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アフリカの再生可能エネルギー

さて、最近のニュースでは気候変動対策や再生可能エネルギーについての記事が毎日のように目に入りますよね。日本に関しては、国際会議の場で石炭火力への依存が頻繁に指摘され、再生可能エネルギーの普及が遅れている国として認識されています。確かに、多くの欧米諸国は日本よりも再生可能エネルギーへの転換が進んでいます(以下の表をご覧ください)。日本では地政学的な背景や原発に対する反対の声などがあり、石炭に依存せざるを得ない状況ですが、ではアフリカはどのような状況なのでしょうか?少し見ていきたいと思います。7.再エネ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

日本と他国の再生可能エネルギー比較

再生エネルギーの市場に向けた国際潮流

まず、世界中で再生可能エネルギーの需要が増えている背景には、2015年のパリ協定があります。この協定に基づき、各国は国際気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)に約束草案を提出しています。これは先進国だけでなく、多くの途上国も温室効果ガスの排出を減らすために再生可能エネルギーの利用を増やすことを誓っています。

OECD諸国の再生可能エネルギーの普及

その背景には、各国政府の支援(例えばバイデン政権による巨額の投資や、国際的な炭素税や排出権取引の導入)があり、技術革新も大きな役割を果たしています。特に太陽光発電のコストは指数関数的に低下しており、化石燃料からの転換が進んでいるのが分かります。

太陽光エネルギーのMwh当たりの金額動向

アフリカでの再生エネルギーの転換

日本や欧米諸国の動向はニュースで頻繁に取り上げられますが、一方でアフリカではどうでしょうか。以下はアフリカの再生可能エネルギーの電源別発電量の推移を示していますが、絶対量はOECD諸国に比べて非常に少ないです。


アフリカの再生可能エネルギーの普及


実際に、アフリカの一部の国では再生可能エネルギーによる発電はごくわずかであり、新設される発電所もほとんどが従来型の化石燃料を使用しています。例えば、ガーナでは2022年の水力発電を除いた再生可能エネルギーの発電量は全体の1%にも満たず、2015年以降に新設された発電所の9割以上がガス焚きの発電所です。

アフリカの再生エネルギーのポテンシャル

実は、アフリカは世界で最も再生可能エネルギー(特に太陽光)のポテンシャルがある地域なんです。アフリカ開発銀行によると、アフリカの発電ポテンシャルは以下の通りです:
- 太陽光:11,000 GW(実際の発電量は10 GW)
- 水力:350 GW(実際の発電量は18 GW)
- 風力:110 GW(実際の発電量は9 GW)
これを見ると、ポテンシャルに対する実際の発電量はわずか0.3%ほどで、資源が限られている日本からするととても羨ましい状況です。Africa must optimise all it has to achieve universal energy access, says African Development Bank head | African Development Bank Group (afdb.org)

アフリカで再生エネルギーが進まない原因
それでは、なぜこれだけのポテンシャルを持ちながら、再生可能エネルギーの普及が進まないのでしょうか?ここでは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の観点から見ていきたいと思います。

「ヒト」の観点
アフリカでは、再生可能エネルギーの技術に詳しい専門家や技術者が不足しており、プロジェクトの進行を遅らせる要因となっています。また、技術者以外でも日本でいう事務系総合職が不足しており、プロジェクトの立ち上げや進行に必要な公的な手続きが遅れることが常です。

「モノ」の観点
インフラの整備が遅れていることも大きな問題です。再生可能エネルギーを効果的に活用するためには、送電網や貯蔵施設の整備が必要ですが、これらのインフラが整っていない地域が多いです。

「カネ」の観点
再生可能エネルギーの導入には多額の初期投資が必要ですが、アフリカの多くの国々は経済的に厳しい状況にあります。また、金融機関からの融資が不足しており、金融支援が十分に行き渡っていません。

「情報」の観点
再生可能エネルギーのプロジェクトには、日照時間や風速などの具体的な情報が必要ですが、多くのアフリカ諸国ではこれらの情報が十分に行き渡っていません。

まとめ

アフリカで再生可能エネルギーが普及することは、地球全体の環境問題解決にとって非常に重要です。また、アフリカでの再生可能エネルギーの展開は、日本にとっても多くのメリットがあります。例えば、太陽光発電のコストが下がり続ける欧米や中東では、企業の利益が見込めなくなってきていますが、アフリカでは多くのリスクがある一方で、競争相手が少なく、企業にとっての利益の余地が大きいです。こうした企業の進出を促進するためには、公的機関や国際機関が現地での実現可能性調査や現地の人々への教育への投資を行い、民間企業が進出しやすい環境を整えることが重要です。

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