中小製造業が老朽化したオンプレミスサーバーからGoogleworkspaceに乗り換えた話①
本稿は、中小製造業に所属する文系営業マンが、老朽化したオンプレミスサーバーをGoogleWorkspaceを用いてサーバーのクラウド化を行った話です。導入過程を共有することで、同じく悩んでいる方々のご参考になれば幸いです。
1.自社の状況
まず、参考となるように当社の状況(2021年1月)について説明致します。当社は創業70年を超えた製造業です。大阪の本社のほかに兵庫県や東京などにも拠点があります。社員数は50名弱で、自分専用のPCがあるのは30名程度となります。
2015年から受発注・在庫を管理する基幹システムを導入、2017年からkintoneを導入し、案件管理や顧客管理などに活用しています。
ISO9001も取得しており、文書はほぼすべて様式・台帳管理がされています。そのため、紙で印刷することを前提としたエクセル、ワードデータが豊富にあります。70年分のデータがあるので、データ量は大量かと思いきや、現状のオンプレミスサーバーの容量としては0.9TBとのこと。(個人PCに入ったままの失われた情報とかもあるのでしょうか‥)
そんな会社が、自社のオンプレミスサーバーが壊れはじめたことから、共有ファイルサーバーの機能をGoogle Workspace(旧Gsuite)に乗り換えた話です。
2.共有ファイルサーバーの老朽化
1.管理者の退職
私が現在所属する中小製造業に入社したのは2017年、その前年に唯一社内でシステムを立ち上げ、管理できる担当者が退職していました。
私は入社後すぐにデータベース(kintone)を導入するなどしていた(その話はこちら)ので、ファイルサーバーの管理権限を渡されていた製造部門の社員から「オンプレミスサーバーが古くなっているのでいずれ更新しないといけない」と相談されたのですが、文系営業マンの自分はなにをどうすればいいかさっぱり分からなかったため、問題を放置していました。
2.バックアップ不可
そこから丸3年の2020年5月、大阪でも新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が出て、弊社でも在宅勤務などを実施している時、社内ファイルサーバーに入るためのVPNが不足していたり、問題は有りながらなんとか乗り切ったと思ったのですが、そんな時に、「サーバーが赤く光っている」という知らせが入ります。
結果として、毎日取っているバックアップが取れない状態となっていました。なんとかすれば直ったのかもしれませんが、自社では直し方がわかる社員がいませんでした。原因は、老朽化(8年使用)と、残容量が少なくなっていることが原因ではないかと想定しました。
結局、毎月1日のバックアップは取れていたので、バックアップ問題は現状維持となりましたが、今後のことを考えサーバーの更新を検討することとしました。
3.代替案の検討
1.現状の課題の整理
①オンプレミスサーバーを管理する人材がいない(育てる気もない)こと
②全容量1.32TBのうち1TB(70%)を使用しており、このままではすぐに容
量が足りなくなること。
③中小企業の常として、固定費は増やしたくないこと。
上記の課題から、オンラインストレージサービスの利用を中心に検討することとしました。
2.サーバーの比較表
サーバーについての基礎知識もありませんので、ネットで集めた情報を元に比較表を作成してみました。
どれをとっても年額で50万円以上かかることとなり、また、その場合でも2TBと現状とそれほど変わらない容量となってしまいます。中小企業にとってはかなり勇気のいる投資となることがわかりました。
※この直前に、私はキントーンで30名分のアカウントを作って50万円ほどの年間費用を発生させているので、二の足を踏みました‥。
結局、この段階(2020年6月)では結論を出せず、結論を先送りにしました。
4.Google Workspaceの導入まで
1.Gsuite essentialsの検討
結論を先送りにしてからはや3ヶ月、2020年9月に参加した社外の経営者の集まり(オンラインですが)で、Gsuite(現在はGoogle Workspaceなので、今後はGoogle Workspaceに統一します)を導入している企業のお話を聞くことが出来ました。
その時、「Microsoft365とGoogle Workspace、どちらが使いやすいか」と質問したら、「Microsoft365の方が今の延長線上で使えるので使いやすいかもしれないが、Google Workspaceのほうが時代を先取りした働き方が出来る(と感じる)」という言葉を聞き、Google Workspaceについて調べることとしました。
2020年9月当時は、Gsuite Essentialsというドキュメント(マイクロソフトオフィスと同じ機能)とドライブを中心としたグレードのものがあり、この導入をしようと思い、無料試用が出来たので試してみたのですが、1ヶ月後の10月1日から有料になります!という通知があった後、なにも情報が更新されず、結局Gsuite Essentialsというグレードはなくなり、またGsuiteもGoogle Workspaceという名称に変わりました(突然‥)
※Microsoft365は、2020年9月時点では、共有ファイルサーバの機能は無いため、今回の検討からは除外しています。
2.営業メールからのWEBセミナー参加
そんな、Googleに対してもやもやしていたところに「GoogleWorkspaceを活用したリモートワーク!」というGoogleの代理店主催のWEBセミナーの営業メールが届きました。いつもは情報はネットで収集するタイプなので普段は読み飛ばしていたのですが、プロからいい情報を教えてもらえたら良いな、と思い参加することとしました。
内容自体は、Google Meetの使い方や、スプレッドシートの同時編集のメリットなど、「知ってるよ!」ということばかりでしたが、最後のアンケートに「導入を検討している」と書いたところ、主催した代理店から連絡があったので、打合せをしてもらいました。
3.代理店との打合せ
代理店との打合せでは、導入するための手順や、代理店経由で導入したほうが安くなる(kintoneはこれをしていなかったので、定価で契約しています‥)というのを聞きましたが、結局、金額の部分でつまづくこととなりました。
「Google Workspaceはいろいろなことが出来るようになりますが、当社にとってはkintoneとかぶる機能であったり、Gmail導入も時間がかかりそうなので難しいです。」
ということを代理店に説明すると、
「Gmail、カレンダーなどを使わないのであれば、1人1アカウントをしない、という手があります。」
これを聞いて、一気に導入の可能性が広がりました。つまり、共有ファイルサーバ、オンラインストレージとしてのみに使用するのであれば、極論を言えば1アカウントだけの契約でも良いということになります。
※当社は1部署1アカウントとしました。
Google Workspaceは、1人1アカウントが基本ですし、情シスの方の発信を見ていると、共同アカウントはダメ!というのが一般的な考え方かと思いますので、これを推奨するわけではありませんが、結果としてこのことが当社がGoogle Workspaceを導入できるきっかけになりましたので、1事例として紹介させて頂きます。また、管理者アカウントは当然1人1アカウントを付与しています。
※Googleにおいても、複数の同時ログインは強制ログアウトとなる可能性があります、と注意書きがあります。弊社は製造業で同時にPCを触る人員が少ないからこそできた運用かもしれません。
この打合せを経て、当社は7アカウントでGoogle Workspaceを契約しました。当初考えていた費用から1/5以下(1,360円×7= 9,520円/月)の費用に抑えられました。
※この時点で、Boxなどとの比較もしましたが、いろいろな機能があり、かつ1アカウント当りの費用も安いGoogleWorkspaceの方が優位性があると判断しました。
また、容量も2TB×7アカウントで、計14TBとなり、既存サーバーの10倍、中小企業にとってはもう無限に近い容量が確保できました。
まとめ
当社はオンプレミスサーバーによる共有ファイル管理を行っていましたが老朽化によりバックアップが取れなくなりました。
そこで、オンラインストレージなどの検討を行いましたが費用が高かったため、検討を中断していましたが、Google Workspaceに出会い、興味を持つようになりました。
代理店との打合せの中で、GoogleWorkspaceのGmail,カレンダーなど、1アカウントずつなければ使えない機能を使わないならば、1人1アカウントではなくとも良いということに気づき、1部署1アカウントで運用をスタートすることとしました。
運用開始後も様々な問題がありましたが、それについては次回で説明したいと思います。
わぁわぁ言うとります、お時間です、さようなら。
大阪市在住の89年生まれ 父親経営の中小メーカーに在職。 グロービス経営大学大学院卒業 事業承継や、組織の変革、文系から見た社内システムの構築について掲載予定 好きなもの:サッカー(ガンバ大阪ファン)、漫画(オールジャンル)