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【日アニおしごと図鑑 Vol.2】アニメを作るお仕事について突撃インタビュー!「制作デスク」「制作進行」ってどんなことをしているの?!アニメ「ちびまる子ちゃん」を支える人々

日本アニメーション株式会社は“アニメ制作会社”として、1975年に創立しました。
【日アニおしごと図鑑】の第二回目では、日本アニメーションの本社スタジオで、「ちびまる子ちゃん」の制作に携わっている醍醐知輝さんに話を聞きました。

本社スタジオ 醍醐 知輝さん(2018年10月入社) 



〇どんなお仕事をされているのですか?


メインの仕事は、「ちびまる子ちゃん」という作品の制作デスク(以下、デスク)をしています。
そもそも制作部とは、絵を描いたり、色を塗ったり、撮影したりといったクリエィティブ職ではなく、各クリエイターを繋ぐパイプのような仕事です。制作部の中にはプロデューサーや設定制作という仕事もありますが、制作進行と制作デスクという仕事について説明します。
制作進行の仕事は、作画の打ち合わせから始まり実際の素材回しをカット毎に行ったり、素材の中身をチェックしながら各クリエイターに作業の優先順位をつけたりと、自分の担当話数に対してのスケジュール管理の現場監督のようなものです。
その話数の素材を動かして全工程に携わることができるため出来上がりを目の前で見られるので、面白い仕事だと思います。

それに対して、制作デスクは一話数単位ではなく作品全体のスケジュールや、予算を管理するのが仕事になります。たとえば「ちびまる子ちゃん」では、複数の班をローテーションで制作をしているので、一話の遅れが作品全体のスケジュールの遅れにつながります。そのため各話数の制作進行や絵コンテを描く演出家(コンテマン)とのスケジュール調整をして、話数をまたいだ管理をします。


〇醍醐さんはいつから「ちびまる子ちゃん」のデスクをされているのですか?

今年の3月からです。それまでは別作品やCM案件の制作進行をしており1年くらい前から「ちびまる子ちゃん」の制作進行をしていました。私は今入社して5年目に入ったところです。

1話数を細かく管理している制作進行と違って、制作デスクは各話数全体の状況を俯瞰して見て色々な部署とも調整をかけるパズルみたいなものですね。制作進行は出来上がっていく感があって楽しかったのですが、自分自身が手を動かして作るわけではないのでもどかしい思いをすることがあります。制作進行をしているうちに、自然と全体が見えてきたというのもあり、デスクを希望しました。

〇お聞きしているだけでも、大変なお仕事ですね。デスクとしてやりがいを感じるのはどんな時ですか?逆につらいことがあれば教えてください。

絵が出来上がっていく過程を見られるのが楽しいのと、各スタッフさんの頑張りのお陰で想像以上に良い仕上がりになっていた時にも感動します。予定していたスケジュール内で物事を進められている時にもやりがいを感じます。「ちびまる子ちゃん」では、デスクになって半年ほどですので、やりがいを感じられるように頑張っているところです。
あとは、自分の名前がアニメのクレジットに載るのがやりがいですね。どんな作品でも自分の名前が残ったというのはすごい事だと思うので、最初にクレジットに載った時は非常にうれしかったです。

〇仕事へのこだわりはありますか?

制作進行の時は、なるべくクリエイターとコミュニケーションを取るようにしていました。
例えば演出家とは二人三脚なので、密にコミュニケーションをとることでお互いのことを理解し、信頼して仕事ができるようになります。各スタッフとなるべく情報と状況を共有して一丸となって進めていくことが大事だと思います。

〇お互いの事を理解して信頼感を得ると言う事なんですね

コミュニケーションを取るという意味では前職の経験が役立っている部分もあると思います。
前職はIT企業でシステムエンジニアをしていました。お客様の要件を満たすためにヒアリングやコンサルティングを行い、自分でサーバーを構築して自社製品を導入するといった技術職でした。前職もスケジュールを管理と敷いて、いろんな部署間のパイプ役だったので、いろんな部署の人と会話をするようにしましたね。その時にコミュニケーションを取れているか取れていないかで、やりやすさが変わってきます。

〇前職の経験が今も役立っているんですね、どのくらいIT企業で働いていたんですか?

3年半くらいです。1話数を細かく管理している制作進行と違って、制作デスクは各話数全体の状況を俯瞰して見て色々な部署とも調整をかけるコミュニケーションを取るという意味では前職の経験が役立っている部分もあると思います。
前職はIT企業でシステムエンジニアをしていました。年次が上がるたびに楽しくなっていきましたが、4年目に入ったときに、退職したんです。
一度自由に過ごしてみたかったということもあり退職して少し海外旅行を満喫したのち、子供の頃から憧れていた工事現場の仕事に就いたのですが持病のヘルニアが災いして半年ほどで辞めることになりました。
その後、子供の頃から「ちびまる子ちゃん」と「コジコジ」が大好きだったことと、自分自身が絵を描くのが趣味だったり、クリエィティブな業界に興味を持っていたこともあり日本アニメーションに応募しました。入社前は制作部という仕事をいまいち理解していない部分もありましたが、前職の経験を活かせるのではないかと思い制作部に応募しました。

〇色々な事をされてきたのですね!色々な仕事を経験しての今、と言うのは特殊ですね

アニメが好きで勉強して入る方が多い業界なので、そういう意味ではちょっと特殊かもしれないですね。
漫画も家にあって、家族みんな「ちびまる子ちゃん」好きだったので、自分の中では特別な作品です。
面接でも熱く語ったのですが、日本アニメーションを受けた時期は、さくらももこ先生が亡くなった直後だったので、面接の時に泣いちゃったんですよね。

〇「ちびまる子ちゃん」への愛が伝わってきますね。
見ていたアニメの制作側に入るというのはどんなお気持ちでしたか?

入社当初は、ただ単純に、うれしい、楽しい、という気持ちからスタートしましたが、自分と同じようにたくさんの人が愛している作品なので、作品を守っていく責任を感じます。

〇スタジオの働く環境についてどう感じていますか


若い人が多くて面白いなと感じます。新しい情報をみんな持っていて、コミュニケーションも取りやすいです。中堅クラスの人たちも若々しいと言う印象があります。子供心を忘れずにずっと残っているような人たちが多い気がします。

〇みなさん、アニメやキャラクターがお好きなのでしょうか

アニメだけでなく実写の映画やドラマなど映像作品を好きな人が多いと思います。
みんな、社外作品の話題になっている作品を見ていますが、普通の人は見て楽しむだけなのが、楽しみつつ勉強しています。

〇休日の過ごし方を教えてください


奥さんと出かけていることが多いですね。車でドライブに行ったり。
あと、自分は個人でインタビューサイトを運営していいます。
モノづくりをしている人に子供の頃から興味があるので、モノづくりをするにあたって使っているものとか、影響を受けたものにフォーカスを当てて紹介しています。去年の4月から始めたのですが、インタビューって意外と時間がかかるので、高頻度で更新できていませんが。

〇面白い趣味ですね!インタビューを趣味にしている方へのインタビューとはプレッシャーです(笑)

もともと人と話すのが好きなので、アーティストの人とかにも堂々と話しかけに行けるんですよね。自分の好きなアーティストやミュージシャンに、アポを取ったりするのも面白いです。
コンセプトは、モノづくりに興味を持っていてもなかなか挑戦できない人にモノづくりを初めてもらうきっかけ作りのサイトですね。是非見てもらいたいです。

【醍醐さんの運営されているインタビューサイト】
●Puzzrial(パズリアル)
 https://puzzrial.com/
●PuzzrialのInstagram
 https://www.instagram.com/puzzrial/

〇社内で楽しい事はありますか?

コロナ禍の前は食堂で皆で集まって昼食をするのが好きでした。ここ2年くらいはできていませんが、以前はカレーや豚汁を大量に作ってくれて皆でワイワイしながら食べたりとかもスタジオならではで凄く楽しかったです。
それと雑談ですね。話題の作品がON AIRされた翌日は、盛り上がります。これはアニメ会社ならではじゃないですかね。みんな、放映をリアルタイムで見て、翌日はクレジットの内容などで盛り上がったりします。
あの演出の意図はこうだった、バトルシーンは誰々さんだった、あの会社がやってるんだとか。

〇日常的な会話も楽しそうですね!今後、社内でやってみたい、やっていきたいこと、目標などがあったら教えてください

新しい作風のものにチャレンジしてみたら面白そうだなと思います。
例えばアクションものとかを作りたいと思ってるスタッフもいますので、そこに日アニらしい丁寧な芝居をつけられたらいい作品になるのではないかなと思います。

〇これまでやってきたような日アニの雰囲気を残しつつ、これまでやってきたのとちょっと違うジャンルをと言うことですね、いつか実現したいですね。


〇IT業界からアニメ業界という異色の転職で、前職の経験が役立っていると思うのですが、これからアニメ業界を目指す方々に向けてこれはやっておいた方が良いのではないかということがあったら教えてください

アニメに限らず、社会人になるにあたって、本当にいろいろなことを経験しておくことが良いと思います。それが社会人になってから生きることがいっぱいあって、アニメというモノづくりの中でも活きることがいっぱいあります。

色んな所に行ったり、いろんなものを食べたり、自分がくだらないと思っていることでも、とりあえずなんでもやってみたり、たくさん遊んだりと色々なことに挑戦して欲しいと思います。

〇醍醐さんは、やってみたいと思ったことをやってみるというスタイルですものね

ぼくは学生時代のバイトも結構いろいろやっていたのですが、コンビニだったり居酒屋さんのホールやキッチン、力仕事や配達ドライバーなど…常に2個とか3個とか掛け持ちしていて、おもしろそうだなって思ったら受けてみる。結果的にそれぞれが全部活きていると思います。
学生時代はアルバイトと遊ぶ時間が社会人よりも住み分けしやすいと思うので、学業と並行して色々なことに調整しながら自分の好きなこと・嫌いなこと、得意なこと不得意なことを自分の中で確認する時間に使うと良いと思いますね。

〇他に、これは勉強しておくと良いということがあれば教えてください

制作部は特別な知識や資格がなくても始めやすいのでそこまで敷居が高くないと思うのですが、デジタルツールなどはもっと使えていれば良かったかなと思います。
例えばAdobeのツールなどが使えると制作としてできる仕事の幅が広がるので、重宝されますね。新しい技術などに興味を持って、自分で調べたり使ったりしておけば良いかなと思います。
自分が担当した「ハクション大魔王2020」の15話「アニメから飛び出した!?の話」はアニメを作る話なので、少しだけ参考になるかなと思います、是非見てみてください。

アニメーションが出来るまで

次回の【日アニのおしごと図鑑】もお楽しみに!

聞き手:村岡 佑哉

©NIPPON ANIMATION CO., LTD.


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