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31ビックバンド部の思い出 ジャズを聴きまくる幸せ

音大ではなく普通の大学に進学してすぐにジャズのビックバンド部に入部した私は、体育会系独特の上下関係に困惑しつつも、ジャズのCDを聞いたり、ライブに行ったりすることに幸せを見出していた。

エレクトーンのT先生がジャズ好きであったし、井上先生もスタンダードジャズのアレンジ譜を多く書いていたので、かなりの曲数のジャズの名曲を弾いたことはあった。こういうの好きだなー、とずっと思っていた。

しかし、自分の身の回りでジャズを積極的に聞いている人はいなかったので、CDを持っていなかったし、ましてライブに行くなんてことは考えられなかった。

初めてジャズのCDを買ったのは、前にも書いたけれど、ジャズピアニストの大西順子さんのアルバムだった。受験生だったある日、TV番組の徹子の部屋にゲストに出ていて、その演奏に衝撃を受けて、翌日に池袋のWAVEまでCDを買いに行ったのだった。大学に入るまで、ジャズのCDといえばその時に買ったCDだけだったと記憶している。

自宅の最寄り駅前に、レンタルCDショップがあった。ジャズのコーナーもあったけれど、何から聞いて良いかすらよくわからなかった。大学に入ってから、詳しい人に教えてもらおう、と思っていた。

だから、スタンダードの曲は数多く知っていても、好きな奏者は誰か?好きなスタイルは?と聞かれると、全く答えられないのであった。

大学に入ってすぐに、ビックバンド部の先輩方に聞いてまわった。すぐに、彼らからジャズのCDを借りて聴くようになり、聴き方のコツを教わることができた。

コツとしてはまず、録音の年代を確認すること。誰が演奏しているのかを確認すること。気に入った奏者がいれば、その奏者が参加している別のアルバムを聞いてみること。こういうふうに聞いていくと、自分の好きな傾向がわかるし、知識も増えるよ、とのことだった。

確かに、そのように聞いていくと、どれを聞いたら良いのかわからない、という状況をすぐに脱することができた。奏者の特徴もわかってくるし、年代が下ると、語法が大きく変わってくる、ということもわかった。奏者の名前と担当楽器も、芋づる式に覚えられた。

初めに好きになったのは、ウィントンケリー、ボビーティモンズ、アートブレーキーとジャズメッセンジャーズあたりであった。

今、Amazonで検索してジャケットを見るだけで、懐かしさが込み上げてくる。

ジャズピアノ定番のビルエバンスやチックコリアやキースジャレットを好きになったのは、何ヶ月も後のことであった。なかなか良さがわからなかった。

このようにして、先輩からCDを借りる他、自宅最寄り駅前のレンタルCDショップのジャズコーナーにあるCDは、全て借りて聞いてしまった。図書館のCDも借りた。

この頃、聴いて聴いて聴きまくっていた経験は、後々大きく役に立つことになった。

大学生であまりお金に余裕はなかったけれど、学校帰りに渋谷のタワーレコードや新宿のディスクユニオンで購入することもあった。懐かしいな。

F年(4年生のこと)に面倒見の良いC先輩がいて、ライブに連れて行ってもらった。C先輩はベースがとても上手だった。ジャズのライブなんて、初心者一人で行くには敷居が高すぎたので、連れて行ってもらえたのはラッキーだった。慣れてくると、ライブにいくのが好きなチェー年生と一緒に行ったり、一人でいくこともあった。

当時は、新宿のダグとか、青山のブルーノートにはよく行った。青山にはボディー(アンドソウル)もあったっけ。名前を忘れたけど原宿や赤坂のライブハウスにも行った。チックコリアやキースジャレットのような大物のライブには、オーチャードホールとか、パルテノン多摩まで行った記憶がある。

このようにして、アルバイト代はCDとライブ代とお酒代に消えていった。

青山のブルーノートに初めて行ったのは、大西順子さんのライブて、C先輩に連れて行ってもらった。大ファンになって初めてのライブ、しかも名前だけ聞いたことのあるブルーノートに行けるなんて、夢のようだった。F年の先輩とは、付き合っているわけでも無いのに、受付の係の人が先輩に私のことを「お連れさまですか?」と聞いていてドキドキしてしまったのを思い出した。

面白かったのは、渋谷にあったビデオ酒場だ。C先輩に連れて行ってもらったので、渋谷駅からどこをどう歩いたのか覚えていないけれど、15分くらい歩いたところの小さいバーで、ジャズ好きの店主にリクエストしてライブビデオを上映してくれるというお店だった。私たちが行った時には、マイルスデイヴィスのライブ映像を見せてもらった。

このように、大学に入ってから、いきなり世界が広がった。と同時に、酒とタバコも覚えてしまった(とうの昔に両方ともやめたけれど)。

体育会系特有の上下関係の厳しいノリに違和感を感じつつも、1年生として可愛がられて、数少ない面倒見の良い先輩にあちこち連れて行ってもらうのは、決して悪くないことだった。


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