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【書評】ピーターリンチの株で勝つ


書籍情報

書名:ピーターリンチの株で勝つ
著者:ピーターリンチ/ジョン・ロスチャイルド
訳者:三原淳雄/土屋安衛
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2001年

概要

著名なファンドマネジャーピーターリンチ氏の著作。
アマチュア投資家にはアマチュアなりの強みがあり十分に株式投資で利益を上げることができるとし、具体的に方法が提示されている。
一言で言うと「理解している物にだけ投資せよ。」を詳しく解説した本と言えると思う。

私の理解では、本書の中心的課題は以下3つ条件がマッチたうえで、個別銘柄の選定の話題に入るべきで、前提条件がそろっていなければ銘柄選定はままならないということだと思う。
1.       株式投資の性質:株式市場の性質、投資家の行動など
2.       自分の特性:自分が株式投資に適した状態にあるか判断する
3.       投資手法:自分がやろうとしている投資は何がリターンの源泉になる方法なのか

上記3条件については主に本書の第1部で詳しく述べられている。
この条件がマッチしていることを前提とすると、本書で提案されている個別銘柄の発掘法は突飛なものではなく、自然なものの様に思う。

詳細

1.株式投資の性質:株式市場の特性、投資家の行動など

一言でいえばどこまで行っても不確実な部分があり、情報にも偏りが含まれているということ。
例えば、
・株価は平均的には長期に成長すると言っても、毎年一定の率で上昇するというようなものではない。
・プロのファンドマネジャーは投資条件に制約があり、注目の産業・注目の企業は必ずしも実態にあったものではない。
といったことが説明されている。

2.自分の特性:自分が株式投資に適した状態にあるか判断する

株式投資は上記のような性質を持っているので、子供の学費の様に数年のうちに確実に必要な資金を使って投資をする。話題のテーマに振り回される。自分で調べることが好きではない。といった特性は株式投資の性質と相性が悪い。
反対に余裕資金がある。自分の分かる会社にだけ投資をしたい。調べることは苦ではない。といった特性は相性が良い。

3.投資手法:自分がやろうとしている投資は何を買い何がリターンの源泉になる方法なのか

本書が前提とする投資手法は、株式投資は会社の部分所有であり、十分長期に見れば事業の本質的価値によって株価は決まるという考えの上に成り立っている。
その上で、投資手法を①低成長株、②優良株、③急成長株、④市況関連株、⑤業績回復株、⑥資産株の6分類しており、それぞれの分類に応じて、どのような部分に注目して投資するのかが決まる。

この3つの条件を満たしているということは
短期的には誤った情報・誤った評価がありふれた株式市場で、良く知った企業に投資する理由が簡潔に説明できるときにだけ投資を行うということ。
そう考えると著者のいう銘柄選定法は、過大な評価をされている可能性の高い企業を避けるためのものという点で一貫していると思う。

総評

思い切って言えば、概念や方法として難しいことは何も書いていない。
しかし、実践が簡単かというとそうではない。

最近の例でいえば、目の前で半導体関連銘柄が何倍にも値上がりし、インドには可能性があり、日経平均は1年で30%以上、S&P500も5年で80%以上上昇している。
買いたくならないだろうか?

私は、内心気になってしょうがない。しかし、これらについて私はちゃんと知っているとはとても言えないのだ。
分からないものに賭けるのはギャンブルでしかない。
少なくとも、自分が理解したと言えなければ自分が買うタイミングではないということ。
ただ利益が出たらよいというのでは損をする理由もわからなくなってしまう。
時々は立ち止まって、本書で提示された内容を振り返り自分が何をやっているのか見直しをした方が良いと思う。

また、解説記事も数多く目にする本で部分的には聞いたことのある内容かもしれないが本書の「ミレニアム版への序章」に良くある誤解について言及があるので、未読の方はそこだけでも読む価値は十分あるように思う。

併せて読むと面白い本

本書同様投資とはどういうものなのかという点で示唆に富む本。

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