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ザ・ドキュメント・オブ・共テ国語2024 第7回(古文1)~大学受験生応援コラム1月

大問3、古文の設問を眺める


’** 0 はじめに ***

当コラムに目を留めていただき、ありがとうございます。大学受験国語の勉強に資する内容提供を目的として書いています。

ドキュメント風に、試験の現場では講師はこんなことをやっているというのを追体験してもらおうという意図で書いているこの記事、今回で第7回目を数えます。いよいよ試験も後半戦、古文に入ります。

今回は、本文を読む前の作業を文章化します。

’** 1 本文を読む前に ***

さて、今日から古文を解いていこう。

前書きから見る。「主人公が従者とともに桂にある別邸に向かう場面から始まる」とある。(本文では4行目の冒頭で桂に向けて出発することになる)。

本文には行番号がふってある。設問を見ると分かるが、これは問4で必要になる。その問4は「桂」という語に注目して本文を解説している文章をもとにして出題されている。これは、本文と並行して読み進めた方がいいかもしれないな。

本文に戻ると、目を引くのは牛車の図が付されていること。随分親切ではないか。古典常識はある程度頭に入れる必要はあるものの、やはりこういう図があると理解の助けになる(実際に役に立つのは13行目以降)。

さて設問はというと・・・。問1はおなじみの語句問題。問2は文法問題だが、本文の内容理解とからめている。問3が文中の和歌の問題。選択肢①②がXの和歌、③④がYの和歌の説明というふうに分けられている。よく見られるような、選択肢前半がX、後半がYというスタイルではない。まあ、とはいえ、やることがそんなに変わるわけでもないのだが。

あれ? 内容理解の問題がないな。「内容と照らして正しいものを選べ」のようなもの。もしかして問4がそれか?

まあ、眺めるのはこれくらいにしておこう。

’** 2 問1を終わらせます ***

まずは本文を読む前に、問1と問2の文法説明を見ましょうか。どのくらい未読で処理できるだろうか。

問1。未読でやっても正解できる。もちろん、答えが正しいかを本文に戻して検討した方がいいけれど、時間がなければ未読で処理することは可能。

ア、「あからさま」はちょっとの時間であることを表す語。これで③に確定。主人公はせっかく桂に別邸を作ったのに、今までほんのわずかな時間も立ち寄ることはなかったという文意。じゃあなんで作ったのさ?

イ、「とみ」は別に古文単語ではない。「とみに」という形で「急に」という意味を表す和語である。これで②に確定。小説編でも書いたが、ここも和語を攻めてきましたか。いつもなら源少将なんかを引き連れて外出するのだが、今回は急に思い立った外出なので、自分の身近にいる従者だけを連れていこう、という文意(でも後で源さんが…)。

ウ、文章自体が平安時代風であるし(実際は江戸時代に書かれているらしいのだが)、変なひねりがないとすれば、「かたち」は容貌・かおかたち。これに近いのは⑤の「見た目」か①の「格好」。「をかし」の訳に合いそうなのは②③⑤だから、先の検討と合わせて答えは⑤でいいだろう。

ただし、「をかしげなる」という連体形がどの語を修飾しているか、本文を見た方が無難。今回は「童」を修飾している。具体的な人を「をかし」というなら、平安古文では「美しい」とか「かわいい」とか、それくらいの訳が普通。先の「かたち」の検討と合わせて答えはやはり⑤「見た目が好ましい」となる。

’** 3 問2を少し検討します ***

問2。前半の文法説明だけ検討します。

①、「興じたりし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形。強意の副助詞ではない。✖
②、「引き返さむも」の「む」は、有名な推量の助動詞「む」の連体形。「む+助詞」の形は仮定・婉曲の意味であるというのは多分有名な話だろう。〇。ちなみに、この形のときは、婉曲ではなく仮定で訳した方がいい。「引き返すとしたら、それも」という感じ。
③、「面変はりせり」の「り」。「せ」は「名詞+せ」の形でサ変動詞未然形。よって「り」は完了存続の助動詞というのは〇。「変化する」という動作性・瞬間性の強い語句を用いているから完了の意味ということでいいだろう。どうせ後半の内容検討が必要になるし、完了か存続か、どちらの意味なのかは読んだ上で決めればいい。
④、「させ給ふ」の「させ」は尊敬も使役もありうるから、未読でどちらかは決められない。これも読んでから検討。
⑤、「見給ふ」の「給ふ」は動詞の連用形+「給ふ」の形で尊敬の補助動詞、〇。

…なんだ、①しか消せなかったな。まあいい。どうせ必要になる作業だ。今やるか後でやるかだけの話。

次回から、ちゃんと読んでいきます。



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