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「間奏曲」(弦楽オケ)の作曲②

 前回のフレーズはVの和音に帰結したところでした。このようにVの和音に終止することを半終止といいます。終わらない感じがしますね。あまりにも終わった感じがすると、皆さんこのノート、見てくれなくなるのでは?(笑)
 今回はその続きです。そのままVの和音の調、すなわちEs-dur、変ホ長調に進みます。

今回進んだ部分

T. Hirata / INTERMZZO 8小節目から16小節まで
音源は冒頭から(全休符がずれてる…後で直します。)

 このフレーズはナポリのIIという和音から始まります。海外ではナポリタン・シックスと呼びIVの和音の変化形とされています。
 上記の楽譜の2小節目(冒頭から数えて9小節目)にVの13thという強烈に説明が大変な和音を迎え、3小節目に I の和音を迎えEs-dur(変ホ長調)に完全終止したと思わせ、さらにすぐ、一瞬As-durのVを迎え、VIの和音に偽終止のあと、f-moll(ヘ短調)に進みます。 
 ここはダイナミックなところですが、言葉にするのは難しいものですね。

 その後、各楽器が代わるがわる登場します。2ndヴァイオリン→チェロ→と進み、その裏でヴィオラが順次進行で舞台を支えます。6小節目で1stヴァイオリンが受け継いだところで一瞬c-moll(ハ短調)を経て、f-moll(ヘ短調)の長いVの和音に続きます。Finale音源ではうまく表現できていないのですが、ヴィオラだけの物悲しい部分です。

 そして、次回予告。
 f-moll(ヘ短調)の I の和音(主和音)からAs-dur(変イ長調。この曲の主調、メインキーといったほうがいいのかな…)に戻り、おおいに盛り上がりを見せ、第一主題の幕を閉じます。

記号の説明

As (As-dur)  変イ長調 ラ♭が主音の長調。この曲の主調。
Es (Es-dur)   変ホ長調 ミ♭が主音の長調。変イ長調の属調。
f (f-moll)         ヘ短調  ファが主音の短調。変イ長調の並行調。
c (c-moll)        ハ短調  ドが主音の短調。 並行調(ヘ短調)の属調。主調(変イ長調)から見るとⅢ度調または属調並行調。

 ドイツ音階での調性は、大文字小文字で長調か短調かがわかるので便利です。
 これ以外のAs-dur、すなわち変イ長調の近親調(近い調)は、Des-dur 変ニ長調(下属調)とb-moll 変ロ短調(下属並行調)辺りでしょうか。しかし、ロマン派以降はもっと遠い調(遠隔調)への自由な進行が見られます。

音源(冒頭から16小節まで)

調には性格がある

 それぞれの調性には性格のようなものがあります。不思議なものですが、いろいろな人が公表している調の雰囲気というのは、意外にも共通しています。(Wikipediaはどうかな…いや、確かにという感じ)これは面白いことです。
 交響曲や協奏曲の題名に〇〇調と付されているのはそれが参考になるからです。ベートーヴェンの交響曲5番やピアノ・ソナタ「悲愴」のあの重い深刻な感じはハ短調ならではの響きですね。

 これに関しては、さくら舞 I ピアノ講師さんがわかりやすく書かれています。是非参考にご覧ください。

調の性格を非常に良く説明してるページ

Wikipediaによるちょっぴり悲しい説明

 私が今のところこの曲に使っている調性の性格を挙げてみます。いや、それ以前にこの曲は♭が4つもあるので弦楽器が弾きにくいだろうなと、びくびくしています(笑)
 Wikipediaでは…
 いやー…ネガティブ(笑) 文献が古く、当時の楽器の特性も考慮に入れて見なければいけませんね。しかし、確かにそういう肌触りも感じます。ロマン派以降はこれら♭系の調性に随分と肯定的になります。宗教色よりも人間性、退廃的なものへの潜在的な和解、死の価値観、いろいろな事情があるのかもしれません。 

変イ長調
 ヴァイオリンでは音階に開放弦が一つしか含まれないため主要三和音副三和音ともに倍音の響きに乏しく管弦楽や弦楽を伴う室内楽には適さないとされた。クリスティアン・フリードリヒ・ダニエル・シューバルトは「墓の調性であり、死、墓、朽ち果てること、審判、永遠がその範疇にある」と述べている。

変ホ長調
 調号が3箇所 (♭=B, E, A) であることから、古くから三位一体につながるとされた。チェロヴィオラでは調弦的に明るく響く調である。シャルパンティエは「残酷さや厳しさを表す」と述べ、マッテゾンは「非常に悲愴な感じを具えている。真面目で、しかも訴えかけるような性質を持つ」と述べている。
 (←これは確かにオーケストレーション的に示唆に富むので、今回の楽譜の二小節間はヴィオラに置き換えてみるのも面白いと思っています。)

ヘ短調
 マルカントワーヌ・シャルパンティエは「陰鬱さや哀れさを表す」、マッテゾンは「温和で落ち着いていると同時に、深く重苦しく、何かしら絶望と関係があるような死ぬほどの心の不安を表す」とそれぞれ述べている。
 (←私もそう思います。しみじみ思います。)

ハ短調
 短調の作品が極端に少なかった古典派時代において管のトランペットが使える調であることから短調の中でもこの調はニ短調に次いで多く書かれた。交響曲協奏曲のジャンルではトランペットティンパニを加えた葬送的な作品が多い。シャルパンティエはこの調について「陰鬱さとわびしさを表す」と述べている。マッテゾンは「並はずれて愛らしく、同時にまた、悲しい調」と述べている。

変ニ長調
 ロマン派のピアノ曲に多く見られる。ピアノでは黒鍵の利用が多いため、(てこの原理などにより)柔らかい音が得られるとされている。

変ロ短調
 ヴァイオリンでは音階開放弦の音が極端に少ないため、響きが暗く曇りがちであり、極めて弾きにくい。シャルパンティエはこの調を「陰鬱で恐ろしい」と述べている。そのため響きの悪い調であり、18世紀まではこの調で書かれた作品は大変少ない。しかし19世紀以降、ピアノでは運指が比較的容易であるため、曲の主調として多く作曲された。このため、ロマン派的な調の一つである。とは言えども調子記号の使用箇所が多いため、読譜は極めて困難な調のひとつでもある。
 (←かなり退廃的な雰囲気と運命的な残酷さを表現できる調だと思います。)

あとがき

 いかがでしょうか。
 今回は転調を含む場所であるため、調性のお話が多くなりました。お好きな曲の調性を意識してみると、何か共通点やその時の気分のようなものがあるかも知れません。
 女優の檀ふみさんは、クラシック音楽への造詣が深く、ラジオ番組で「私は変〇〇調の女ですから」とおっしゃっていました。何調だったかな…、残念ながら失念しました。そういうのも楽しくていいですね。

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