思ってたんとちがう
フラワーガール・ボーイ。結婚式のヴァージンロードを可愛く彩る子ども達。柔和な腕に、童話に出てくるようなバスケットをぶら下げ、色とりどりの花びらを降らせる。その姿はそう、まさにエンジェル。
幾度か結婚式に参列したことはあったが、実際に目にする機会はなかった。それが何と、大事な妹の結婚式でわが子達がつとめることになったのである。
シャイな子ども達は最初は難色を示したが、退場の時だけの登場にすることと、終わったらご褒美がもらえるというエサに釣られ引き受けてくれた。
私は数ヶ月も前から役に合う衣装を探し、子ども達のヘアアレンジを不器用ながら練習し、何とか準備万端で当日を迎えた。
時間がなくリハーサルもサクサク進められたが特に問題はなかった。
妹の晴れ姿に目頭が熱くなるのを抑えながら、式はつつがなく進み、最後にいよいよ子ども達の登場である。
司会の方に促され、新郎新婦の前に向かって並び、バスケットを渡される子ども達。
がんばってと心の中で声援を送りつつ、今から繰り広げられるであろう映画のような光景に胸を高鳴らせた次の瞬間………
あかーん!
目を大きく見開いて叫びそうだった。
スタッフの方の合図を受けて歩き出した子ども達は、何これ競歩なの?徒競走だったっけ?とばかりにスッタカターとヴァージンロードを闊歩し、バッサバッサと花びらを投げ落としていったのである。
新郎新婦が一瞬びっくりした様子で目を丸くして顔を見合わせる姿を見て、思わず列から身を乗り出し
「ゆっくり!ゆっくり歩いて!」
と叫んでしまった。
しかしその言葉も虚しく、子ども達はそのまま式場の外に姿を消していった。
式場は温かい拍手と新郎新婦の笑顔と笑い声に包まれていたが、私は1人やっちまったと頭を抱えていた。
披露宴会場へ向かう間、夫は子ども達によくがんばったね〜とニコニコ声をかけつつ、私にはあんなに叫ばなくてもとニヤニヤしていた。
子ども達に話を聞くと
「だって人がいっぱいで恥ずかしかった」
「だってお兄ちゃんが早く歩くから」
「お腹空いた~」
との事だった。
そうか。事前に、リングガールの映像やらを見せて教えておかなかった私のツメが甘かったのだ。
子育ては、こんな思ってたんとちがうの連続かもしれないが、後から思えば笑い話になることばかりなのかもしれない。
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