋めようという話だったが、茶壁の色が濃すぎてこれから塗るブルーペンキのきれいな発色が期待できないと判断。

結局、全面に白のパテで壁を塗り、平らになるようサンディングする事となる。

壁のパテ埋め

全面パテ埋めたから、壁が更に平らになり、ペンキの色の乗りも仕上がりも予想より良くなった。



■■タイルの上で練られたコンクリート■■

タイル床の上で何も敷かずに練られていたコンクリート。
実は、隣の部屋も同じように床にコンクリートがぶちまけられていた。

ネイルの部屋:タイル床の上から、フローリングを張る。
隣の部屋:タイル床をそのまま使う。

クレームをしてから、コンクリートは容器の中で練られるようになった。
が、時すでに遅し。

床にばらまいたコンクリートは若干固まりつつあり、タイルにこびりついたコンクリートの清掃を丸一日する羽目になった。

2人がかりでコンクリートを掃除↓

ベトナム人の掃除風景

「もしかしたら必要になるかもしれない」と日本から持ってきていたメラミンスポンジ「激落ちくん」

激落ちくんのおかげで、コンクリートはなんとか取り除くことができた。

インプットしたこと
・作業進行、方法にがっかりすることがあるが、つじつまを合わせてくるのがベトナム人。

・ベトナム人の根底には「終わりよければ全てよし」という考えがあるのかもしれない。



この記事が参加している募集

#振り返りnote

85,089件

読んでくださってとっても嬉しいです! いただいたサポートは色々な発信ができるよう勉強に使わせていただきます。