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痛いの痛いの飛んでいけ

痛い痛い。

心も頭も痛い。

いつも通りにふわーっと掃除してただけなのに、一番苦しい記憶がパッと浮かんできてしまって、消えなくなってしまった。

もう恨んでないよ。
もう全部ちゃんと納得してるよ。

それなのに何でこんなにも癒えてくれないのか。


灰色の冷たい記憶。

あと少しすれば、もうちょっと待てば、きっと来てくれる。お願い、来て。

そうやって何時間も待ち続けた記憶。
約束を守ってくれると信じたくて、抱きしめてほしくて。

本当は分かっていた。
もう、来てくれないことも、約束が守られないことも。その気持ちも優しさも。分かっていた。

分かっていたけれど、信じたかった。


あれからもう4年が経つ。

こんなに鮮明に思い出してしまったのは、いつぶりだろうか。


時の流れとともに痛みも和らいで、憎しみも悲しみも薄れていった。

そのためにできること、思いつくだけ全部やった。

赤の他人ならもっと簡単なことだったのかも知れない。でもそうじゃなかったから。
ちゃんと愛されていると教えてほしくて、ちゃんと好きだと思いたかったから、ただひたむきに傷つけあった。

人と人とが分かり合えないこと、許し合えること、愛というもの、痛みと共に沢山の愛情に触れた。

やっと心の底から何も思わない程に、許すことができるようになった。許す、という言い方も違うように思えるけれど、全てを理解し、受け入れることができた。

それでも、それなのにいまだに涙が止まらなくなるのはなぜだろう。こんなに痛くて苦しいのはなんでなんだろう。


「期待はせずに信用する」
対人関係を円滑にするために必要な考え方。

分かるよ。言いたい事、わかる。

だけどね、信じた先に、僅かな可能性でもとんでもない痛みがあること、知ってる?
それがどんなに癒えない痛みか、恐怖か、知ってる?
本当に大切な人を信じられなくなる、その痛み、知ってる?
許したいのにどうしても許せない、その苦しさ、知ってる?

齟齬があった先でもう一度人を信じるってどんなに勇気がいることか、知ってる?

あの痛みを、あの苦しみを思い出してしまったら、
私はもう二度と、心から人を信じられない。

弱くてごめん。
もう何も思ってないんだよ。ほんとだよ。

あなたのせいだなんて思ってないの、本当だよ。

もう恨んでないの。悔いもないの。

だけど、ただ記憶だけがあの時の悲しみのまま癒えてくれないの。


人をさ、信じたいんだよ。
私だって、手放しで信じたい。

本当に信じられる子ならさ、
「自分は傷ついてもいいから人を信じる」
なんて言わないんだよ。
傷ついてもいいってもう信じてないんだよ。

でも傷つくって可能性を見てないと、怖くて誰しもの何もかもを信じられなくなりそうなんだよ。それが怖いんだよ。

愛されたい。

その愛を信じられるくらいに愛されたい。
疑う余地もないくらい優しい瞳を向けてほしい。

こんな時に誰も頼れず自分を傷つけることで自我を守ろうとするこの時間に、あとどのくらい耐えるんだろう。あと何度乗り越えればいいんだろう。

早く夜が来てくれ。
早く寝させてくれ。
逃げさせてくれ。

忘れさせてくれ。

ただ笑って生かさせてくれ。

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