最期


死にそうになって初めて生を感じる
花も散るときは
死の狭間で生に思いを馳せているのだろう

人生の終わりは感情がなくなる
それまでの道筋は
痛いだとか
悲しいだとか
何かしら感情がある
ただ本当の最後は何も感じない

走馬灯を見るのだって
この世にまだ未練がある証拠だ
でもそれさえも感じないんだ

世界から音が消える
耳を塞がれたように
全ての音が朧ぐ
色も褪せて
たった1人になったかのような錯覚を思わせる
死はもう入り口に来ている人間に
最後の孤独を味わわせる
あまりにも残酷じゃないか

何も思っていないのに
まだ1人になりたくないと後悔を残させる
この世に留まりたいという気持ちをにじませて
淡い期待を感じさせながら
半ば強制的に目は閉じていく

美しい最期を
孤独で打ち消される
忌むべきことなのに
どうしようもできない

未完成だ

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