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取材して記事を書くということ

nice things.が復刊してから自分で取材して記事を書けるようになりました。いろんな場所に行って取材することの楽しさを今更ながらに感じています。

取材するということは、文字通り誌面を作る材料を取ってくる、ということです。nice things.の場合は、全ての誌面を作るのに、現地に行って人と会って取材するというスタイルでやっています。写真もその時に撮影したもので誌面を構成していきます。取材するということが誌面を作る全てといえます。

事前に構成を考え、絵コンテを起こし、どんなことを聞くのかを考えて取材に行きます。しかし、事前にできることはあくまで準備であって、その通りに写真を撮ること、事前の質問だけでインタビューをすることは目的ではありません。現地に行って人と会うこと話をすることは、体感するということです。聞きたいことは電話でもメールでも聞けるかもしれませんが、そこに行って何を感じるのかが編集者にとって大事なことだと思っています。

取材の現場で何を感じ、何を掴み取ってくるのかが取材者に問われるのだな、ということを強く思います。自分自身、まだまだ足りないな、とも感じます。

nice things.の取材はほとんどの場合、1日に1件しか入れないようにしています。後のスケジュールを固めてしまうと、時間を気にしたり、取材を切り上げることになる可能性があるからです。なので、必然的に話を聞く時間も長くなります。取材相手とお昼の食事を一緒にする場合もあります。そうした時に、いろんな話も聞けたりもします。

ほとんどは30代、40代の方々の取材で自分よりも若い人たちですが、話を聞いていて楽しく、しかも勉強になることが多いです。取材が長いとテープ起こしに時間がかかるのですが、文字量にして2万語を超えることもよくあります。テープ起こしをしていると、時間の経過もあるのですが、現場で聞いてるのとはまた違う形で頭に入ってきます。現場では会話の流れやニュアンスで感じ取っていたものが、テープを起こす段階で再度、その言葉の意図を改めて考えることも多くあります。

どんなに丁寧な取材であっても、ある瞬間だけの会話で全てを掴めるわけではありません。また、話をする人も全てを語り尽くせるわけではありません。だから、その言葉の意味を、何を言いたかったのかということを、汲み取る必要があるのだと思っています。

テープ起こしでは、なるべく一字一句、発した言葉そのままに書いていきます。会話のリズムやその人の話し方をなるべくそのまま書き記したいのです。

取材前に聞くことを準備する、と前述しました。編集部のみんなにはそのように伝えてますが、そういいながら自分の場合は何を聞くか、ということを事前に整理していくことはありません(編集部の皆さん、ここは真似しないでください)。自分の場合は、インタビューではなく会話をしている意識でいるので、流れで動いていきます。Q&A、一問一答ではなく、自然な会話の中で話を聞いていけることがいいように思ってるからです。

テープ起こし(実際はカセットテープではなくボイスレコーダーですが)から、料理でいえばなるべく素材を生かして、原稿として仕上げていくことになります。原稿として仕上げていくのは、何度も書き出しに戻り読み返し、時間を置いて寝かせて読み返し、書くことに専念するというより、取材したことの奥行きを探索するような作業をしています。探索していって、やがて自分の中で「こういうことなんだ」っていう符合するようなものが見つかるまで考えます。そうしてようやく、気持ちが入ったものになるように思うのです。

nice things.
編集長 谷合 貢

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