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<本と映画の答え合わせ>第18回「嵐が丘」

【本】
〇タイトル:嵐が丘
〇作者:エミリー・ブロンテ
〇感想:
 ・1800年代前半(日本では江戸時代)に女性作家がこのような作品をおそらく20代で書き上げたことに驚愕
 ・狭い親族間でここまで泥沼化する関係は信じられないが、物語として読者にとっては目が離せなくなってしまう
 ・語り手が間借り人(ロックウッド)、家政婦(ネリー)、手紙の書き主と適宜変わり、また、時代も3世代に亘るので前半は分かりづらい。後半はネリーの視点に落ち着く
 ・ヒースクリフはどれほどの悪党なのか、これがジプシーの子として生まれ育った環境から身についた生き方なのか思いは巡る
 ・そのヒースクリフと心が通じ合うキャサリンも実は性根悪い人物ではないかと邪推してしまう
〇評価:◎

【映画①】
〇嵐が丘(1939年)
〇監督、主演:ウィリアム・ワイラー監督、マール・オベロン、ローレンス・オリヴィエ
〇感想:
 ・キャサリン・リントンとリントン・ヒースクリフの世代が登場しない。彼らの無邪気さと狡猾さがどのように描かれているのか楽しみにしていた面もあり、残念
 ・キャサリンとヒースクリフ、二人の愛が真実の愛とされているが共感できない。なぜ彼女はエドガーと結婚したのか、エドガーの目の前でヒースクリフが彼女を看取るシーンは違和感しかない
 ・本(原作)を読まずに映画だけ観れば二人の真実の愛の物語として感動するのかもしれない。また、イザベラが本よりも活き活きと描かれていると感じた
〇評価:×

【映画②】
〇嵐が丘(1992年)
〇監督、主演:ピーター・コズミンスキー監督、ジュリエット・ビノシュ、レイフ・ファインズジェームズ
〇感想:
 ・本(原作)を最初から最後まで省くことなく映画している。膨大なストーリーであることに加え、ジュリエット・ビノシュが二役を演じていることなどから、初見の場合、内容を理解することは難しいと思料する。嵐が丘の愛好家、ファン向けの作品と受け止めた
 ・ヒースクリフのネチネチさ、非道さが伝わるように描かれている。このため、エドガー、イザベラの兄妹がとても可哀想に感じる
 ・最初と最後に登場する若い女性が誰なのか分からず、鑑賞後気になった。あらためて観たところ彼女は作者(エミリー・ブロンテ)に違いないとの独自の結論に至り納得した
 ・冒頭のテロップに ”MUSIC BY RYUICHI SAKAMOTO" と出てきて驚いた。故人の世界を舞台にした活躍を身をもって知った。英国の片田舎の壮大な自然の映像と切なさを感じる音楽が印象に残る
〇評価:○

【総合】
〇感想:
 ・女性に相続権が認められず、身内間で結婚する時代の小説を生成AIが出現した時代を生きる自分が新鮮味を持って堪能することができたことに驚く
 ・教訓がないものの時代を越えて愛される作品である理由の1つが可笑しさと考える。ヒースクリフの変人さ、リントン・ヒースクリフの子供っぽさに見られるように登場人物のわがまま、自己中心的な発言、振舞いが面白い
 ・キャサリン・リントンの言葉「毎晩、お祈りしてるのよ。わたしはパパより先に死にませんようにって。パパを悲しませるくらいなら、自分が悲しんだほうがいいわ。」に感動した。自分の娘が同じ年頃であるが、このような観念を思いつくことも考えることもないであろう
 ・人間には生まれながらにして「支配する者」と「支配されるもの」の2つの性分があると思う。後者は受動的であり突き進めていくものではないが、前者についてはそのパワー、思いが強すぎると身分、貧富といった外的環境をも乗り越えていくように感じる


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