安全な無痛分娩に集約化が必要な理由
無痛分娩の普及は難しいです。働き方改革を守り24時間体制で行うには、産科専属で当直してくれる麻酔科医が8人は必要になります。また無痛分娩では麻酔薬投与時に疼痛が取れることでカテコラミンが減り急に児心音が落ちたり、鉗子吸引が必要になることも多く、無痛の経過を見慣れた分娩担当の産婦人科医が1人専属で必要になります。この医師は婦人科急患や搬送を取ることは難しいです。
当院のような周産期センターで、卵巣嚢腫捻転・子宮外妊娠等婦人科急患を取る場合は、2列目当直の医師が必要です。この時点で産婦人科医は16人必要になります。更に分娩中・婦人科対応中に、本来の周産期センターの任務である母体搬送からの緊急帝王切開が必要になることも日常茶飯事、昼夜を問いません。3列目の当直または待機が必要になります。
2024年以降は待機として帝王切開等手術に夜間入った人は翌日手術に入ってはいけなくなる可能性が。よって産婦人科医の必要人員は・・・。 というように、大きく集約化した医療機関でないと、医療安全の保たれる24時間無痛分娩はできません。
更に、産科専属の麻酔科列を埋める麻酔科医を集め(夜間は産科麻酔科医でなくてもよいが、相談できるバックアップ医は必要)、3列を埋める産婦人科医を集め、その時間外労働の賃金を支払う必要があります。分娩件数が減少する中、私立の病院でここに投資してくれる周産期センターがどれくらいあるのでしょう。その人件費はどこから出るのか?
分娩料に上乗せされる?そしたら帝切率50%が当たり前の周産期センターでは自然分娩も少なく、かなり高額になるのではないでしょうか。周産期センターではない施設でやれ、という意見もありますが、母体搬送を取らない施設に産科医麻酔科医を集約化することと最も必要な高次周産期医療の維持とは並列にならない問題もあります。
とにかく、医師と資金が足りないのが問題です。また、麻酔科の先生も、サブスぺとして産科麻酔科の専門医が作られ、インセンティブやメリットが無いと、心臓麻酔専門医や集中治療専門医以上のメリットを見出せないのではないか。週1回平日、月1回土日の当直を、通常の麻酔科列に追加してお願いするならなおさらと思います。
結局、上記人件費を賄う資金が国から補助が出て、専門医やスタッフ数のメリットが明確化する以外に解決策が無い気がします。 尚、私はよく管理された無痛分娩が本当に安全で産婦さんのQOLを改善するというのは同意なので、なんとか上記を解決して欲しいと願ってやみません。
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