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【徒然ゲーム夜話】零 ~紅い蝶~

このゲームをプレイしたのは小学生の時分である。

きっかけは思い出せない。
何故かホラーゲームに興味を持ち、中古価格が丁度同じくらいだったSIRENと本作を天秤にかけ、選んだのが紅い蝶だった。

これは私のオタク人生にとって大きな分岐点になったかもしれない。

首吊り人形の間で止まる

元来ビビリでホラーが大嫌い、リングや呪怨を観て泣き叫ぶような子供だった私に紅い蝶は相当刺激が強かった。
頼りないお姉ちゃんは早々と離脱してしまい、魑魅魍魎が跋扈する皆神村で右往左往する羽目になった。

用もないのに樹月に話しかけに行き、彼から元気を貰いながら牛歩戦法で進めていった。

突然だが、私は首が折れた女が本当に嫌いである。今思い出しても薄ら寒い思いがするほど嫌いである。

作中のイベントで奴が覗いてくるシーンがあった(はずだ)。
僅かに開いた襖から縦に並んだ目がこちらを伺う……というものだと記憶しているが、それが幼き日の私の心に傷をつけた。
以来雑魚霊として湧いてきた奴に対しても強いストレスを感じ、半狂乱になって倒していた記憶がある。

数少ない友人ともぎゃあぎゃあわめきながらプレイしていたが、首吊り人形の間でとうとう進めなくなった。
生理的嫌悪感に見舞われたのだろうか、天井から吊られている日本人形にとてつもない恐怖と威圧感を覚えた。
私は一度ゲームを中断し、攻略本という名の救世主を待つことになる。

攻略本という名の救世主

中学生になった頃、ようやく私は攻略本を手に入れた。

この悪霊が出現する、という心構えができるのは本当に精神衛生を良化させるものである。それでも八章だかの即死させてくる紗重から逃げるのは、分かっていても心を疲弊させた。
初見でこれなら、私はきっとこのゲームを投げ出していただろう。

ハイスコアモードを全てS以上でクリアできたのも偉大な攻略本のお陰である。
巻末などの制作秘話もかなり面白かった。

新境地を開いたエンディング

そしてようやく観たエンディングは、厨ニ真っ只中の青い心に深く突き刺さった。
風情のない表現をすれば近親相姦願望持ちヤンデレお姉ちゃんの壮大な妹愛の物語だということが明かされるが、途中離脱エンド以外は繭にとってハッピーエンドばかりなのだろう。

「一緒に産まれたのに別々に生きて別々に死んでいくのが耐えられない」という彼女の嘆きは分からないでもない。
そして澪もそんな繭の気持ちに気づかないふりをしていた節があるので、ある意味当然の帰結なのかもしれないな、と思った。

確かハードモード以上をクリアすると見られるエンディングの繭の微笑みは恐ろしいが、二人が生き残るエンディングはこれしかないので、まさにハッピーエンドだなーと納得することにした。

既にBLが好きだった中学生の私にとって、百合もいいな……と思わせてくれた作品だった。

慣れればLoveRに

おまけモードも完全クリアし、取れる霊石はすべて取ってラジオで聞き、文献も全て見た後に残っているもの……それはパンチラ撮影会である。

特にゴスロリ衣装は日本人形のような二人によく似合っていたし、繭に階段を上り下りしてもらってベストショットを撮るのに躍起になっていた。
何とは言わないが、色は白だった気がする。

更に余談だが、楔の男の容貌が当時ハマっていた某プロレスラーに似ていると私たち姉妹の間で話題になり、その検証がてら〇七式フィルムで撮影会という名のなぶり殺しを敢行した。
ダメージを与えつつ、コンボは狙わない。そんな調子なので三十分、いやそれ以上に戦っていたと思う。
紗重の開幕突進に備えるために温存した石は使った試しがなかったので、意外と楔戦はなんとかなるものである。

我が聖域である樹月の妹君、千歳ちゃんも私の毒牙にかかった。
たしか遭遇できるポイントは二、三箇所で、出てくるかどうかもランダムだったかと思う。
「お兄ちゃんを返せ!」と辺りを明滅させながら走り回る千歳ちゃんを犬のように追いかけ、やはり〇七式フィルムで撮影しまくった。
余談だが、何戦かしても、彼女の美貌がはっきり分かる写真は片手で数えられる程度しか撮れなかった。

プレイして良かった紅い蝶

最後の項目で雰囲気をぶち壊してしまったが、総括するとプレイして良かったと心から思える作品だった。

単純にホラーとしての完成度が高い。
そして、恐ろしいだけではなく、禁忌的な姉妹愛を描いたストーリーも、妙味としての役割をバッチリ果たしていた。

リメイク版がどんなものかは知らないが、プレイしたことがない万人に進めたい作品だと太鼓判を捺しながら、そろそろ筆を置こうと思う。

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