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43【恋愛小説もどき×親友との思い出】

夏休みも終わりに近づく頃

「今度プリ撮りにいこうよー」

バイト終わりに声をかけてくれたのは、、、
嫉妬女子のAちゃん
ついにやった!
一時はどうなることかと思ったけど、
努力の甲斐があって、Aちゃんとは
良好な関係を築くことができている

Aちゃんは、長身で本当にモデルみたいな体型だった
そして、美人!
美容に対する意識も相当高い
そんなAちゃんだけど

「私もうちょっと、鼻が低かったらなー」

こんなことを言う
周りが羨むくらいの美貌に恵まれ、
自信がありそうに見える
Aちゃんのような子でも、
なぜか、容姿にコンプレックスを抱えている
不思議やな

「そう?Aちゃんの整った顔に、高い鼻が合ってるよ」
「そうかなぁ、、鼻だけ目立ってる気がする」
「そんなことないって!」

Aちゃんとの容姿に関する会話はまるで、
寄せては返す波のようだな、といつも思う
大きな波がきて、一度ひいたと思ったら、、、
忘れた頃にまた静かにぶり返す、、
オチもなければ終わりもない

Aちゃんはもしかしたら、容姿のことではなくて
根本的な問題をなにか抱えているのかな、と考えてしまう

一方、きりんさんは自分の容姿に自信あり
一点の曇りもなく、自分の容姿に満足しているようだった
確かに、きりんさんは綺麗な顔立ちをしている
ただ、めちゃくちゃ変わった人だ

「君にボクの才能の部分を見て欲しい
 これはボクの書いた散文なんだけど、
 良かったら読んでくれないかな?」

そう言って、恐らく自作の、パンフレットを渡してきた

「散文って何ですか?」
「形や音に捉われない自由な文章のことだよ」

さすが大学の先生やな、と思って感心した
ファッション雑誌のような表紙をめくると、

モノクロのきりんさんの後ろ姿の写真と共に
言葉が添えられていた

‘’深夜の麒麟は‘’
というタイトルがつけられていた
そして、本文

‘’風が 冷たい どこかあたたかい所で 凍死したい‘’

これは、、えーっと、、、どういう意味?

「やっぱり、せっかく頂いたものなので、
 家でゆっくり拝見します」

と言って、私は静かにページを閉じた
そして、きりんさんがじっと私を凝視している気配を感じて、顔を上げた

「あの、、やっぱり今拝見した方が?」
「いや、違う、君に話があるんだ」

きりんさんが真剣な表情で続けた

「君は、進学校に通っているのに
 予備校にも行かず殆ど毎日働いている
 どんな事情があるのか、ボクは分からない
 でも、君の力になりたい
 ボクは講師だから、そんなに稼ぎはないけど
 実家はかなり裕福なんだ
 とにかく、君のためにできることは全部するよ
 その代わり、、、君の人生をボクに下さい」

きりんさんが何を言っているのか、
瞬時には理解しがたかった
ただ、この時、なぜか私の心臓はぎゅうっとなって
締めつけられるような痛みが走った
恥ずかしくて、情けなくて
私は涙がこぼれそうになるのを、必死で食い止めた

「つまり、援助交際っていうことですか?」



 








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