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スネークオペレーター〜特別諜報捜査官〜最終回

前回までのあらすじ
北朝鮮諜報員の手伝いをしているボルボトレーラーオーナー中井をGPSで追い、川崎の東扇島にある倉庫で発見。上田が殺害され羽田空港岸壁にて溺死体で発見され、アジトが東扇島であることが分かった。ヤスは入院している病院から密かに抜け出し、暴露系ユーチューバーのナンシーに今回の爆撃がネネの仕業と聞く。アルがアジトに侵入、ヤスは矢崎社長の応援でボルボトレーラーで駆けつけ、クルーザーで逃げる北朝鮮諜報員とネネをランチャー砲で撃沈する。命中する前に全員海へ飛び込んだが生死の確認は取れていない。


〈第二十一章〉

ミミの両親に挨拶しに秋田まで行ったし、ミミは全く今のタワーマンションに帰っていないので、二人で暮らす事にして物件を探すことにした。
ミミはセキュリティと仕事の出入りで家バレするのを警戒しているので、地下にパーキングがあるタワーマンションかな?って言って物件のパンフレットをネットの物件からプリントアウトして来て、

「これは?」

って何枚も持って来る。
俺も真剣に考えなければいけないけど、買うのは絶対無理と思った。
これまで家バレして何回引っ越したのか考えれば分かる。
通常は晴海運送でスネークオペレーターをしているので、俺は中央区が良いな?といつも言っている。
矢﨑社長は、晴海のタワーマンションに住んでいるが、迎撃事件以来、マンションの人たちも協力してマスコミとか撃退してくれたり、自治会をやってくれとか、マンションぐるみで何かやるときは必ず声を掛けられるらしい。俺も月島とか勝どきとかいいなと思う。今は結構基地が気に入ってるけど、いつまでもミミは基地にお世話になるのも嫌なのかもしれない。
ミミと一緒にミミが住んでる港区港南のタワマンに行ったセキュリティも駐車場も良いけど、2人だとどうかなぁ〜。
子供を・・・と考えているのなら、もう3LDK以上のタワマンに住んだ方が良いと思う。ミミはもう女優として人気が落ちることは無いと思うし、俺が特別諜報捜査隊で警視をしている間は安定だと思う。
今、勝どきにタワーマンションが新しく建つのを待とうということになった。なので、それまで基地と港南を行ったり来たり。
基地は尾行されても湾岸スタジオの駐車場で車を停めて本人は消えてしまうと尾行車は思うだろうなぁ。

しかし、今はあれから事件が無いのでスネークオペレーター。
ミミがオフの時はミミも運転してコンテナ配達する。
配達先の人たちは最初は事務所に伝票を持って

「お願いします。」

と入ると二度見するそうだ。
スネークオペレーターの時は、事務所の人たちや途中で休憩で停止しているときに写真やサインをねだられても嫌な顔せずやっている。スネークオペレーターって必ずサインして書くのも気に入っているみただ。
あっ、そうそう、ユーチューバーのナンシーだが、なんと解散総選挙に立候補して、比例区無所属で当選。
芸能人の暴露は止めて、政治家の不正とか不倫をSNSで集めて、国会で叩いたりしている様子。自分の足をすくわれなきゃいいがなぁ〜と思っている。

迎撃事件の貢献は国民から相当信用を取り戻したと思う。本当はすごく気の小さい良い男だと思った。


〈エピローグ〉

晴海運送社長である矢﨑勉の愛車、昭和35年初年度登録のISUZUベレット1800GT通称ベレGのエンジンスタートチョークを引く。
夏場以外はエンジンが冷たい状態になるため、キャブレターから少しガソリンが多めにエンジンのシリンダーに吸気するようになる。
メインスイッチでセルモーターを回す。2〜3秒でエンジンはタコメーターを見ると2000回転まで維持しマフラーからも大きなエキゾーストノート(排気音)が響く。
しばらく高回転でエンジンを温めてる間に矢﨑は後部座席に細長いアタッシュケースと旅行で良く使う、ルイヴィトンのバックを積む。
運転席に乗ってチェークを半分づつ下ろして行く。
まず半分でエンジンを空ぶかしする。
ISUZUスポーツオリジナルストレートマフラー(フジツボ製)の低い響きとSOLEXキャブレターの吸気音がエンジンルームから、ハーモニーのごとく響き渡る。
チョークを全部戻して、アイドリングを1500回転まで落とす。
ソレックスの吸気ジェットの調整が街乗り用に設定してるので、あまり点火プラグにガソリンが被らないようにしてある。
アイドリングが安定しているところで空振りをしてみる。
4,000〜5,000回転までは楽に回ってくれるし、返りもアイドリングにすぐ返って来る。
今日はとても調子が良い。天気にもよるけど、雨天の時とか、ジメジメした天候だと、まともに走ってくれないこともある。
このベレットは内藤靖が4〜5年前に長野の後輩が車体にあまりサビがないし、内装がまだ綺麗だしエンジンが掛かると言うので、暇な時に東京に運んできて、少しづつレストアしようと頑張って手入れしたお気に入りの旧車だ。
矢﨑がいない時にはアルフレッドがレストアユーチューブをやりながら、レストアした車で、買ってから完成まで10年近く掛かった歴史がある。
特に塗装などどんな旧車にも負けないくらい手が入っている。
佃大橋を通り、軽やかにアクセルに車がちゃんと着いて来ると言うか、アクセルを踏めば踏むだけ走るんじゃ無いかと思うぐらい、気持ちよく走ってくれる。
富久町を右折し、八丁堀交差点を左折する。

このまま道なりに行くと東京駅八重洲口が見えて来る。
八重洲の交差点の手前の筋を左折する。この辺はコインパーキングが2、3箇所ある。
一発目のコインパーキングが満車なら2箇所まで少し距離があるが何とか一箇所目のコインパーキングに一台空きがあったので、そこへ駐車することにした。
ここなら行くところは真隣のビルだ。
駐車フラップが地面から上がって来るタイプの駐車場は嫌いだが、ここはカメラ式駐車場。日本にしか多分無いでしょう・・と思うような「金払わなきゃナンバーで所有者に請求しますよ。」と言うような赤いランプが点いたりするタイプだ。集金率を知りたいものだ。
車を停め、後部座席からアタッシュケースの長めのヤツとルイヴィトンのボストンバックを抱えて、隣のビルの表に回り入り口から最上階7階へのエレベーターに乗った。
エレベーターは7階まで矢﨑を誘った。エレベーターを出ると左右に伸びる廊下がありワンフロアーに3部屋あることが分かる。
矢﨑はエレベーターが開いた前の部屋の錠穴に錠を差す。扉を開けると、約100平米ぐらいの事務所仕様のスケルトン(カーペットもパーテーションも無いフラットな状態)の物件で、胸あたりから上2mぐらいの全面ガラス窓になっていて、今はうっすらミラーガラス仕様なので、中が外からは全部見えるであろう。
だが、前の道が5車線プラス中央分離帯プラス5車線あるので、窓から見えるのは、遥か向こうのビルの窓から見えることになるが7階なので、見えるところは皆無と言って良い。
八重洲の交差点から2棟目のビルで、この辺は角のビル元就のビルも車を停めた場所方向に再開発の為に取り壊し準備で空ビルになっている。
矢﨑は新屋に入るといちばん左の窓に残しておいた縦刑のブラインドを少し閉め、双眼鏡を取り出し東京駅の八重洲口の一般者寄せを見る。
前回下見に来た通り、ビルの左端から一直線で約200mぐらいあるか。左端は200mの間にビルや車線上の車、右端は向かい側の八重洲交差点角のビルが障害物になるが。車寄せは全て見渡せる。
下見の時に車寄せから、この地点を見たが、ビルがありすぎて分からない場所だ。
矢﨑はアタッシュケースを開け、スナイパーライフル銃でもおなじみのレミントンM40A3を出す。特別に入手したものだ。
これまではレミントンといえばM24であったが、M40A3が出てから入手して散々調整した。しかもNATO(北大西洋条約機構)仕様らしい。
手慣れた手順で組み立て、椅子を使ったりウレタンゴムを使ったりして、手元が1mmもずれないようにセットして行く。
弾玉は5発装填できる。弾玉の先がめちゃくちゃ尖っている。全体の大きさは10cm以上あるのではないかと思う。
だいたいのセッティングはできた。あとは、お客さんを待つのみだ。
本日は、極桜会の若頭小峠武が関東の組織に義理掛けにいらっしゃるそうだ。
最近では特定抗争指定も8年も長い抗争も終結したため解除になり、日本全国に抗争終結のお詫び行脚に回ったりと大忙しらしい。
8年目に突入したときは、それこそ木下雅也に見せびらかすように他団体と友好である旨を実話系の雑誌に掲載して苦しめたもんだ。
あの小峠が急に極桜会二次団体の桜生会組長から極桜会若頭になり、改革を起こし組が割れておかしくなった。
木下の兄弟は、最後の最後まで意地を通した。兄弟本当にすまん!あいつのために悔しながらも脱退せずる者、死んだ者、たくさん居た!時代遅れの老害ヤクザは排除しなくてはならん。またそれを引き継ぐ者も許せん。

「俺は雑貨屋のおやじじゃねぇ!」

その言葉をいつも現役ん時は言ってたな兄弟。
ヤスに聞くと、もう誰が来てもおかしくない。覚悟してたらしいじゃないか?水臭いぞ兄弟。ちゃんとちゃんと敵(かたき)は取るからな。遅くなってすまない!と矢﨑は頭の中で木下に言いながら時計を見る。

名古屋を出発する時にスパイから報告で、本日はおめでたいことに桜生会の会長大内大斗(ひろと)も付き添いで来るらしい。次期2代目極桜組の組長になると噂の人間だ。
あのもうろく若頭と若頭補佐の桜生会会長も一緒に射殺できるよう、スパイには若頭が倒れたら、すぐ車に載せようとするから、その地点まで打ち合わせた。
そろそろ時間だ。新幹線は、ホームに入り護衛と共に八重洲口に向かって御一行様が来る頃だ。
見えたらすぐ頭を狙う。このレミントンなら首ごと吹っ飛ぶだろう。
護衛が出て来た。黒い高級ミニバンが3台並んで待っている。
わざと間を空けて停めるのはすぐ逃げられるようにだ。
2番目のミニバンに案内するだろう。よし、出て来た。早めに撃とう。

パーンッ!

スライドを引いて、空薬莢を出す。すぐさまスライドを引く。
若頭小峠の頭が吹き飛び脳しょうが飛び散り、回りの人間がパニックだ。
そして、桜生会会長大内が慌てて首を低くして三台目のミニバンに走る。狙いを定めた場所まで来た。今だ。

パーンッ!

大内も同じく頭が一瞬で無くなった。その辺血まみれだ。
通行人も護衛の人間までもが建物の中に逃げ込む。
パトカーのサイレンが鳴り響く。救急車もすぐ来たが、銀のシートを死体に掛けられている。
この位置を誰一人と見ているやつもいないし、どこから撃ったのか警察もキョロキョロしている。こんな遠くからとは思っていないだろう。
パトカーが次から次へと来る。矢﨑は持って来た缶コーヒーを飲みがなら双眼鏡で眺めていた。片付けも終了した。
コインパーキングに600円払って帰路に着いた。
ベレットは今は実に調子良い。八丁堀を過ぎたあたりで電話が鳴った。ベレットに装着してあるアルパインのコンポネントステレオにブルートゥースで繋がっていて、曲が止まって着信音が鳴ったのだ。
元灰皿だったところにアルフレッドが綺麗に装着してくれたのだ。そのアルパインから着信者ヤスと書いてある。

「はい、もしもし!」

と矢﨑は普段と変わりなく出る。

「あっ、社長!今、もしかして東京駅近くにいます?」

とヤスが聞くので

「いや〜、今は富久町だから銀座だね。ベレット今日調子良くて、ちとこの辺ドライブだよ。」

「へ〜っ、珍しいですね。ドライブとは・・ってか、社長ずるいです。」

とヤスが寂しそうに言う。

「えっ、どうしたヤス?」

と矢﨑。

「俺がやりたかったっす。」

とヤス。

「ちゃんとお前の敵(かたき)は取ってやったんじゃねーか?もしかするとヤクザ勢力が変わって今よりも狙いがいがあるかも知れんぞ。」

と矢﨑がヤスに言うと

「それより社長!ミミがオフの日にいつもボルボ乗せろってうるさいんですけど・・。あいつ芸能人辞めてスネークオペレーターなってもいいって言い出してますよ。どうにかしてください。」

とヤスが矢﨑に言うと矢﨑は

「ミミちゃんの好きにさせとけ。良い客引きにもなる。」

と矢﨑が笑った。                               

(完)

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