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じっくり解説! 令和6年度共通テスト小説問7(再び、教師と生徒の対話)~大学受験生応援コラム3月

教師と生徒との対話形式、再び


’** 0 はじめに ***

当コラムに目を留めていただき、ありがとうございます。大学受験国語の勉強に資する内容提供を目的に書いています。

今回取り上げる設問は、過日行われた共通テスト小説の問題です。教室での対話形式、なぜか平均点の下がる出題形式です。

しかし今回については、それほど低い得点率にはならなかったのではないかと推測します。今回の試験は全体的に難易度もそれほど高くなく、時間制限の厳しさへの配慮がある程度見られます。ですので、例年よりは落ち着いて本設問にも取り組めたのではないか。落ち着いてやりさえすれば、要はただの空欄補充問題なのです。対話の中に空欄のヒントがふんだんに散りばめられており、極論を言えば本文を見なくても必ず正解できるようになっていました。では、始めます。

*今回拝借した画像は、いわゆるアクティブラーニング形式の読書界の会場の様子だそうです。学校でもアクティブラーニングを取り入れようとするところがちょこちょこありますよね。

’** 1 資料の確認 ***

本文の最後の方で、主人公・イチナは居候をするおばを非難するようなことを言います。それに対しておばは、定住地を持たない理由を、肉体が私の家だから、それ以上に家は必要ないと答えます。この発言が設問で問われています。

【資料】
は短い文章で、人間は自分を枠づけたい=何者かになりたい存在であると述べています。最終段の演技の話も、主張の裏付けとなる具体例にすぎません。

ただ、その後に続く会話の冒頭で、教師がその内容を的確に要約してくれていますので、結果的には【資料】を読まなくても内容が分かるようになっています。これは制限時間が短いことへの配慮なのかどうなのか、分かりませんが、試験戦術としては読まなくて済むならその方が助かります。

’** 2 会話の確認、そして問7を解く ***

会話文の中には3つの空欄が設けられています。ここでは定石に倣い、空欄に入る語句のヒントを会話文、前後の文脈から得ることにしましょう。どの科目でも、空欄補充問題では必ず行われるプロセスです。それを普段通り行うだけで、今回の設問はクリアできます。

XとY:おばにはYしようという様子が見られない→(だから)→イチナにはおばがX=「枠」がないように見える←(一方で)→友人にはおばが「ぼろ出さない」=意図的に枠を見せないように見える(この言い方は「枠がある」ことが前提…筆者注)

★ 生徒Mは「イチナはおばのことをXと思っていました」と発言しています。この言い換えが生徒Nの「枠がないようにイチナには見えるおばのありかた」だと考えられます。これでXの内容が確定し、(ⅰ)の解答が⓸に決まります(これをもってYも確定する)。

Z:Z=様々な役になりきることで自分であることから離れている←(対、隔たり)→なに者かになりたい

★ 生徒Nは、イチナは日常生活でのおばをZと考えていると述べています。そして、Zと「自分でないなに者かになりたい」という考えは隔たっていると教師は述べています。「隔たりがある」とは国語的には対関係にあると考えるのが定石です。おばは、確定的な何者かであることを望んでいないということです。

さらに、生徒NはZの発言の直後で、「役者としてもおばは…自分であることから離れている」と発言します。「も」と言っている以上、他の状況でも同様であるわけです。今回の場合は、「役者としても、そして日常でも自分であることから離れる」ということになります。これでZの内容が確定しますよね。(ⅱ)の答えは③です。

’** 3 今回のポイント ***

①資料の後に続く会話の中で、資料が的確に要約されている場合がある。その場での臨機応変な判断が求められるが、今回のような出題形式の場合、会話文から読み始めるのも一手である。

②空欄補充問題では、前後の語句や文脈から様々なヒントが得られる。これを基にして、自分で補充語句を推測する。

③ ひらがな一文字だが「も」という添加の副助詞は重要。今回の場合は「役者としても」という形で登場しました。「役者としても、そしてほかの状況でも」という含意を持ちます。

また次回です。

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