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地唄 正月

「正月」と書いて「まさづき」と読みます。
なかなかに風情があるというか、色っぽいというか、上方の華やかさが垣間見られるオシャレな曲です✨


あらすじ

「正月」(まさづき)は言うまでもなくしお正月のことです。新春の廓の行事や上方の独特な風俗や情緒がたくさん織り込まれており、最後は十日戎(えびす)でめでたく結んで舞い納めます。地歌舞ならではのゆったりとした品のよい舞と、今回唯一の地方の生演奏の音色をお楽しみください。



地唄(地歌)とは


地唄とは「江戸時代に上方(京都・大阪)を中心とした三味線音楽」という意味合いがあります。
江戸唄に対して「地の/地方」のという意味合いで関西では古くから親しまれた音楽を指します🪕

その地唄(地歌)に合わせ舞うものを【地唄舞(じうたまい)】といいます。
いわゆる日本舞踊(歌舞伎舞踊)とは違い、優雅でゆったりとした動きを中心に、抑制された非常に細やかな表現で、内面の繊細な心理描写を表します。
日本舞踊とはまた趣向の異なる「舞」をお楽しみください😊



歌詞の紐解き

〽︎軒毎に 色を飾るや三つの朝・・・とその年の朝、月の朝、日の朝と一年のはじめの朝が三つ重なる元旦のめでたさで格調高くはじまり、お正月の行事に絡めながら恋しい男を待つ女ごころが描かれています☺️

〽︎たった一言後にえと 云ふて別るる宵戎 君が約束違へずに参りましたと後ろから 背中叩いて戯れも…

ここでは、宵戎で逢って約束した男が間違いなく来てくれた嬉しさが唄われているのですが、「後ろから背中叩いて」の箇所は【えべっさんは耳が遠いので、願い事を聞いてもらうためには後ろから叩いてお願いする】というものと男女の駆け引きに掛けていて、とっても洒落の効いた歌詞になっているんです✨

上方の暮らしに馴染みが深い描写はさすが地唄👏

このお正月の風情を中居さん(または舞妓)の形をした踊り手が舞で表現する、という趣向です🙇‍♀️



小道具のこと

餅花、十日戎にちなんだ吉兆笹はお扇子に描かれていてとてもおしゃれ✨
餅花を持って舞うというのも、この「地唄 正月」ならではです。



歌詞全文(原文)

〽︎軒毎に 色を飾るや三つの朝 すげなき松も笑顔と見えて 風に袖振る廓言葉(さとことば) 可愛らしさと花の香を 訪(と)ふて見たいは八重霞 思ひを包む曙に 心の謎をかけて見る来ぬ夜は独り思ひ寝の 焦るる胸の福沸かし 神の年越末長かれと 七の社の七草を 囃しそやされ唐鳥の 渡らぬ先に暫しが程も たつた一言後にえと 云経て別るる宵戎 君が約束違へずに 参りましたと後ろから 背なか叩いて戯れも 酒(ささ)の機嫌の千代よろづ 飾りも恋もうち解けて なほ奥深く契りける



地方(じかた)


光原大樹(みつはら ひろき)


立方(たちかた)

藤間市寿美裕(ふじま いちすみひろ)

藤間市寿美裕