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『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむための豆知識集!キャラクターや時代背景などを解説


はじめに

レミゼは原作よりも、映画やミュージカルで楽しむ方がほとんどだと思います。

私も原作からスタートしたものの、やはり何度も観るのはミュージカル映画です。

映画やミュージカルは長大な原作をぎゅぎゅっとまとめたものになるので、泣く泣くカットされた部分も多々あります。ですがそうした部分にこそそれぞれのキャラクターの背景や個性がより深く描かれています。

そうした背景を知ることでより映画やミュージカルを楽しむことができます。

以下に紹介する記事は原作を参考に、ミュージカルではなかなか知ることのできないレミゼのお役立ち情報をまとめたものです。それぞれの記事でより詳しくお話ししていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

今年はいよいよ3年ぶりにレミゼのミュージカルが上演されます。私もものすごく楽しみにしています。ぜひこの記事が皆さんのお役に立てることを祈っています。



ジャン・バルジャンを救ったミリエル司教とは?

わずか一片のパンを盗んだために、19年間の監獄生活を送ることになった男、ジャン・バルジャン。

ジャン・バルジャンという名を聞けば、おそらくほとんどの人が「あぁ!聞いたことある!」となるのではないでしょうか。この人ほど有名な主人公は世界中見渡してもなかなかいないかもしれません。

ミュージカルや映画では、ジャン・バルジャンの徒刑場でのシーンからこの物語はスタートします。

そして釈放されたジャン・バルジャンが放浪し、民衆からひどい扱いを受け絶望していた時に出会うのがこの記事でご紹介するミリエル司教です。

不信や憎しみで荒みきっていたジャン・バルジャンを温かく迎え入れ、盗みを犯したジャン・バルジャンに銀の燭台まで与えた司教の慈悲によってジャン・ヴァルジャンは改心します。

ミュージカルや映画では時間の都合上、割とさくっと進んでしまうのですがこれを原作で読んでいくと驚きの展開が待っています。

ミリエル司教は実はものすごく重要な人物です。この人物のことを知るとジャン・ヴァルジャンに対する見方も変わってきます。ぜひ知って頂きたい人物です。


ジャン・バルジャンの過去~なぜ彼は逮捕されたのか

この記事ではパン一個を盗んだことで19年服役したジャン・バルジャンの過去を見ていきます。

当時のフランスは貧富の差が拡大し凄まじい貧困が蔓延していました。『レ・ミゼラブル』はこうした人々から生まれてきた物語でもあったのです。そしてその主人公ジャン・バルジャンがこうした環境から生まれてきたというのは非常に大きな意味があります。

ジャン・バルジャンはこのような極度の貧困に苦しみ、家族が餓死しないためにパンを盗んでしまうのです。

この記事ではそんなジャン・バルジャンの過去について詳しくお話ししていきます。


ジャン・バルジャンの真の改心~ミュージカルでは語られないプチ・ジェルヴェ事件

19年の徒刑生活で身も心も荒みきっていたジャン・バルジャンはミリエル司教の慈しみに触れ改心しました。

ミュージカルでは銀器を贈られ、見逃してくれたことでジャン・バルジャンはこれまでの生き方を悔い、新たな人生を生きることを誓いました。

ですが原作ではここからさらにもう一つの事件があったのです。ジャン・バルジャンが真に改心したのは実はその事件がきっかけだったのです。

ミュージカルでは時間の関係上このエピソードはカットされてしまいましたが、原作ではこの事件は非常に大きな意味を持った事件です。(※帝劇の舞台ではセリフなどもなく気づきにくいですが、ヴァルジャンがコインを奪う場面がありました)

この事件もぜひ注目したい事実です。


ファンテーヌはなぜ悲惨な道を辿ったのか~『I Dreamed A Dream(邦題 夢やぶれて)』

ファンテーヌは歌のタイトルの通り、夢破れて悲惨な最期を遂げます。そして残されたのが彼女の愛する娘、コゼットでした。このコゼットとジャン・ヴァルジャンの物語がレミゼで語られていくことになります。

ユゴーはこうした貧しい女性の問題、捨てざるをえなくなった子供たちの問題をこの作品で表現しています。ファンテーヌの悲惨は彼女一人だけでなく社会全体の悲惨でもあったのです。ユゴーはそんな社会を変革したいという願いもこの作品に込めていたのでありました。

ファンテーヌを知ることは当時のフランス社会が抱えていた問題を知ることにもなります。

こうした背景を取り込みつつミュージカルや映画の短い時間でそれを表現した製作陣のすごさには恐れ入るばかりです。ますますレミゼが好きになりました。


コゼットはなぜテナルディエ夫妻に預けられたのか

コゼットといえば言わずと知れた『レ・ミゼラブル』の顔というべき存在です。下のポスターでお馴染みですよね。

コゼットはもはや世界で最も有名な少女と言っても過言ではありません。

困窮に苦しむファンテーヌの手を離れてテナルディエ家に預けられたコゼット。彼女はまるでシンデレラのようにこき使われ、いじめられていたのでした。ミュージカルや映画を観た人はもしかしたら次のような疑問を持ったかもしれません。「なんでテナルディエみたいな悪党の家にわざわざコゼットを預けてしまったのか」と。

たしかに、これはよくよく考えてみたらそうですよね。コゼットがなぜテナルディエのもとに預けられることになったのか、その経緯は気になるところです。また、そもそもファンテーヌとテナルディエはどこで接点があったのでしょうか。

こうしたこともこれまでの記事で紹介したミリエル司教やジャン・バルジャン、ファンテーヌと同様、原作ではしっかりと書かれています。


ジャン・バルジャンはなぜマドレーヌ市長として成功できたのか

徒刑囚として19年も服役したジャン・バルジャン。

そんな荒みきっていた彼はミリエル司教と出会い、新たな人生を歩むことを誓います。

そしてその後舞台上に登場するジャン・バルジャンはマドレーヌという名前で生活し、この工場の工場長、そして市長にまでなっていたのでした。

パリの貧困層出身だったジャン・バルジャンがなぜここまで成功することができたのか。よくよく考えれば不思議ですよね。徒刑囚だった頃とはまるで別人です。

今回の記事ではなぜジャン・バルジャンがここまでの成功を遂げることができたかをお話ししていきます。


ジャヴェールこそ『レ・ミゼラブル』のもう一人の主人公である!愛すべき悪役ジャヴェールを考える

『レ・ミゼラブル』の悪玉、ジャヴェール。

主人公ジャン・ヴァルジャンを追いかけ苦しめる悪役として描かれたジャヴェール。

ですが彼の最後のシーンを読むと、そんな彼の振る舞いの意味合いがまったく変わってきます。私は『レ・ミゼラブル』の中で、このジャヴェールの壮絶な最期が最も心に残っているシーンとなっています。

映画ではそのジャヴェールのシーンが少し物足りなく、なぜジャヴェールが苦しみ、そして死を選ぶのかが少しわかりにくい展開になっています。

映画のレビューを見ても、そのような感想が多くありました。

というわけでこの記事ではジャヴェールという男が本当は一体何者なのだろうかということを考察していきます。


ジャヴェール(ジャベール)はなぜ死んだのか。『レ・ミゼラブル』原作からその真相を探る。

映画やミュージカルをご覧になった方にはもうお馴染みのジャヴェール。

物語の後半、バリケードで彼はジャン・バルジャンに命を救われます。

そのショックで、もはや彼はジャン・バルジャンを無意識に「きみ」と呼びかけるようになっていました。

彼の心に何かとてつもない衝撃が与えられていたのです。

そして瀕死のマリユスを担いで地下水道から脱出したジャン・バルジャンを待ち構えていたジャヴェール。

映画ではここでの会話の後、すぐに絶望し、苦悩の歌を歌い、川に身を投じます。

しかし原作ではジャン・バルジャンの願いを聞き入れ、まず馬車を呼び、マリユスを家まで送り届けます。

かつての彼なら問答無用でひっ捕らえ、ジャン・バルジャンを警察に突き出していたことでしょう。

しかし彼はあろうことか犯罪人のジャン・バルジャンを馬車に乗せ、彼の願いを聞き入れマリユスを送り届けたのです。

さらにジャン・バルジャンの家まで彼を送り、ここで待っていると言っておきながら、彼はそっと姿を消します。

ジャン・バルジャン自身も捕まることを受け入れていた中、これには彼も驚きます。

あの厳格なジャヴェールが、罪人を許し、解放してしまったのです。

そしてこの後に、善悪に引き裂かれたジャヴェールはそれこそ死ぬほど葛藤し、自身の存在意義、これまでの人生、これからの人生について苦しむのです。

この苦しみの描写は鬼気迫るものがあります。文庫版にして20ページ、それが延々とつづられます。ここにこそジャヴェールの死の真相があるのです。

その一部をここで抜粋してもきっとそれは不十分で断片的なものにしかなりません。やはり20ページにもわたる彼の葛藤を知らなければその真の理由はわかりません。

『レ・ミゼラブル』の原文を20ページもなんて読めないよとお思いのあなた。

ここは騙されたと思ってこの記事に書かれた原文をまず試しに読んでみてください。

レミゼは文庫でおよそ2500ページ超の大作です。そのうちのたった20ページだけと思ったら、なんかいけるような気がしてきませんか?

しかもこのシーンは第5巻の後半にあるシーンです。普通に読んでたら1巻からは遠い遠い道のりです。

全部読むのはきついなぁと足踏みされていた方にはこのシーンはきっと永遠に出会うことがない場面かもしれません。

そういう意味でもここでジャヴェールの最大の見せ場であるこのシーンを読んでみる価値は十分あると思います。

読んでみれば意外と読みやすいことにきっと驚くと思います。古典だから難しいという先入観もきっと壊れるのではないでしょうか。

この記事ではそんなジャヴェールの最期を原作に沿って見ていきます。


ファンテーヌの連行、釈放事件はユゴーの実体験だった~ユゴー『私の見聞録』より

ユゴーの『私の見聞録』という本にはレミゼの重要人物ファンテーヌのモデルになった女性が登場します。

ファンテーヌが無礼な男から服に雪を入れられ、それに反撃したが故に連行され牢獄行きを宣告されたシーンはレミゼを観た人には強烈なインパクトがあったと思います。そして作中でそんなファンテーヌを救ったのがジャン・バルジャンでした。

実はこの「捕らえられた娼婦と彼女を解放する紳士」という構図はユゴー自身が実際に体験した出来事がモデルになっているのです。

ユゴーはこれとまさに同じ場面をレミゼ執筆に先立つ1841年に体験していたのです。

この記事ではそんなファンテーヌのもとになった出来事をこの本から見ていきます。


ジャン・ヴァルジャンの意義~神々やキリストを象徴する世界文学史上に輝く英雄像

ディヴィッド・ベロス著『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』ではレミゼがどのようにして生まれ、どのように広がっていったのか、そしてミュージカルとのつながりや物語に込められた意味など、たくさんのことを知ることができます。

レミゼがいかに前代未聞な作品であったかに驚かされました。当時の出版業界や文学界の様子も知れてとても興味深い1冊でした。

この記事ではこの本の中でレミゼの主人公であるジャン・ヴァルジャンについて書かれた箇所を紹介していきます。ジャン・ヴァルジャンは世界文学史上、圧倒的な位置を占める英雄です。彼の存在は一体何を意味するのか、読者に何を伝えんがために存在するのか、そのことをこの記事では考えていきます。


『レ・ミゼラブル』の時代背景~フランス革命からナポレオン時代、七月革命まで

レミゼの最大の見せ場である「革命のバリケード戦」はなぜ起こったのか。アンジョルラスをはじめとした若者たちはなぜ蜂起したのか。それを知るには当時のフランスの時代背景を知ることが必要です。

この記事では西永良成著『『レ・ミゼラブル』の世界』を参考にレミゼの時代背景を見ていきたいと思います。

レミゼの時代背景を知るとこの物語はもっともっと奥行きのあるもののように感じられてきます。

知れば知るほど面白い。これもレミゼの素晴らしいところだと思います。恐るべし、ユゴーです。


レミゼのミリエル司教の燭台と蝋燭の大きな意味~暗闇を照らす光のはたらきー鹿島茂『パリ時間旅行』より

この記事ではレミゼのミリエル司教の銀の燭台と蝋燭をテーマに、「闇を照らす光のはたらき」を見ていきます。これを知ることでレミゼをまた違った角度から楽しむことができます。

食事中何気なく描かれていた銀の燭台と蝋燭の意味・・・そしてジャン・バルジャンがなぜ最後までこの燭台を大切にしていたのか、その奥の深さには驚くばかりです。ユゴーのすごさを感じました。ぜひ読んで頂きたい記事です。


パリのお針子グリゼットと学生の関係とはー19世紀フランスの若者達の出世コースと恋愛

グリゼットとは日本語訳するならば「お針子さん」と訳されます。

これまで当ブログでもお話ししてきた『レ・ミゼラブル』のファンテーヌはまさにこのグリゼットです。

この記事ではそんなファンテーヌが生きた時代背景を考えていきます。


なぜフランス人男性はモテるのかーパリの伊達男「ダンディー」の存在から考えてみた

この記事では19世紀中頃のフランス文化を見ていくことでなぜフランス人男性が恋愛上手なのかということを考えていきます。

直接的にはレミゼと関係があるわけではありませんが、ファンテーヌが軽薄な男にいとも簡単に弄ばれてしまったのも事実。当時のフランスの恋愛事情を考えるのもレミゼの背景を知る上で役に立ちます。

恋愛とは何かということを改めて考えさせられます。とてもおすすめな記事です。


今こそ『レ・ミゼラブル』の原作を!ミュージカルとも違うその魅力とは

『レ・ミゼラブル』は1862年、ヴィクトル・ユゴーによって発表された言わずと知れた名作です。

この小説を原作に、数多くの舞台化や映画化もされていてむしろそちらの方が印象が強い作品かもしれません。

『レ・ミゼラブル』は「みじめな人々」という意味です。『レ・ミゼラブル』はユゴーのヒューマニズムの結晶であり、みじめな人々をめぐる作品です。

主人公のジャン・ヴァルジャンはそんなみじめな人々を生み出す世の中と戦い、自らの内にもあるみじめさとも戦います。

ですが、分厚い原作を読むより、そもそも映画や舞台がすでに面白いのでそっちで十分という方がほとんどであると思います。『レ・ミゼラブル』はミュージカルでも大人気です。私の妹も大ファンです。いつか私も生のミュージカルを見に行きたいと思っています。

とはいえ、やはり原作も面白い!この記事ではそんな原作の魅力を紹介しています。


パリ下水道博物館~レミゼのジャン・ヴァルジャンが踏破した怪獣のはらわたを体験!その他ゆかりの地についても

私の大好きな『レ・ミゼラブル』の主人公ジャン・ヴァルジャンはパリの下水道を踏破しマリユスを救います。 ですが当時のパリはすさまじい悪臭と汚物の都市として知られていました。しかも下水道はほとんど迷宮と化し人が立ち入ることさえ危険な魔窟でした。

ジャン・ヴァルジャンが踏破したこの闇と汚染の世界を少しでも感じられるならと私はこの博物館に向かいました。


ユゴーが『レ・ミゼラブル』完成のために訪れたワーテルローの古戦場の大きな意味とは

パリからオランダに向けて出発した私はその途中、ベルギーのワーテルローという地に立ち寄りました。

私がそこへ向かったのは何を隠そう、『レ・ミゼラブル』の存在があるからです。

今回の記事ではそんな『レ・ミゼラブル』成立に大きな影響を与えたワーテルローの古戦場を訪れた体験をお話ししていきます。


おわりに

かなり記事数が多くなってしまいましたが、やはりそれだけレミゼは奥が深く、面白い!

知れば知るほどレミゼを好きになっていきます。

これらの情報を知ってから映画や曲を味わうと、その雰囲気ががらっと変わります!原作の偉大さもさることながら、それをミュージカル化した製作陣もとてつもないです。よくぞこの大作をこんなにうまくまとめられたなと驚くばかりです。それだけ盛りだくさんな作品です。知れば知るほどそのすごさがわかります。この作品はとにかく恐るべき作品です。私もこれ以上何と讃嘆してよいかわかりません。

レミゼと出会えて本当によかったなと心から思います。ドストエフスキーを学んだ過程で出会ったこの作品でしたが、私の心に非常に大きな足跡を残した作品でした。ドストエフスキーがこの作品を愛してくれてよかった!心からそう思います。

今回の記事は以前当ブログで更新した以下の記事を再構成したものになります。

この記事では他にも原作の第一部から第五部のあらすじやフランスの文豪エミール・ゾラとレミゼの関係についてもお話ししていますので興味のある方はこちらもご覧ください。

また、レミゼをもっと楽しむためのおすすめ参考書を以下の記事で紹介しています。

特に鹿島茂著『「レ・ミゼラブル」百六景』とディヴィッド・ベロス著『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』はおすすめです。


2024年12月からいよいよレミゼのミュージカルが始まりますがこれらの本を読んでから観劇すれことを強くおすすめします。もっともっとレミゼを楽しめること間違いなしです。ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむための豆知識集!キャラクターや時代背景などを解説」でした。

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