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一見すると支離滅裂な岸田政権の経済政策の本当の意味

岸田首相が通常国会の終わるタイミングで、電気代などへの補助金の期限付きの復活を表明した。
元々の電気代などへの補助金は、6月分で終了する予定だが、8月分から三カ月に限って補助を復活させるらしい。
また秋以降には、年金生活者や低所得者への給付金も行う予定らしい。
この岸田政権の場当たり的な政策を見て、呆れている人も多いだろう。
しかしお金の流れを考えてみると、この岸田政権の経済政策は意外にも合理的だ。今回は、岸田政権の一見すると支離滅裂だが、よく考えると合理的な経済政策について考察してみた。

インフレ税

まず今の経済状況を一言で表すと円安とインフレだ。
そして、その最大の結果は「インフレ税」だ。2022年以降続いたインフレで、富裕な人が持っている円預金が実質的に目減りしている。
一方で、このインフレによる預金の目減りと対応するように、政府の税収が増加している。また、わかり難いかもしれないが、一千兆円を超える政府の借金も減少している。消費者物価指数ベースでも8%以上のインフレが進んでおり、実質的に100兆円近い国の借金が、文字通り”消滅”している。
これはある種の「ステルス財産税」だ。
共産党や、れいわ新選組がよく唱えている”富裕層への課税””低所得者層へのバラマキ”を実は岸田政権が実施しているのだ。
いつも消費税の引き上げに発狂している国民が、この少なく見積もっても数百兆円にも及ぶ「ステルス増税」に文句を言わないのが不思議なところだ。

富裕層から貧困層へ

今回の補助金は、お金の流れを見ればわかるが、富裕層から徴収した「インフレ税」「ステルス財産税」を物価上昇に喘ぐ高齢者や低所得層に分配していることになる。
インフレによる果実を再分配し痛みを和らげる経済政策としては、結果的にかなりマトモな政策になっている。
インフレと円安の状況では、メリットとデメリットが国民の間にアンバランスに発生する。円安でトヨタなどの輸出産業やインバウンド産業が恩恵を受ける一方で、収入の増えない年金生活者やインバウンド以外のサービス産業従事者である医療や介護業界などで働く人々の生活は厳しくなる。
今回の補助金の期限付き復活は、財源をにらみながら、国内での富の再分配を行うもので、極めて妥当な政策だ。

次々に難題に取組む岸田首相

政治の難しいところは、正しい政策を実行しても必ずしも評価されるとは限らないところだ。
これまで岸田政権が取り組んできた数々の政策も、大きな流れで見るとかなり正しいことをやっている。

防衛費の増額

例えば防衛費の倍増だ。財源の問題はあるにせよ、中国の軍備増強が続いている限り、抑止力を維持するために自衛隊の増強は不可欠だ。そして驚くべきことに、防衛費の大幅増額は、強大な支持率を誇った安倍政権でさえ実行できなかったことだ。

異次元の少子化対策

また効果には疑問が残るが、3兆円を超える規模の少子化対策に関しても、今までにない規模感だ。この異次元の少子化対策には、実は隠れた目的があることが見え隠れしている。いくら子育て支援を強化しても、出生率にはほとんど影響がないことが、多くの識者から指摘されている。にも拘わらず、これだけの大規模な少子化対策を行う本当の目的は、”女性の労働力の活用”だというのだ。
今後20年間で日本では、1500万人の労働力が不足する。一部は外国人労働者で賄るとしても、その数には限界がある。そうなると残っているのは、高齢者と”女性”になる。扶養控除や社会保障費の負担の関係で”時短”で働いている女性労働力、特に子育て中の女性を労働市場に動員する手段と考えると、この異次元の少子化対策も意味を持ってくる。

岸田政権は、普通なら解散総選挙や政権交代をも招きかねない以上のような超難題を意外にも”スルッと”実現してしまった。

派閥の解消

中途半端と批判が殺到している政治資金規正法の改革に関しても、結果として自民党内の派閥を解消させた。そして派閥が解散したことで、総裁を筆頭とする党の幹部に人事権などが集中することとなり、長年の懸念だった自民党の近代的な政党への脱皮が実現するかもしれない。

社会保障改革

そして、最後に控えているのは、社会保障改革、特に医療費の改革だろう。特に今年2024年は、5年に一度の財政再計算が行われる。既に昨年暮れから、この財政再計算をにらんで、”年金保険料の65歳までの納付”や”専業主婦の第3号被保険者制度の見直し”などの観測気球が打ち上げられている。この年金改革も、インフレを利用して「ステルス改革」を実施するかもしれない。いま何かと話題の”マイナンバー”と健康保険証の統合も、この社会保障改革を目的としたものだろう。また最後の聖域、政治のタブーの一つである専業主婦の”第3号被保険者”にも手を付けるかもしれない。ここまで出来たら、”令和の偉大な宰相”だ。

頑張れ岸田政権

当面の天王山は、9月の自民党総裁選だ。ここで再選されれば、岸田首相は、来年の任期に向けて社会保障改革に着手するだろう。
逆にもし岸田首相が落選するようなことがあれば、日本の政治は元の何でも先送りコースに逆戻りして、本当に”日本破滅”路線に乗ってしまうかもしれない。そういう意味では、今の日本は、まさに「最後のチャンス」だと言えなくもない。
「頑張れ岸田首相」。


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