歯医者🦷

私は小さな歯科医院で働く歯科衛生士だ。
ユニットも少なくスタッフも最小限の規模の小さな歯医者である。
院長も自分の親世代の年配の先生だ。
そもそも人数の多い職場だったり、雰囲気の若い医院を避けていたので私にはとても合っている。
最新の器具や材料はそれほどないが私は先生の治療は正確でシンプルでとてもいいと思っていた。
使う器具や材料の種類が多くないのでアシストもやりやすい。
患者さんも近所の昔から通っている方が多く、紹介で遠くから通ってくれている方もいる。
ただ、どこもそうだと思うが高齢者が多く状態が好転するより現状維持が精一杯であり、予防歯科とは程遠い状態だと思う。
私はお喋りではないし、外で自分のことを聞かれるのが基本的に嫌いなのでー美容室、病院、エステなどーいざ自分が聞く側になると何を聞いていいかわからない。
普段のブラッシングや生活習慣、ストレスなど歯周治療で必要な情報はたくさんあるがスケーリングをしながら聞き取りをするのが私には難しい。
そもそも患者さんも歯がツルツルになるのが目的で私の話を大して聞いてないと思う。
その辺は私のスキルの問題もあるのでこの辺にしておくが、私が言いたいのは長く通っている患者さん(または高齢者)は先生が絶対だということだ。
先生と言うのはどこでも1番に信頼されていていいものだと思うが、どんなことを言ってもいいわけではないと思う。

こんなことがあった。
長く通っているわけではないが高齢の男性が入れ歯の作り直しで通っていた。
以前通っていた歯医者で作った入れ歯が全くあっていなかったので(随分前に作ったようだった)作り直しをしたわけだがとにかく先生との相性が悪い。
というか先生が一方的に合わないという感じだったが。
患者さんは先生の話によく相槌を打ち、自分の話もしていて楽しそうだが、先生はどうもその患者さんのとき機嫌が悪い。
それもわかる。適当に相槌を打って自分の話を理解してないからだ。いくら説明しても次の時にはすっかり忘れているのである。これは他の患者さんでもよくあることだが。
私はこの患者さんが来る時は、先生に機嫌が悪くなるな〜、嫌だな〜くらいに思っていた。
ただある時先生が患者さんが使っていた入れ歯について
「こんな入れ歯に価値なんてないからね」、「時間の無駄だったね」と言ったのである。
患者さんは
「そうですね、忙しかったからね〜」
なんて的外れなことを言って全然なんともない風であった。
ただ私はそれを隣で聞いていて胸がぎゅーとなった。
言われた本人はなんともないけど、全く関係ない私が辛くなった。
その他にも先生の言葉の節々に私は居心地が悪くなって泣きたくなった。
職場で泣きたくなったのは初めてであった。
その人の今までを意味のない、価値のないと言い切った先生が嫌になった。
これは私の拡大解釈でもあるが…
自分の親が病院で先生にこんな風に言われていたらどんなに腕が良くてももう通わなくていいと思ってしまう。
私の価値観がそういうところにあるのでそう思ってしまう。

こんな風に本人は聞いていない、分かっていないとしても嫌味を言われている、怒られているのを聞いているのは精神的に疲れる。
基本的には先生は好きなのだがこの一言で私は先生のことが少し嫌いになった。
高齢の患者さんは話を聞いていないのと、先生、というものに絶大な信頼を寄せているので基本的にどんな態度を取られてもあまり疑問に思わないし平気な顔をしている。

多分私は自分で思ってたよりも先生を尊敬していたので勝手に幻滅してしまったのだと思う。

いい先生、好きな先生と働くというのは難しいことだとは思う。
というかどこの先生もスタッフもから嫌われているのではないかと思う…

高齢化社会の中で私もどう患者さんと接するべきか迷うところは多いが自分の親を通わせてもいいと思える所で働きたいと思う。


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