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挨拶を、と絶えず求める人々へ

見覚えのない自分の足跡
痛みがどれほどのものなのか

辿ろうにも記憶はその痛みだけなので

季節通りの雪ならば
春先にはすべて溶けてしまえと

消して後ろを振り返らないように
誰の記憶にも残らないように

寄り添う人には見知らぬ空模様
あなたがくたばるまで歯軋りしながら

単純な嗜好を品良く並べても
即物な欲情に叶うべくもない

日々の振れ幅は大きく
夜の帷は深い

地割れの先には
大仰な魚の群れ

空には不可欠な秒針の光

関わることわりの深さ
混じり気のない赦し

特筆すべきはその生き方

握る拳をその願いの上へ
叶えられないその願いの先へ

同じ夢を見て
違う記憶でまた出逢い

あなたの寝息を数えたはずなのに
真夜中、空腹の激しい痛みで目覚める

それは時として報われないと感じて
そこいらの人へは天気がどうのと述べる

善良なあなたはそれを踏まえて、

使い古された挨拶を交わし
手に入れたたった一つの真実を

そうしてそれを何事もなかったかのように
そこら辺からとこしえの魂として取り戻した

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